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環境省総合環境政策局環境報告書環境報告書ガイドライン改訂検討会

環境報告書ガイドライン改訂検討会 第2回議事録


日時:
平成18年12月25日(月)午後15:00~17:20
会場:
(株)ニッセイ基礎研究所 第1会議室
出席委員:
伊東正行、魚住隆太、河野正男、上妻義直、國部克彦、後藤敏彦、佐藤泉、古田清人、森下研(敬称略、五十音順)
欠席委員:
崎田裕子、別所恭一(敬称略、五十音順)
事務局:
環境経済課:鎌形課長、中山課長補佐、中坪課長補佐、大久保環境専門調査員、柳田環境専門調査員、澤係員、ニッセイ基礎研究所:川村、足立、鶴田、加治

(川村)
 みなさま、本日はお忙しいところ、「環境報告書ガイドライン改訂委員会」に、ご出席賜りまして誠にありがとうございます。第2回の検討会を開催いたします。議事録作成のため録音をさせていただきますが、ご了承ください。
 ご欠席の方は、佐川急便の別所委員、環境ジャーナリストの崎田委員です。別所委員は、代理の松本さんがお見えになっており、オブザーバー席に座っていらっしゃいます。それでは河野座長、議事進行を宜しくお願いします。

(河野座長)
  それでは、第2回の環境報告書ガイドライン改訂検討会を開催させて頂きたいと思います。事務局からもありましたが、年末のお忙しいところ、また最終的にまとめるにあたっては年度末のお忙しいところお集まり頂くことになろうかと思いますが、宜しくお願いいたします。
  はじめに、資料の確認を事務局からお願いいたします。

(川村)
<以下、配布資料の読み上げ>

 なお、EPIワーキンググループメンバーに後藤委員にも参加いただくことになりましたので、ご報告いたします。

(河野座長)
 それでは議事次第に従い、議事に入りたいと思います。資料2及び資料3について、事務局より説明をお願いいたします。

(中坪課長補佐)
<資料2「新環境報告書ガイドラインの全体構成(素案)」の説明>

(川村)
<資料3「新環境パフォーマンス指標の骨子案(EPI改訂WG報告資料)」の説明>
 ただいまワーキンググループの事務局の立場で説明申し上げましたが、上妻座長、補足や追加説明等ございませんでしょうか。

(上妻委員)
 特に補足的な説明はございません。

(河野座長)
 説明頂いたEPIの資料3は、全体構成案の2頁の2に組み込まれると考えれば宜しいでしょうか。

(中坪課長補佐)
 そのように考えています。

(河野座長)
 ただいまの資料2及び資料3の説明を受けて、委員の皆様のご意見を頂くわけですが、その前に今日の検討会における論点につきまして、事務局から説明して頂きたいと思います。資料番号がありませんが、「第2回環境報告書ガイドライン改訂検討会の主要論点及び改訂の方向(案)」という資料になります。

(鎌形課長)
 私から趣旨だけ説明させて頂きたいと思います。前回の第1回検討会に事務局から10の論点を提示させて頂きご議論いただきました。そのご議論を踏まえまして、今日は論点15まである参考資料「第1回検討会の論点整理及び対応の方向性」と題する対応表をお配りしておりますけれども、これまでこれらを骨子案に盛り込むという作業をしてまいりました。骨子案を作りあげたところで、更に今日どういう風にご議論頂こうかということを事務局内で議論をいたしましたが、事務局としてはさらに議論を深めて頂きたいと思い、後ろにつけています7つの論点からなる「第2回環境報告書ガイドライン改訂検討会の主要論点及び改訂の方向(案)」という資料を作らせて頂きました。特に議論して頂きたい関心事項のメモとして考えて頂ければいいと思います。
 若干踏み出して、方向性まで出している箇所もございますが、それもご議論頂きたいというものです。そういう意味で、前回論点を出しながら再度論点を作り直して出すということに若干手戻りがあって恐縮ですが、前回検討会とEPIワーキンググループの議論を踏まえ、今回の骨子案を作り上げる過程で、事務局として特にご議論いただきたい関心事項を示したということでご理解いただければと思います。具体的な中身については担当から説明いたします。

