環境省総合環境政策環境報告書その他環境報告書に関する資料環境パフォーマンス評価事業者の環境パフォーマンス指標に関する検討会

事業者の環境パフォーマンス指標に関する検討会(第2回)
議事概要


日時:
平成14年11月15日(金)9:30~12:00
会場:
中央合同庁舎5号館2階共用第6会議室
出席委員:
川野、倉阪、笹之内、後藤、奈良、二瓶、古田、森口、森下、山本、横山、吉田(敬称略、50音順)
欠席委員:
天野、大野(敬称略、50音順)
事務局:
炭谷総合環境政策局長、三好環境経済課長、川野補佐、沢味補佐
議事内容:

○ 第1回検討会議事録の確認について

山本座長:第1回検討会の議事録について。前回の検討会の議事内容について、議事録を作成し各委員に校正をお願いしているところだが、内容について訂正・質問等あれば、事務局まで連絡願いたい。今回以降の検討会の分も含めて議事録については環境省のホームページ上で公表する予定としている。公表することについて、ご意見などあればどうぞ。

各委員:(特に意見なし)

山本座長:議事録にもあるように、第1回検討会では、昨年度のパイロット事業の報告書に沿って、事務局よりガイドラインの整理の方向が示された。その中で、[1]指標を集約整理する、[2]指標を優先度の観点からコアとサブの2段階ないし3段階に区分する、[3]コア指標はマスバランスを基本にする、という点について各委員の合意が得られた。
 検討会の下に、指標をより詳細に検討するためのワーキンググループを設置したが、その検討内容については後藤委員からご説明をお願いする。

○ 資料1について、ワーキンググループリーダー後藤委員より説明

後藤委員:ワーキンググループでは、10月下旬から今週までに4回打ち合わせを開き検討を重ねてきた。資料1にその議事などがまとめられているが、検討された主な内容は、[1]環境パフォーマンス指標の目的、枠組みの整理、[2]コア指標の選定、サブ指標の整理、[3]社会性指標の検討、[4]業態別指標の必要性の検討、[5]総合的評価指標に関する検討、となっている。具体的な内容については、川野補佐から資料2に沿って、説明をお願いする。

○ 資料2について川野補佐より説明

○ 資料2について討議

山本座長:この環境パフォーマンス指標(以下EPI)は個人も対象とするのか。有限会社(2、3人規模の小さな会社)は対象なのか。

川野補佐:個人は対象ではないが、有限会社は含まれる。

山本座長:たくさん論点があるかと思うが、EPIの目的についてご議論をいただき、その後EPIの枠組みについてご議論をいただきたい。目的については、情報基盤を共有していくということ、ミクロ、メソ、マクロのレベルで環境ガバナンスを効率的に進めるためにこのEPIを共有するという論理だと思うが。

森口委員:共通の情報基盤を環境パフォーマンス指標と名づけるのには若干違和感がある。共通の情報基盤の提供は必要であるが、それを「パフォーマンス指標」と言ってしまうと、比較可能な指標であると受け取られる恐れがある。直接比較の前の段階の情報基盤の共有化をめざすのは良いと思う。その点について、ワーキンググループではどのように検討されたのか。

後藤委員:ワーキンググループでは、指標の外部への報告については環境報告書ガイドラインの範疇と考えている。具体的にどの指標を報告するかというのは、基本的には事業者の選択に任されるが、このEPIガイドラインをもとに報告書ガイドラインの中で説明するものではないかと考えている。EPIは、内部管理のための指標、そして外部との共通の情報基盤という理解で検討を進めた。

山本座長:今の議論は、環境パフォーマンスとは何かというところだと思う。学問的に今後も継続して研究される分野である。さはさりながら、我々は環境ガバナンスを進めていかなければならないので、ワーキンググループでは、コア指標とサブ指標に分けて整理していただいた。

横山委員:ISO14031の精神は、指標のトレンドの継続的な評価。環境パフォーマンスの理解には指標の変化を評価することが大事である。

森口委員:少なくとも時点間の比較ができるものでなければいけない。異なる主体間の比較に使うべきかどうかという点ではまだ議論があると思う。ただ、共通の情報基盤から出てくる指標は比較・評価に耐え得るものだというものにしないと。その方向に誘導しないというのは引きすぎではないか。

