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第1回グッドライフアワード 優秀賞

グリーンパートナーおかやま

「世界の宝石-瀬戸内海」を磨く 〜ごみのないきれいな海を未来の 子供に手渡す取り組みの実践〜

多くの島々が浮かぶ美しい瀬戸内海の風景。でも、その海底には陸上の都市から流れ出たごみが沈んでいるそうです。『グリーンパートナーおかやま』が続けている『「世界の宝石-瀬戸内海」を磨く』という取り組みでは、香川県の小豆島、土庄町の漁協との協力で、獲物と一緒にたくさんのごみが引き上げられてしまう底引き網漁を見学。港に戻ってごみの分別調査をしたり、どうすればきれいな海を次世代に引き継げるのか、大人と子どもが一緒に考えるワークショップなどを開いています。


2014年11月の『なるほど海底探検隊』に参加したみなさん。
ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)
きれいな海を受け継ぐために、まずはごみの現実を知る。
活動のきっかけは?
身近な山に計画された産廃処分場反対運動がスタート

NPOの代表である藤原瑠美子さんが『グリーンパートナーおかやま』の前身となる「環境を守る会」を立ち上げたのは、1998年(平成10年)のこと。瀬戸内海国立公園にも含まれる金甲山という地元の山に、産業廃棄物の処分場が作られる計画に反対する活動を始めたのがきっかけでした。産廃処分場への反対とともに身近な自然環境を守る活動へと発展。2000年の10月に『グリーンパートナーおかやま』が誕生。2002年にNPO法人となりました。

『グリーンパートナーおかやま』では、国立公園内の清掃や、花壇への花植え、干潟の生態観察など、幅広い環境保護や啓蒙活動に取り組みます。そんな活動のなかで、きれいに見える瀬戸内海の海底がごみ箱のようになっているという現実を知りました。

瀬戸内海のごみは、岡山市内を流れる旭川などから流れ出て、海流の関係で小豆島沖の海底に集まってしまうそうです。海底のごみを減らすには、岡山市などで暮らす人たちが川にごみを捨てないようにしなければいけません。そのためには「できるだけたくさんの人たちがこの問題の存在を知り、理解を深めることが不可欠」(藤原さん)ということから『「世界の宝石-瀬戸内海」を磨く』を合い言葉に、海底ごみ回収底引き網体験学習『なるほど海底探検隊』などの取り組みがスタートしたのです。


こんなにきれいな瀬戸内海の海底に、
ごみが溜まるポイントが!

取材では小豆島の四海漁協をお訪ねしました。
どんな取り組みを?
海底ごみ回収底引き網体験をはじめ河川敷の清掃なども

海底ごみ回収底引き網体験学習は2009年から続いています。香川県の小豆島、土庄町にある四海漁協などの協力で底引き網漁船と遊覧船に分かれて海に出て、底引き網の操業を見学。獲物と一緒に網にかかってしまう海底ごみを漁港に持ち帰り、参加者みんなで分別します。分別の際には、空き缶などに刻印されている賞味期限まで確認して、海底ごみの現状まで調査するのです。

さらに、大人も子どもの一緒になってワークショップを実施。海底ごみの現状を知り、どうすればごみを減らせるかを考えます。岡山県の団体が、県境を越えて香川県の漁協と一緒に活動していることも、注目すべき点といえます。

『グリーンパートナーおかやま』では、「里山(暮らしの場で何気なく捨てたごみが)」→「里川(身近な川を流れて)」→「里海(かけがえのない海の底に溜まってしまう)」という、暮らしとごみの関係を参加者と一緒に考えています。自然の川や海流に県境はありません。行政的な枠を超越しての活動は、とても有意義ではないでしょうか。

また、『「世界の宝石-瀬戸内海」を磨く』という考えのもとに実施しているのは、海底ごみ回収底引き網体験学習だけではありません。『天目山周辺の二次林整備と自然環境体験学習』や『森と清流の体験学習』、河川敷の清掃や海辺での生態観察会など、「里山-里川-里海」を結び、さまざまな取り組みを行っているのです。


並走する遊覧船からたくさんの 参加者が見学します。

底引き網の操業を見学。
漁船にも子どもが乗り込みます。

もちろん、いろんな魚などがたくさん獲れます。

底引き網漁を間近に見るだけでも貴重な体験!
成功のポイントは?
活動すれば、共感する人たちが集まってくれる!