(中坪課長補佐)
<第2回環境報告書ガイドライン改訂検討会の主要論点及び改訂の方向(案)の説明>

(河野座長)
 本日欠席されている崎田委員、別所委員からご意見はありましたか。(川村:特にありません。)
 それでは、ただいまの資料2、3または「第2回環境報告書ガイドライン改訂検討会の主要論点及び改訂の方向(案)」の説明を受けまして、議論に移りたいと思います。資料2の説明のときに前回検討会の議論で出された意見が組み込まれている、改訂の方向案もすでに組み込まれているところもあるということで説明がされました。そこで討議の進め方ですが、まず議論して頂きたいという7点についてご意見を伺い、それ以外については後で順次取上げていくということで進めたいと思いますが、宜しいでしょうか。

(佐藤委員)
 個別の議論に入る前に、ガイドライン改訂の趣旨が重要ですので、その改訂の趣旨を踏まえてこの7点について改訂するということが必要と思うのですが、事務局から改訂趣旨の案はあるのでしょうか。

(中山課長補佐)
 改訂の趣旨は、資料2、すなわち新しいガイドラインで反映したいと考えております。

(佐藤委員)
 第1回検討会の議論でもありましたが、ここで日本がガイドラインを改訂するに当たって、国際的にGRIが変わったから変えようというのではなく、日本が環境報告書ガイドラインについてはこういう考え方を持っているというのを示すのが重要なポイントだと思います。国際的にはなぜGRIのようなコミットメントが出てきたのかということはありますが、資源の枯渇、温暖化の進行等、国際的な状況からますます環境報告書の重要性が高まっているということ、また世界的な格差の拡大を背景に先進国としての責任が問われているという状況があって、日本としても責任を果たすためにガイドラインを改訂するという、ある意味で大上段の議論を行い、それを踏まえて各論の中に入っていきたいと思っています。

(河野座長)
 仰るとおり、社会環境が変わってきているということが何年かに1度ガイドラインを改訂することの大きな理由だと思います。社会環境がどのように変わっているのかについては、それぞれ委員の認識に違うところもあろうかと思いますので、佐藤委員が言われたことについて、若干時間を割いてそれぞれの意見を言っていただくとことにいたしましょうか。

(後藤委員)
 それは重要なことですが、ブレーンストーミング的に討論するには時間がなさ過ぎると思います。改訂の趣旨については、環境基本計画、前回検討会の議論、今のご意見を参考に、文章にした趣旨のたたき台を出して頂いて、それを揉む形で今後の検討会で指標等の見直しに反映させないと、時間が足りなくなるのではないでしょうか。

(鎌形課長)
 事務局として進め方に若干不手際があったので、申し上げます。基本的にはこのガイドライン改訂を始める時に、私どもの思いとしては、佐藤委員からもご指摘がありましたように、世界的に地球環境問題が温暖化問題をはじめ大変深刻な状況にあり、世界的に取り組んでいかなければならないという基本的な認識と、もう1つは企業等の事業者が社会の中で環境問題に取り組んでいく上で、自らがマネジメントして透明性を保ち、緊張感を持った中で取り組んで頂くことが極めて有益だということがあります。
 そして、それが今に始まったことではなく、少しずつ実績が積み重なってきているという状況にあると思います。その実績が積み重なっている中で見直すべき論点がいくつか出てきており、その論点は、ちょっと個別に入りすぎるかもしれませんが、先ほどご説明しましたような、透明性を持った取組をするという上で比較可能なことも重要ではないか、あるいはステークホルダーとの関係をしっかり作らなければならないとか、少しずつ浮き上がってきているので、そういうものを前提にしてガイドラインの改訂を行いたいという思いがあります。
 しかし、これを口頭でご議論いただくのは材料がなくて恐縮ですので、次回までに文章にまとめて、お示しした上でご議論いただきたいと思います。順番が若干逆になってしまうかもしれませんが、事務局側が宿題を受け止めた、ということで進めて頂ければと思います。

(河野座長)
 それでは議論の進め方ですが、今日の第2回検討会で骨子案について議論した上で、次回はこの骨子に肉付けしたものが出てくると、考えていいのですね。

(鎌形課長)
 その通りです。

(河野座長)
 佐藤委員からのご意見については納得いただいたということで、事務局案の議論に入りたいと思います。前後しても結構ですが、とりあえず順番に参りたいと思います。