山本座長:コア指標の中に時点間の変化を示すものが含まれていないという意味。

倉阪委員:経年変化で見ると考えれば、今のまま「環境パフォーマンス指標」と呼ぶので差し支えないのではないか。

後藤委員:一番目の目的が重要で、事業者内部において評価・意思決定する場合は、指標のトレンドを見る。経年変化を見ないと言っているわけではないので良いのではないか。情報基盤といった場合には、外部との共通理解のための指標ということで、それを具体的にどう開示するかという点は報告書ガイドラインに任せている。

山本座長:たとえば、JR東日本は1年間で229万トンの炭酸ガスを排出しているという事実を情報基盤として共有することで果たして十分なのか。現時点ではコア指標として229万トンを把握し、それ以外のコア指標を含めた9つの指標を環境パフォーマンスとして認識するという理解か。時代とともに研究が進めばコア指標を見直すことになる。

後藤委員:マスバランスで大きなバランスを見るということ。コア指標はこのマスバランスの観点から選択している。また、コアのサブ指標という形で、コアの質を説明することにしている。

奈良委員:改訂のポイント(資料2p.1)として「事業者あるいは事業活動をこの指標を使って評価すべきというような、評価の方向を誘導するようなかたちには持っていかない。」とあるが、実際問題として、外部の利害関係者が共通の情報基盤に立って議論、評価していくことになると思うが、このように記載している目的は何か。

川野補佐:継続的に評価すべきもので、指標そのものの値だけを見て比較・評価すべきではないということ。

山本座長:この文章は削除してはどうか。

古田委員:環境効率指標、統合指標については研究途上で評価方法は確立されていない。そのような指標も含まれているため、この文章は必要ではないかと思う。

吉田委員:ガイドラインの最終目的は、消費者が企業や製品を評価、選択するための手助けをすることにあるのではないか。

倉阪委員:最終的にはそこまでやられるのが良いかと思うが、政府がどこまでやるのかという議論がある。企業の経営パフォーマンスについても、様々な格付け機関がそれぞれの評価方法を開発して、企業を評価、情報提供している。環境パフォーマンスも、政府がやることは共通の情報基盤を提供することで、民間の評価機関はその情報を元にして比較の方法を編み出し、評価を行う。こういう役割分担ではないのか。

山本座長:コア指標を選択するところで重要な価値判断をしていることになる。学問が進歩してくると、コアセットが9つでは足りないということになるかもしれない。環境パフォーマンス指標の枠組みについて、ご意見があればどうぞ。

横山委員:社会性項目を入れることは問題ないが、目的との整合性がとれていないのではないか。環境保全活動に社会的活動を含めて新たに定義するなど、それに相応する目的を追加してはどうか。

森下委員:その点に関しては、トリプルボトムラインなどの動向を踏まえて追記してはどうか。枠組みについては、指標の分類に加えて、時間軸の定義や事業のバウンダリーの定義を考え方としてではなく基準として、明確に示していかなければ、共通の基盤になりにくいのではないか。通常の製品のバウンダリーのうち、企業が関わりを持つバウンダリーを例示するなどの仕組みが必要。そういう観点も踏まえて、枠組みの部分を書いていく必要があるのではないか。どこまで可能かという問題は残るが。

川野補佐:企業活動として見るか、製品のライフサイクルとして見るかで、企業活動として見た場合にはそのバウンダリーを明確にするのは難しいのではないか。製品として見ていくべきではないか。