NPO法人『グリーンパートナーおかやま』の拠点は、代表者である藤原さんの自宅です。藤原さんは普通の主婦。「イベントのチラシ制作などは娘さんや親戚の印刷会社に手伝ってもらいながら」と、まさに手作りでさまざまな活動を続けています。

もちろん、多彩な活動を長く続けているだけに、エネルギッシュな女性ではありますが、たとえば海底ごみ回収底引き網体験学習には香川県の四海漁協や土庄町が共催として名を連ねており、さまざまな活動で岡山県や岡山市といった行政とも連携しています。

「問題を感じたら、まずは自分ができることをやってみる。言ったことを全力で実現していけば、実践しているからこそ話を聞いてくれる人が増え、協力してくれる人が増えてきたんです」(藤原さん)

藤原さんの熱意と、協力してくれるたくさんの人たちの力で、海底ごみ回収底引き網体験学習は開催を告知してすぐに定員がいっぱいになってしまうほどのイベントに成長してきました。


引き上げたごみは漁港に持ち帰って
みんなで分別調査。

空き缶などは賞味期限までチェックして記録します。

きちんと重さも計測します。

ワークショップでは、問題を理解して
解決方法を考えます。
レポート
問題を解決するために、みんなが協力すればいい!

今回の取材では、海底ごみ回収底引き網体験学習に協力している小豆島の四海漁協に伺いました。グリーンパートナーおかやまへの協力を決めたのは、元組合長の長栄保さんです。

「潮目の影響で土庄沖に溜まるごみは頭の痛い問題だった。行政に文句を言ってるよりも、自分たちでなんとかしようと協力することを決めたんだ」と長栄さん。もちろん、藤原さんとは初対面でしたが、今では「このノリカさん(藤原さんのこと)が一生懸命だから、漁師の私らが何もしないわけにはいかないだろ。四海漁協が始めたおかげで、いろんなところで海底ごみ問題への取り組みが始まった」と、自分たちの取り組みに誇りを持ち、藤原さんと信頼しあう関係となっています。

今年の体験学習で底引き網漁船を出してくれたのは四海漁協の山口達治さん。普段は観光底引き網をやっています。

「観光底引き網をやっていても、海底ごみはたくさんかかる。この活動を始める前は、観光以外の漁師も含めて、網に掛かったごみをまた海に捨てていた。でも、今ではみんな持ち帰るようになりました。この取り組みは、漁師の意識も変えたんですよ」(山口さん)

2012年には、藤原さんがアイデアを出し、倉敷芸術科学大学芸術学部の学生さんたちの協力で海底ごみの問題をテーマにしたクレイアニメも制作しました。

動画『「世界の宝石-瀬戸内海を磨く」山、川、海は、つながっている!』 https://www.youtube.com/watch?v=xMBKqRgWtWA

「岡山市内を流れる旭川には『ケレップ水制』という珍しい堤防があって、そこにいっぱいごみが溜まるんですよ。今度は、そういう場所を清掃したり観察する機会もつくりたい」と、藤原さんはさらに「自分にできること」を探し、意欲的です。ごみのポイ捨ては、何も岡山や瀬戸内海に限った問題ではありません。藤原さんのように「まずは自分が行動する」という意識や取り組みが、日本中に広がるといいですね。


右から、元組合長の長栄さん、
底引き網漁師の山口さんと奥さま。

海底から引き上げたごみの処理は
土庄町が引き受けてくれます。
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