論点1.「比較可能なサマリー」を作ることを新しく打ち出すべきではないか

(河野座長)
 既に資料2の3頁(第3章のBI-4)で比較可能性について書かれていますが、この点についていかがでしょうか。

(古田委員)
 比較可能といわれると反応してしまいますが、この環境報告書自体は、企業を比較するために私どもが発行している訳ではなくて、自分たちの取組を理解して頂くことが主な目的で、結果として比較したい人が比較するということになると思います。比較する方々には、かなり詳細に読んで頂いて比較して頂きたいと思いますので、サマリーを作ること自体は全く問題なく、読み手にとって非常に有意義だと思いますが、修飾語として「比較可能な」というのはどうかと思います。
 わが社の場合だと、サマリー版というのは数値データがなく、会社全体のことを容易に分かって頂くためのものという認識であり、データはプロが読むので、紙媒体に書いていなくてもウェブで開示するようにしています。ということで「比較可能な」という修飾語は気になります。

(後藤委員)
 前回検討会の議論で、私は比較可能性については若干否定的なことも言って、「比較容易性」という言葉にしたと思います。ただ、ここ7年間ほど「環境goo」で環境報告書の読者調査を行っており、今年は2万4000人ほどの回答でしたが、 “一般人”に近い人たちがかなり答えてくださっている中で、私たちの分析では自由記述で企業間の比較ができないというコメントがものすごく多いのです。
 現実には比較は容易ではないという説明を入れなくてはいけないのですが、一方でサマリー的に比較できるものは比較できるようにしたほうが良いのではないかということがあります。どの項目をサマリーに入れるかは議論のあるところですが、やはり、そろそろサマリー的に比較可能ということは入れないと、読者ニーズつまり目的適合性という観点から言うと、適合しきれなくなっているという感じがします。繰り返しになりますが、その時に前提として企業間の比較は簡単ではないというコメントを入れないと、まずいと思います。

(森下委員)
 私も後藤委員と同じ意見ですが、環境報告書は企業間の比較をするためにあるものであり、環境報告書を公表すること自体が社会から何らかの評価を期待されて出すものだと思いますので、評価がある程度容易であるもの、相互の利用ができるものでなければいけないと思います。公表したあとは評価する方が勉強して比較しろ、と言うのはある意味で横暴だとも思いますので、これはガイドラインですから、ある程度は読みやすいもの、読み手にとって理解できる形のものを用意すべきだと思います。もちろん、その書き方は後藤委員の仰るように工夫しなければならないと思いますが、今後の環境報告書の発展を考えれば、こういうものが入ることが大事だと思います。

(伊東委員)
 実際に、比較しようと思ったときに事業規模が違う、またそれぞれインプットとアウトプットがあり、それぞれの製品があるので難しいのではないかと率直に思います。したがって、大手の電機メーカー等が単純に比較可能といわれるとやりにくいというのはあるのではないかと率直に思います。ただ、見出しに出さない状態で、この項目を入れるという方法はどうかなと思います。

(上妻委員) 
 比較するときに、何と比較するのかという問題があると思います。他企業とするのか、時系列的に変化を比較するのか、それから重要と思われる事項を特定するのかしないのかによっても比較可能の意味が変わってきます。現行のガイドラインでは、基本的に全25項目は重要な項目だという前提があり、書かざるを得なくなっています。それを全部書けということになると、SPIとして出している項目をみんな書かなければいけないことになるので、その辺をつめていかなければイエスともノーとも言えない状況なのではないかと思います。何を書くのかと、何を比較するのかをもう少し議論する必要があるのではないでしょうか。
 また、通常実務の中で開示されているものは殆どが比較できるものです。わざわざ比較できるものを、比較できない形で出さないでくださいねと啓発的に書くことは全く差し支えないと思いますが、もう少しつめたほうがいいと思います。

(後藤委員)
 時系列で比較できる項目は、確実に比較可能性を満たすべきだということは前からあったわけですので、今回はそうではなく、企業間比較に対するニーズが多いので、サマリー的なものでという話だと思います。

(國部委員)
 サマリーというのは、環境報告書の最初に大体付けられているようなサマリーをイメージしているのでしょうか。それとも全く違うパフォーマンス指標のサマリーと言われているのかで大分違います。企業が今報告書の中で最初の2頁くらいで表をつけるのは、目標と実績の比較表です。ここで言われているのはパフォーマンスデータだけのサマリーなのか、その辺りが不明確と思います。私が環境報告書を見るときには、企業の目標と実績の比較をできるようにすることはすごくいいと思います。