森下委員:バウンダリーは、業種業態、製品で異なるが、外部の方がわかりやすい形で記載する工夫が求められるのではないか。定義というのは行き過ぎかもしれないが。

山本座長:9つのコア指標の数字だけを見て、消費者や読者が判断するわけではないから問題ないのではないか。事業活動の内容の注記で代替できるのではないか。

○ 参考資料の追加配布、説明

後藤委員:産業連関的に合わせていくのは非常に難しいので、プロセスのインプット・アウトプットだけではなく製品のライフサイクルをサブ指標に取り込んだ。

森下委員:バウンダリーの考え方ではなく、表し方を示していけば良いのではないか。指標を読むときの情報基盤としての条件を枠組みの説明に入れ込むということ。

後藤委員:指標の説明のところにバウンダリーと時間軸の説明を入れるということか。

川野補佐:資源投入量のサブ指標でその辺りを説明していくことはできないか。

森口委員:情報基盤という言葉の受け取り方は人それぞれだと思うが、今出てきている枠組みは、環境指標というよりはかなりドイツの初期のエコバランス(物量勘定)の考え方に近いものになっている。そのような考え方から指標を持ってこようという議論もある。指標を作り出していく上で非常に整った共通の枠組みを作らなければならないと思うが、そこから得られる指標がパフォーマンスを直接評価するのに適切なものであるのかどうか。今回は、様々な指標の中から、環境パフォーマンスを示すものをかっちりと選んでいくのか、それとも多数の評価手法が存在する中で、そのまま指標を評価に使ってはいけないとして、共通の情報基盤を作っていくのか。また、両方やるということもあり得るだろうが。その辺りがはっきりしていないのではないか。

山本座長:資料2の環境パフォーマンス指標の目的の前に、「サステナビリティマネジメントあるいはガバナンスをするために情報基盤の共有化が必要」ということを一行でも書いておくと良い。また、これは固定ではなく進化していくものであるということにも触れておいたほうがよい。

○ 資料3、4について川野補佐より説明

○ 資料3、4について討議

山本座長:ここは非常に大事だと思うので、指標を使う企業の立場からご発言願いたい。

奈良委員:コア指標の中で、廃棄物等排出量について、有価物は削除して「廃棄物排出量」とすべきだと思う。現実問題として、有価物は最終処分や焼却処分することはないので、それを仕分けするのは今回の目的と合致しないのではないか。

二瓶委員:意見は違いますが、廃棄物の有効利用の観点から、有価物の量を増やしていく活動を考えると、区分して数値を把握することは望ましいのではないか 。

森下委員:廃棄物の指標については、2000年版のガイドライン作成時も問題になった。事業内部で再使用、再生利用された場合、焼却処分した場合にでる残渣については、最終処分廃棄物としてカウントするように求めている。そういう意味では資料3の表は間違っている。ダブルカウントになるため、縦軸で合計することはできない。有価物と称して不適切な処理が横行していること、100出したうちの1を再生利用したからリサイクル100%だ、ゼロエミッションだという事業者の方もいるので、有価物を指標として把握する意味がある。有価物と製品の定義が明確ではない以上、製品以外のものとして有価物を廃棄物の項目の中で捉えていく必要がある。

吉田委員:コア指標の「コア」を包括的ということではなく重要だという意味でとると、廃棄物の問題では最終処分される量がコアであるべきだし、資源投入に関しては、天然資源の使用量のほうが資源投入量よりも重要ではないか。地球からどれだけもらい、どれだけ捨てたかという観点。

山本座長:ひとつのご意見ですね。

横山委員:廃棄物に関しては細かく定義を決めれば決めるほど、複雑になる。廃棄物の排出量をコア指標と決めて管理をすることが大事。ゼロエミッションや有価物の定義も企業や業界によって異なる。たとえば汚泥については、脱水処理前の重量を出すのか、処理後の重量を使うのかで大きく数値が異なる。定義は事業者が決められるほうが企業としては出しやすい。定義を細かく決めるほど、正確性を欠く結果となるのではないか。

森下委員:まず最終処分量が指標としては大事である。汚泥については、事業所から出たところで重量を測定すれば良い。事業所内で脱水処理するのであれば処理後の重量を用いる。

山本座長:吉田委員のご意見はLCAの観点からすれば最もな話で、何が環境に負荷を与えているのかという観点から確かに枯渇製資源の投入量を出していくのがいいと思われるが。