(佐藤委員)
  それはKPIのパフォーマンスの表を出すということではないのですか。

(國部委員)
 KPIのパフォーマンスの表を出すことを念頭に置いているのかを確認して、そうであれば、そのように議論をしたいと思います。

(後藤委員)
 温室効果ガスなら温室効果ガスについての指標を出すということです。何を入れるのかは問題だが、ニーズはそういうことで、読者が増えてきて、企業間比較ができないという声が上がっています。比較ができないならできないという説明を理論的にする必要があるし、可能性があるならいくつかの項目についてはトライをする時期ではないかという趣旨じゃないですか。

(國部委員)
 もしKPIの指標を比較可能にするというのであるならば、世界的に日本が初のことになるくらい重大な提案です。ヨーロッパでもKPIを出すことは決まっているが、KPIは何かとどこにも決まっていないという現状において、重要なものを決めて出すという意思決定は、先ほどの趣旨にも関係しますが、そこは非常に議論が必要になる提案ではないかと思います。

(古田委員)
 例えば温室効果ガスの排出量を出さないといっているのではなく、それはもう出ています。重要なことだから出ているわけで、それぞれの会社のその部分を見れば比較したい人はできます。それはそれでやっておいた上で、更にサマリー版で出していくという必然性はどうなのでしょう。現状でも重要な環境側面のデータに関しては出すことになっており、温室効果ガスの排出量を出していないところは製造業については多分ないと思います。ここでサマリーにこだわるのであれば、もっと違う工夫をする必要があります。今でも充分データは載っているのではないかと思います。

(魚住委員)
 私は、サマリーがある方が読者から比較するときにいいとは思います。しかし、推奨とはいえ、先に作ってもらうことを決めてしまうことは、企業がそれぞれの箇所で書いたことに対して、統一的に縛ってしまうようで、比較可能にするべきと言えばやるべきだが、そこまでやるのはどうなのかという両方の気持ちがあります。
 ただ、サマリーに書くとするとその内容について重要と思われる項目は非常に難しいので、私個人の意見としては、環境パフォーマンスで法的に報告を義務づけられているものは開示されていなくても集計をしているはずなので、そういうものは開示してほしいと思います。そのような項目に絞ってしまうという方法もあるかと思います。そうであればPRTRや廃棄物の排出量、あるいは温暖化対策推進法に限定されてくるものの、既に集計はされているのではないでしょうか。

(伊藤委員)
 環境省にお聞きしたいのですが、論点1に加え論点4でも比較可能性について述べられていますが、1と4にはどういう違いがあるのでしょうか。

(中山課長補佐)
 違いはないと思います。サマリーがあって一覧性を持って見ることができるのが重要ではないかという思いがあって、見る側として評価する場合、ごく当たり前の情報はサマリーに載っており、それが複数あればある程度の比較はできるのではないか、もう少し詳しく知りたければ本体を読むという流れを思い描いています。指標的なものでいえば、何か代表的なものが選べないかということで論点4があるし、それを反映したものがサマリーなのではないかと思っています。

(森下委員)
 進んだ環境報告書や取組がしっかりしている企業は、古田委員の仰る通り、かなりきっちりと載っています。しかし、現実には2つ問題がありまして、1つは、多くの報告書を読むと、必ずしもきちんと載っているわけではない。CO2がなかったり、エネルギー使用量ばっかりだったりと、主要なものが入っていない等、開示企業でも差が激しいということがあります。それから、もう一つは、大手企業の環境報告書は厚くなる傾向があるのですけども、その中で読みたい場所を探すのが大変だということがあります。そういう意味で、サマリー的に主要なものについては前にまとめるということは、環境報告書をより普及させることになると思います。
 冒頭で佐藤委員が仰ったこととも関連しますが、今までは環境報告書ガイドラインを出すこと自体が社会に対して啓発効果がありましたが、もうそういう時代ではないと思います。今後の環境報告書ガイドラインの改訂はおそらく4~5年後ということになりますから、現状が実務の成熟ですとか、社会的合意というものを待っているのであれば、しっかりしたガイドラインを作らなくても、それを踏まえて自分たちで作ってくださいという当たり障りのないガイドラインを作ればいい訳です。やはり新しいガイドラインの中で、この検討会として今後5年先くらいを見据えて1つでも2つでも“とんがった部分”を入れて、社会に対してこの検討会が考える報告書のあり方というものを明示していく必要があるのではと私は考えます。
 過去の環境報告書ガイドラインの経緯というものを考えると、最初にガイドラインができたのは1997年でございますが、その当時全世界でも100社くらいしか報告書を作っているところはなくて、日本国内ではせいぜい20~30社という時にガイドラインを出しているわけです。環境会計のガイドラインに至っては、環境会計というものが影も形もない時点で環境会計ガイドラインを出して、世の中に問題提起を行い、企業にも実践して頂いている。そういうことをこのガイドラインは果たすべき役割として持っていると思いますので、少し大胆でも踏み込むべきなのではないかと思います。