古田委員:現実的に、セットメーカーが把握できる投入資源の情報には限界がある。たとえば鉄を購入した場合、それが鉄鉱石から製造されたものなのか再生資源なのかを知るのは難しい。まだコアセットの指標も完全に把握し切れていない状況だと思うので、できるところからスタートするのが良いのではないか。廃棄物や有価物の定義などで難しいところもあるが、まずはマスバランスを合わせることが重要では。何を買って何を出しているのか。投入量と排出量をきっちり把握していくのが重要ではないか。

川野委員:古田委員と同意見で、まず社内でマテリアルバランス的にイン・アウトを確認できるシステムの整理が必要だし、それを情報提供していくことが必要と考えていた。廃棄物に関しては、ガイドラインの指標の基準と自社の基準とを比較しながら、相違を把握していく必要がある。読み手としては、定義がそろっているほうが分析しやすい。

吉田委員:業界によっては、投入資源の種類は特定が難しいということは理解できる。

森口委員:内訳がわからないと、環境パフォーマンスの評価としては不十分ではないか。そこまで行く前にまず共通の情報基盤としてマスバランスの観点から情報を捉えることも重要。ただし、現在カウント可能な指標が環境パフォーマンス指標の目指すところとするのはいかがなものか。その辺りの書き方を注意する必要がある。
 廃棄物リサイクル対策部のほうで、現在循環型社会基本計画の策定に伴う廃棄物の指標、数値目標の策定を国レベルで見直ししている最中なので、それとの整合性を可能な限りとることが必要だと思う。
 廃棄物以外の部分の定義は難しい問題なので、どこで線を引くかで副産物等もカウントしていかなければならなくなるため、ご配慮いただければと思う。

森下委員:「総製品生産量」については、サービス業の活動を考慮して、「総製品生産・販売量」等の表現にしてはどうか。

山本座長:これは確認だが、資料3、4にまとめられた指標は、コア指標は事業者に是非使っていただきたいという指標だが、サブ指標は事業者が適切なものを選別して使うということか。

川野補佐:その通り。

倉阪委員:マスバランスの観点からコア指標を見る場合、これで十分なのか。たとえば有害物質、廃棄物の循環利用の用途について、サブ指標という扱いでよいのかという問題提起をしたい。ある程度活用されているもので重要なものはコアとして扱っても良いのではないか。

後藤委員:サブ指標の中でも、コア指標に密接に関連する、コアの質的情報をサブ指標として整理している。ただし、それをすべてコア指標にしてしまうと重くなりすぎる。コア指標に関連するサブ指標は是非把握してもらいたいという趣旨でいきたい。

川野補佐:現ガイドラインのように4つの業態区分に分ければ、業態によってはサブ指標をコア指標にすることはできるが、全業種に共通するものは、最大公約数として9つの指標に絞り込んだほうが良いのではないか。
 森口委員からご指摘のあった省内との整合性については、草案の段階できちんと対応していくつもりである。

山本座長:二つの観点からご議論いただきたい。こんな指標はいらないというものがあるか。また、新規追加指標(社会性指標)についてはどうか。

奈良委員:「有害物質投入量」という表現で総量を捕らえるのはいかがか。有害物質は暴露と有害性の両面でリスク評価するべきで、投入される段階では人間の健康への影響を十分考慮して管理されている。製品製造にはベネフィットもあり、不可欠なものでもあるので、「有害物質」という表現にはご配慮いただきたい。

川野補佐:2000年度版ガイドラインでは「有害物質」という表現であったが、資料3で「PRTR対象物質等」に変更することにしているが。

奈良委員:PRTR対象物質の投入量が問題になるのではなく、排出量が問題とされるべきではないか。

後藤委員:使用される化学物質の量と種類が増えてきている現状では、非意図的生成物等のリスクがある。環境報告書の中でも使用を禁止された有害物質のリストを掲載する例もある。有害・無害の判断は難しいが、有害性が証明されている物質の使用量を極力削減していく方向で対応すべきではないかと読み手側は思う。