(後藤委員)
 抽象論をやっているより、サマリーですから、何と何をどういう形でサマリーというのか少し形が見えないと議論が進まないように思います。古田委員が仰った通り、ちゃんと指標が載っていればプロが比較をすることができますが、現実に読者が増えてきていて、フォーマットが統一されていないから読みづらいという声もあるわけです。
 お話のように温室効果ガスとか廃棄物まで入れるかどうかは難しいところですが、いくつかの法的な項目についてフォーマットを統一したサマリーがあるのならば、読者のニーズに答えることになります。伊東委員が仰った他の項目については、比較可能性を仮に維持してもサマリーには載ってこないが、本文にはきちんと書いてあって古田委員が仰るようにプロが読めば比較できるということをどう確保するかということだと思いますので、何らかのたたき台を出して頂いて、それから議論したほうがいいと思います。

(鎌形課長)
 ご意見ありがとうございます。イメージしていたものは割りと単純な発想から来ていたわけですが、今のご意見を踏まえますと、そもそも比較ということは難しいということはしっかり抑えなければならない。そういう中でどんなものを出していくかということに関しては、大企業に対しては法的な報告が義務付けられているものにするというご意見もあります。指標的なものはこういったものを中心に、基本的な情報としてその会社がどういう事業をしているのかというものも入ってくるかと思いますが、フォーマットについては、次回の検討会でガイドラインの骨子を肉付けする過程で出してご議論いただくという形にしたいと思います。今いろいろ出た意見を踏まえて作ってみたいと思います。

(上妻委員)
 そこの点で確認したいのですけれども、それはある一定のKPIに近いものをある程度は特定するということですよね。そこのところは報告原則との絡みもありますので、ものすごく重要だと思います。

(魚住委員)
 先ほど言ったように大規模事業者であれば、法律で集計報告が要請されている項目で良いのではないでしょうか。もちろん報告しても国や自治体で開示されるものとされないものがありますけれど、報告義務はあります。それについては、開示すれば良いと思います。ただし、その場合の報告対象の部分と対象以外の部分から出るもの、例えば温室効果ガスでも本社のCO2に関しては温対法で規模によっては報告しなくて良い場合があります。そういうものについても企業は合算で集計開示しているので、完全に法律で報告義務がある数値の積算値とそれ以外とを分けて開示する必要がある。そうしないと中小企業では法律で報告するべき数値が出てこない場合がありますので、その2つ報告義務があるものとないものとに分けて出せば、必ず出すことができます。

(上妻委員)
 特定するということですね。

(魚住委員)
 そうです。特定した場合、現行ガイドラインなら25項目を出すべきという話になります。

(上妻委員)
 サマリーのところだけ特定してしまえば、重要な項目とは切り離すことができますから良いですが、そうなるとサマリーとしてどこまで特定すべきかという話になりますね。魚住委員が仰ったように、現実に法的に報告が義務付けられているものだけを出すというのも一つの考え方ではあると思います。
 

(佐藤委員)
 サマリーの内容ですけれども、全体として環境報告書ガイドラインではありますけれど、私としては消費者保護ということを考えて、リコール件数等もぜひ入れて頂きたいですね。

(河野座長)
 それはご意見として承り、具体的内容については次回にしたいと思います。今日の意見を踏まえて、サマリーを作る方向で中身に何を入れるかを次回に議論いたしましょう。

論点2.環境報告書の信頼性向上に向けた方策について具体的に示すべきではないか。

(河野座長)
 2番目は「環境報告書の信頼性向上に向けた方策について具体的に示すべきではないか」についてです。従来はガイドラインの参考資料として出ていたが、本体に入れてはどうかについて、ご意見を伺いたいと思います。

(上妻委員) 
 確認ですが、[2]の「一般的報告原則「信頼性」の記載事項について」とはどういう意味でしょうか。信頼性の内容について書き換えるという意味ですか。それとも単なる説明ですか。

(中山課長補佐)
 説明の意味です。

(國部委員)
 信頼性のところですが、環境報告書ガイドラインに載せる項目が全部重要であり、載せなければならない、だからその情報が正しいかどうかの信頼性を見るというものと、GRIも一緒ですが、いくつかの指標が出ていて、その中で各社が重要だと思うものを報告書に出す際の選び方が妥当かどうかを見るのかについては次元が違います。たぶん書かれているのはガイドラインに出ている情報が重要で、それを報告書に出す、だからその情報は正しいかどうかを見るということだと思います。GRIがたくさん指標を出している中で、出すかどうかの選択肢を企業に与えるのであれば、何を重要と思っているかということの妥当性を見ていく必要があります。それはここに入っていないのですが、入れない場合にどうするのかという議論が必要ではないでしょうか。

(後藤委員)
 それは4番の特に記載が望ましいものを示す等、重点化を行うべきではないかという論点と関わり、記載が望ましいというものを示す等、重点化を行うべきであると思います。重点化が望ましいと示し、それについて信頼性をどのように確保するかという観点で2番を捉えるなら、ここに書いてあることを打ち出してよいと思います。
 ただし、その時に読者調査では第三者保証を多くの人が必要だというがこれには錯覚があります。中身について完全に保証されていると思っていますが、現実の第三者の保証の程度については低位、中位があります。現実に一般読者が期待している保証はほとんど不可能です。会計情報だってそれほど保証できていないのに環境情報を完璧に中身まで保証することはできません。問題は保証の意義と限界を社会に向けて出さないといけないと思います。ここに書いてあるくらいのことはいいのですが、一般読者が期待しているのは少し違っており、錯覚があります。魚住さんのところの日本環境情報審査協会が意義と限界を社会に打ち出して頂かないと難しいと思う。

(上妻委員) 
 今の後藤委員がおっしゃったのは、先ほどの國分委員がおっしゃった2つの次元の信頼性というところの両方ともを含んでいるという風に解釈してよいのですか?

(後藤委員)
 どちらかとしたら重点項目についてだと思います。

(魚住委員)
 まず、國部委員がおっしゃった2つの次元について確認しますと、従来は数値が正しいかどうか、信頼性のところに重点が置かれていましたが、もう一つは重要な情報が漏れなく開示されているか、重要な情報については企業によって、企業を取り巻くステークホルダーによって違ってきますが、その辺りを重視した報告書のあり方がいまヨーロッパの方の傾向になっています。AA1000にしろ今回のGRI、G3にしろ、同じです。審査する側としては開示された数字が正しいかどうかは一般に審査可能です。後藤委員が言われるようにそのレベルが高い、中位という段階がありますが審査は可能になります。
 しかし、重要な情報かどうか、その企業にとって重要なステークホルダーというものがどこかを特定して、そこのステークホルダーが重要と考える情報を企業が出しているかということを監査法人系の審査機関が審査することははっきり言って、現状ではできないです。監査法人系の上位の国際的な機関によると、非財務情報の保証業務を行う時には判断基準(クライテリア)が必要になります。「正しい」かどうかは判断基準がはっきりしていますが、「重要」かどうかは主観的な要素が入ってくるからです。
 文章では判断基準となる重要な情報の決め方や重要なステークホルダーの決め方の手段が書いてありますが、それを違う人がやると違う結果が出てくる可能性があるわけです。数字の信頼性の方は違う人がやっても約束通りにやれば同じ結果が出てきて、再現性が高くなります。しかし、重要な情報については方法が書いてあってその通りにやってもやる人によって違う結果が出てくるからです。それを保証することは、重要な情報の決め方のルールに主観的な判断が入ってくる部分あるので、判断基準(クライテリア)としては不十分であり、監査法人系はどこもやっていないのです。先ほど後藤委員が言われた4番の「特に記載が望ましいものを示す等、重点化を行う」ということで、これが重要な情報と決まっていれば、重要な情報について網羅的に記載されて中身も信頼できますという形での網羅性の保証ができますが、特定の事業者が、自ら決定した重要な情報を、間違いなく重要な情報だという保証はできないのです。