山本座長:PRTR対象物質投入量を資源投入量の内訳としていれるべきかどうかの議論。適切でないならば分けておくことにするか。

二瓶委員:PRTR対象物質以外の物質を含めて「化学物質の使用量」として注記してはどうか。

森下委員:資源投入量総体の中に、PRTR対象物質が含まれるということには皆さん異論はないか。

奈良委員:PRTR対象物質はその排出量を管理・削減すべきものなので、PRTR対象物質投入量というサブ指標ではなく、化学物質という表現で良いのではないか。

山本座長:二瓶委員の意見でよいのではないか。

後藤委員:利害関係者のコミュニケーションの際に、化学物質投入量という数字を企業が把握しておくことは必要。「有害物質」という表現は変えても良いが、化学物質投入量はEPIから削除すべきではない。環境報告書で開示するかどうかは企業が独自に判断すれば良い。

奈良委員:有害物質を「有害性」と「曝露」の両面からリスク評価すべきである。有害物質の量だけで議論すると、「有害性」のみが強調されてリスク管理の実態が見えない。外部の利害関係者は、ややもすると「有害性」の部分だけを見てしまいがちなので、誤解を生まないようにご配慮いただきたい。

山本座長:誤解を生まないように二瓶委員の言うとおり「化学物質の使用量」を投入資源の内訳に入れることにしてはどうか。先ほども意見が出たように、9つのコア指標だけではインパクトは把握しきれない。

倉阪委員:インプットのほうは、バージン原料かリサイクル資源か、エネルギーで言えば再生エネルギーかそうではないのか、そういった区分が重要。サブ指標である投入資源の種類の中で、再生可能資源、リサイクル資源の量を明記するように注記してはどうか。アウトプットについては、有害性があるかどうかが問題になるので、有害性のあるものの排出量を内訳の中に明記をするようにしていただきたい。ガイドラインの中で、コア指標並みの扱いにしてはどうか。

山本座長:この議論は難しい。毒性のある金属でも、微量であれば生態にとって必要不可欠なものもあるわけで、問題は我々の用い方次第。コア指標だけを見て、企業の環境パフォーマンスの全体を理解できるわけではない。これだけの情報は共有しようという趣旨。

後藤委員:サブ指標をワーキンググループではコア指標の質を説明するものとそれ以外のものと二つに分けていた。結果的に、「サブ指標」としてひとつにまとめたが、コア指標に密接に関係するものは他から区分し、コア指標に準じる重要な指標として把握するように注記しておいたほうがよいということか。

倉阪委員:重みを変えたほうが良いと思う。

山本座長:他にこんな指標はいらないというものはないか。

古田委員:コア指標の質を説明するサブ指標の取り扱いについて、天然材料、再生材料は現実的に区分けが難しい。セットメーカーとしては、材料メーカーに情報を依頼することになり、それはそれで大混乱が起こるのでは。

山本座長:それは結構なことだ。セットメーカーがそうしていただくことは非常に望ましい。

古田委員:マネジメントパフォーマンス指標の中で、社会性項目は環境に関わるものに限定されているので、それとわかる記載が必要ではないか。社会性指標がこれだけだと誤解を与えてはいけない。

横山委員:経営関連指標と同様に、社会関連指標としてマネジメントパフォーマンス指標から区分したほうがわかりやすいのではないか。

後藤委員:社会関連指標を作ることが今回の目的ではなく、あくまでも環境に関わる社会的な指標を入れようとワーキンググループで検討してきた。いわゆる社会性指標となるとこれだけではすまない。参考資料1にもあるように社会性項目は多岐にわたる。今回はEPIということで環境以外のものは外して考えたい。

川野補佐:ガイドラインの草案の段階で、そのことを補足する。

笹之内委員:「環境」社会貢献、「環境」パートナーシップとしたらわかりやすいのではないか。

横山委員:やはり経営関連指標のように、社会関連指標として決めてしまったほうが良いのではないか。

後藤委員:社会的な指標は現在実験段階なので、ガイドラインで限定してしまわないほうが良い。

笹之内委員:コア指標の中で、当社で難しいのは資源投入量。部品等で購入しているメーカーとしては、量として把握するにはだいぶん努力が必要。こういう指標を環境パフォーマンス指標として出す目的がわからない。どういう環境インパクトのためにこのコア指標があるかという説明がないと、先ほどの議論が出てくる。うまく整理しないとなんのために集計するのかわからなくなる。

山本座長:エネルギー投入量はエネルギー効率性の向上、資源は資源効率性の向上、水は水利用の効率性をあげていこうということになる。温室効果ガスは、京都議定書があるので出していこう。化学物質排出量はゼロに。製品生産量は売り上げにつながる指標なので大きく。廃棄物排出量はゼロに。こういうコア指標を出すことによって、どういう利益があるか、どのように利用できるかはワーキンググループで検討したのか。

後藤委員:冒頭説明にあったように、まずマスバランスを把握しようというのが前提にある。マスバランスだけでは質が表されないため、サブ指標で表す。

笹之内委員:数人の有限会社の方がマスバランスを明確にしたら環境パフォーマンスが改善されたと理解できるのか。そう意味では、環境負荷をわかりやすく示して、それに従ってこういう指標を出すと説明するほうがわかりやすい。

山本座長:整理の仕方としてはそのほうがわかりやすい。最終的には国民一人一人のEPIを早く決めて、それを税制と連動する。

笹之内委員:学者の方々からみると、マスバランスという考え方は魅力的かもしれないが、今やらなければならないのは、温暖化と廃棄物削減が最大の目的で、課題を抑えると必要な指標が出てくると思う。

倉阪委員:マスバランスだけ押さえたのではわからないことが実は大きな政策目標である。たとえば循環型社会の構築を考えた場合、資源投入量の中の循環利用された資源の量が重要となる。枯渇性資源からできる限り再生可能エネルギーに転換していくには、その内訳を明らかにしたほうが良いのではないか。長期的に人体への曝露を低減していくという観点から有害物質の排出量を把握していく。このような指標については、コアにするのが望ましいと思うが、コアに近い取り扱いで業種に応じて出していけるように、ある程度コアに自由度をもたせるという方針を出してはどうか。

後藤委員:公表の段階で、把握している指標からどれを出していくか、どんな定性的説明が必要かという判断は重要であるが、報告書ガイドラインの範囲である。EPIガイドラインでは、定性的なものをはずして定量的なものに絞り込んでいるが、それは企業内部で管理する指標についてマスバランス的に数値をまずつかんで、それから質的な数値を把握していくとくことに主眼をおいている。

倉阪委員:先ほど申し上げた指標は、ある程度数字がつかめるもの。業種によって違いはあるが、循環された資源の投入量を企業がつかんでいくべき数値ではないか。コア的な指標をもっと増やせないか。

山本座長:これがガイドラインとしてきちんと出されると、地域レベルでも国レベルでも集計ができるようになると思う。環境ガバナンスを高めることができる。サステナビリティマネジメントができる。

笹之内委員:このコア指標を公表するかどうかは別問題であり、この指標は企業が内部管理するためのものと理解していいのか。

山本座長:コア指標はなるべく公表してほしい指標。

笹之内委員:そうするとやはりわかりやすいさは大切ではないか。

山本座長:わかりやすくて役に立つコア指標になっているかどうかが問題。

後藤委員:公表の段階では理解しやすく説明することが必要で、報告書の書き方の問題になると思う。企業内で数字をつかんでそれをどう表していくかということ。わかりやすさという点については環境報告書ガイドラインの中でもっと解説する必要があるのではないか。EPIのガイドラインでは、コア指標を絞り込んでサブ指標の中で関連のあるものをつかむということしかないのかなと。循環指標は難しい。

森口委員:資源投入量については、いろいろな議論がある。この指標が何を表しているのか。資源投入量そのものが環境影響の代理指標のようなものになっていると捉えるのか、環境問題を考える上でベースラインとして考えておく必要があるのか、という二つの考え方がある。前者であればコア指標に入れることが適当だが、後者だとするとこれはベースとして必要なものだがこれ自身は指標ではないと明確に示す必要がある。そうなると、倉阪委員が言われていたように、より指標としてわかりやすいものを選んだほうが良い。PRTR対象物質の投入量は、必ずしも意味がないわけではなく、ある種の代理指標として有用かもしれない。どの立場にたつのか、合意がないと混乱を招く。資源投入量の指標の意味づけについて合意が今はできていない。この指標をコアに入れるのであれば、さらに議論が必要なのではないか。ちなみに循環型社会基本計画では、再生資源を分けない合計値という指標はない。再生資源をはずした形での資源投入量、総資源投入量再生資源量の割合を入れることになっている。今の案では、総資源投入量そのものを指標にするということはない。