(國部委員)
 監査法人ができないということと、できないからしなくてよいかは全く別の話なので、区別しなければいけないですね。

(後藤委員)
 特定のステークホルダーが重要だと言って、適当に自分の身内のステークホルダーでこれが重要ですといって適当な人が適当に保証して、これで保証ですということが起こって保証するという仕組みをするとガタガタにする可能性があります。監査法人系ができないことをもし他ができるというならば、どういう基準ならできるかということを徹底的に示してもらわないと、今のAA1000のようなやり方ではいけないでしょう。

(國部委員)
 そこは充分議論が必要で、監査法人の監査だけを問題とするならば全くそうなのですが、それができないからといって重要なことを会社だけに任せてもいいのか。不完全であっても第三者が少しでも見てる場合と会社内でやっている場合とどっちがどうなのかということが重要であると思います。そっちを議論しなくてはいけません。監査が正しいかどうかというより、その場面に第三者の目が入っているかが重要です。次元を分けて、内容を示して議論をする必要があります。

(河野座長)
 要は「情報の内容の正確性」と「情報の選択の信頼性」の2つです。「情報の内容の正確性」の審査をし、その結果信頼できる情報であるという分野については、例えばここの案に書いているような方法でガイドラインに記載することが一つでしょう。

(上妻委員) 
 議論が混乱していると思います。前回も申し上げた通り、重要性の概念というのは環境報告書ガイドラインで書いてある重要性もしくは会計で言っている重要性と、GRIで言っているものは根本的に全く違います。いま議論されているのは國分委員が仰っているような次元が2つあって選択の話が出てくるというGRIに近い概念です。魚住委員が言っているのは会計で言われている重要性の概念であって、目的適合性の情報の中でも絶対にそぎ落としてはいけないものだけを判断する協会基準です。GRIで言ってるのはステークホルダーは誰なのか、ステークホルダーに目的適合的な優先的な情報は何なのか、というものを全部含んだものすごく幅の広い概念なのです。それをごっちゃにしてしまうと、その2つの次元と言ってはいてもどういうふうな重要性の位置づけとするのか決めないと議論になりません。現行の環境報告書ガイドラインの考え方を踏襲するのだったら、重要な情報の選択についての話は全く出てこないわけですから。

(後藤委員)
 たとえば、自己評価、第三者レビュー、また監査法人系が行う保証では、どっちが上で、どっちが下という見方があり、今まではわりと監査法人系の保証レベルが一番高く、第三者意見は低いとヨーロッパも含め見ていました。しかし私は、意義が違うと思っています。いわゆる保証というのは、魚住委員が言ったように、やっぱりある程度の客観性がないといけません。どこかのステークホルダーが重要といったから重要ですという形ではないものにしたいと思います。
 異なるディメンションにおいて、第三者がどのような重要な項目を選んでいるか、選んでないかを見る、またそのときに第三者の意見を読者が信用するかどうかというのは、別の問題です。そのような形で意義が少しずつ違うわけで、先ほど上妻委員が言われたように異なる重要性の概念をごっちゃにして、それに同じ保証をすることはできるはずがありません。
 異なる重要性の概念に応じた、それぞれの第三者による信頼性を向上する方策があるはずです。この部分を分けて考えないといけないのです。

(古田委員)
 この2番に関して、事務局の皆さまがイメージされているのは、書いてある内容の信頼性の認識だと思います。これは環境報告書ガイドラインでみている書き手が誰なのかというところに起因しています。
 現行の報告書のガイドラインは、これから環境報告書を出そうという人たちの助けになるという目的で作りました。ハードルを高くするよりも、みんなが書きたくなるようなガイドラインにするということでスタートしたため、第三者レビュー等の項目まで踏み込んでいないものでした。
環境報告書は会社の顔として出て行くものであり、社内のデータ管理をする等、それなりの信頼性をきっちりと担保するといったことが重要なので、ここで提案されている内容で、私はいいと思います。あまり第三者保証について縛るというのは、コストが高いという点でも難しいと思います。