山本座長:要するに、本当に意味のある指標にしたほうが良いではないかというご意見と、マスバランスとして全体を押さえて共通の情報基盤とするというご意見。マスバランスとしてみることは学者の趣味か。

後藤委員:3年ほど前から様々な企業がマスバランスで数値を把握するようになってきた。社会的ニーズも高い。それで、投入量自体に意味があるという考え方が強くなってきているという立場から、マスバランスの観点から整理してみたのだが。

倉阪委員:マスバランスの見方が不要といっているわけではない。ファクター4、ファクター10に代表される脱物質化の流れもある。それに加えて質的な指標の重要度をはっきりさせるという意見。

吉田委員:環境報告書を作る際にはマスバランスを捉えている。しかし報告書では環境へのインパクトとして、天然資源の使用量を出している。環境パフォーマンス指標として重要なのは後者のほうではないか。

森下委員:マスバランスの観点から総資源投入量そのものを全体として減らそうという前提がある。再生資源という指標を10番目の項目として加えるか。

古田委員:当社としても資源投入量を把握するということも難しい状況。まず9つのコア指標の把握に取り組んで、集計するしくみを作り、徐々にコア指標を増やしていくのが現実的ではないか。

山本座長:コア中のコアというのを設定してはどうか。

二瓶委員:素材産業のような事業と流通業における事業とでは、コアとしてつかまえやすい、つかまえにくい指標というのが異なると思う。業態によってコアを決めるなどしないと進まないような気がする。

横山委員:2年前も同じ議論になった。当時の環境省の熊倉さんが、これは基本的な指標ですからとにかく入れますといって決めた。ただし、どこまで集計してどこまで出すのかという検討はずっとやってきた。セットメーカーとしては、部品の重さを量ってこれを資源投入量としている。そこからまた部品の素材を割り出してそれぞれの重さというのは難しい。

山本座長:私のみるところ、温室効果ガス排出量、化学物質排出量、最終処分量がコア中のコアなのではないか。

笹之内委員:私見では、水投入量、温室効果ガス排出量、化学物質排出量、最終処分量、それに排水量。当社の場合は加えて製品の使用段階における環境負荷かと思う。

山本座長:この中で、把握することが難しいのは資源投入量ということか。

古田委員:資源投入量を質的にきっちりみていこうとすると非常に難しい。

笹之内委員:資源投入量をやらないといっているのではない。現にやっているし努力もしているが、最初からコア指標というのは困りますね、ということ。

山本座長:実際上たいへんなのは資源投入量だけか。

古田委員:目指すべき方向という意味では、資源投入量は入れておくべきではないか。

山本座長:マスバランスに意味はあるということは合意されている。コア指標の順番を変えてコア中のコアを最初に持ってきてはどうか。

後藤委員:環境負荷として把握していくべきものは、エンドオブパイプのようなアウトプットの指標だけではないし、各企業が重要と思うような指標を順番に並べただけのものでもないだろう。持続可能な社会を目指すEPIは、インプット、アウトプットを把握してさらにその質も押さえていくという、思想を貫いたほうがいいのでは。そのなかで、把握に困難が伴う指標があるということは、各委員のご指摘のとおりであるが。

山本座長:並べ方の美しさも考えて、提案された原案通りでいく。次に、環境効率指標、統合指標について議論する。

○ 参考資料2、3について川野補佐より説明

○ 参考資料2、3について討議

山本座長:この資料の扱いは、参考資料で、ガイドラインには加えないのか。

川野補佐:事例として載せる。

吉田委員:統合指標は、当社の場合一般の従業員が全体像を把握しやすくするために使っているもの。ひとつの指標が標準になっていくというよりは各社が工夫していくものではないかと思う。

森口委員:統合指標の定義をはっきりさせないと混乱を招く。ここでは異なる環境負荷の統合という意味で使われているということで良いか。

山本座長:経済パフォーマンス、環境パフォーマンスの統合という意味ではないのか。

後藤委員:サステナビリティの観点からは、経済パフォーマンス、環境パフォーマンス、社会性パフォーマンスの統合指標が今後議論となってくるが、ここでは環境に関する統合指標としてマネジメントパフォーマンス指標に含めている。また、環境効率指標、環境負荷集約度指標はオペレーションパフォーマンス指標に含めている。ただしまだ定まったものがないので事例集を付録としてつけ、指標としてこういうものをつかうべき、などの言及はしない。統合指標も実験的なものなので、とりあえず頭だしをした。

森口委員:参考資料3をみると、複数の環境項目を統合した指標と、環境のタームと経済のタームを統合するという考え方の指標と、入り混じっている気がするため、明確に整理する必要がある。

山本座長:整理も必要だが、ISOやJISの中で定義されている言葉ではないため、きちんと定義を示しておく必要がある。

倉阪委員:分母と分子の幅(レンジ)が異なることが気になる。売上高で計算してしまうと、高い部品を買ってくると売上高が上がり、指標も大きくなるということになりますから、分子は付加価値が望ましいのではないか。付加価値の算出は難しい点もあるが。

山本座長:これらの指標は恣意的にいろいろな使われ方をしている。環境効率指標は今後学会等で定義を集約していく方向で議論すべきではないか。

森下委員:概ね今の段階では、売上高対CO2という指標が多い。CO2ではなくエネルギーという指標、その次は水に関する指標が多い。分母に資源がくることはない。実務レベルではこの3種類に集約されているのではないか。

山本座長:パブリックコメントで、環境効率指標等は明確に定義せずに任意で使っていったほうがいいのか、それとも推奨する指標という形で示したほうが良いのか、聞いていただきたいように思う。

森下委員:今回のコアセットやコア指標について合意を得られれば、環境の指標については一定の定義ができる。分子の売上高か生産高か付加価値かという議論は残るが。

後藤委員:WBCSDでは環境効率指標についてどのように議論がされているのか。

笹之内委員:WBCSDでも環境効率指標の方程式をきちっと決めているわけではない。考え方を示している、という理解でいる。ただしこの指標は、エネルギー集約型産業と非エネルギー集約型産業では数値の大きさに差がありすぎる。単純に数値を比較してしまうと、エネルギー集約型産業は日本にはいらないという議論になってしまう。これはいかがなものか。この指標については、開発途上ということで、先生方に議論していただいたほうがよい。今すぐこれが良いというのは難しい。それよりも、国内、海外企業を含めた範囲で業種別にベンチマークを実施し、そのデータと環境効率のレベルを比較することが重要ではないか。
 英語の単語は、英語での背景となる考え方がわかるように訳すべきではないか。英語でecoというと環境と経済の両方のイメージがあるが、日本語で「環境効率」というと環境のみのイメージになる。

山本座長:産業別エコエフィシェンシーのベンチマークは別に作業部会等を作って議論すべき問題だと思う。用語の定義は非常に重要。報告書をまとめるときには、用語の定義を入念にして、ISO14000シリーズのJISが出ているので、それと矛盾しないようにしたい。

川野補佐:社会性についてはこれでよいか。

山本座長:「環境」と明記すること以外には特にない。他に何かご意見はないか。

倉阪委員:名称が長い。オペレーションパフォーマンス指標、マネジメントパフォーマンス指標は日本語にならないか。

山本座長:操業パフォーマンス指標、経営パフォーマンス指標としてはいかがか。

倉阪委員:今回、名称を変更した意図は何か。

後藤委員:操業パフォーマンス指標という名称は、製造業のイメージが強くなる。それ以外の業種にも配慮した結果だ。

山本座長:「操業」としては確かにイメージが偏ったものになる。

山本座長:そのほかに意見があればどうぞ。なければ、本日の議論はこれで終了とする。事務局より、次回の予定について連絡願いたい。

○ 次回のスケジュール、議題について川野補佐より説明

山本座長:第2回検討会はこれで終了する。長時間にわたりありがとうございました。

以上

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