(上妻委員) 
 最初に佐藤委員が仰ったことに関係してくるのですが、今環境報告書を作る実務を取り巻く環境が、ものすごく変わっています。たとえば、中に書く内容も、ステークホルダーも変わってきており、これらを考えると、従来の環境報告書ガイドラインは、実状に合わなくなってきている部分が沢山あります。そういう自覚に立つと、これから5~6年の間環境報告書ガイドラインを使えるようにするために、どの項目まで盛り込むのかという議論は、難しいのは確かです。しかし、報告書に載っている内容は、誰が見ても分かるようにしなくてはいけません。その辺りの議論をないがしろにしてしまっていいことにはならないと思います。

(古田委員)
 もしそうだとしたら、環境報告書ガイドラインの位置づけが変わっているのではないでしょうか。

(上妻委員) 
 だからこそ、ガイドラインの改訂を迫られているのだと思います。

(古田委員)
 そのコンセンサスが違うと思っています。つまり、環境報告書を出した人たちのレベルを上げるためのガイドラインになっているのですか。

(上妻委員) 
 いや、そうではないです。

(後藤委員)
 古田委員は、ここに書いてあるくらいの内容であればよいというお話でしょうか。

(古田委員)
 そうです。

(後藤委員)
 私もそう思っています。しかし、第三者保証のニーズはどんどん増えているため、解説に第三者保証の意義や限界をしっかりと書いてもらうことが必要です。企業からの反対があることも調査でよく分かっていますが、このギャップをどのように埋めていくかは、ここ4~5年で大きな問題になると思います。

(河野座長)
 これも次の2つに分けて整理します。1つ目の、従来のガイドラインの延長線上にある情報の正確性については、古田委員も納得いただいた通りです。2つ目には、状況が変わってきたために、情報の選択の信頼性という問題が出てきています。これを今回取り込むか取り込まないかが議論になっています。3番の論点はまさにステークホルダーの話になります。ステークホルダー重視という話になれば情報選択の信頼性の問題と絡んできます。

(後藤委員)
 どういう項目を選ぶかということに絡むと思います。

(上妻委員) 
 そうすると概念を変えていくことになります。

(河野座長)
 変えるというよりも、新たに追加するということになります。重要性が情報の信頼性だけであったのが、GRI風に言えば情報の選択の重要性が追加されたということではないのでしょうか。

(後藤委員)
 上妻委員が言われたように、それは現行の25項目が全部重要であるという概念から変わるということです。つまり、4番の論点を入れて、25項目ではなくて仮に10項目にすると、25項目が重要だといっていた概念から変わります。

(上妻委員) 
 現行のガイドラインは、会計に非常に近い考え方です。すべてのステークホルダーにとって、重要なものは均一であるという考え方です。しかし、GRIの考え方は全く異なっており、状況、企業、ステークホルダーの顔ぶれに応じて、書く内容が変わるという考えです。したがって、選択の話が大事になり、重要性が前面に押し出される形になります。重要性は、目的適合性の選択も入りますし、環境報告書ガイドラインで重要といっている選択の項目や、ステークホルダーの選択も入ってきます。また、項目の優先的な取り扱いの選択も、すべて重要性でくくられます。
 ここで、そこまでいくのか、いかないのかが問題であり、もし、いかないのであれば、従来と同じ重要な項目は、全員にとって同じアプローチになります。しかし、この問題は根本的な問題なので、この時間の中で解決できる問題ではないと私は思います。

(河野座長)
 これは前回、上妻委員から指摘されたことなので、その問題が伏在しているのは分かっていました。その重要性の内容が会計の方でも変わるということですが、会計の方で具体的な案が出てきていない段階ゆえ内容が分からないとすると、GRI側の考え方だけを従来のたたき台の上に追加することもできませんね。

(上妻委員) 
 追加する必要はないと思います。現行の環境報告書ガイドラインにおける重要性の考え方は、会計の考え方と全く同じです。そこには、情報、ステークホルダー、記載事項の選択という考え方は、根本的にありません。

(國部委員)
 私はやはり、重要性は何かの形で言及すべきであると考えています。25項目あってそれを全て出さなくてはいけないかというと、それは議論になってきます。私は、大事な事項以外は審査する必要はなくて、重要なものだけで充分だと思います。もっと言えば、環境報告書に間違ったデータを開示して、誰がどれくらい損をするのかということも、全く証明されていません。そういう意味もこめて、重要性の方を上位にして考え、そこから内容の正確性を議論するのが合理的ではないかと思います。ただ、それを何にするのかというのは難しい問題です。

(上妻委員)
 この話はSPIに非常に絡んできます。SPIは前回の改訂のときには何も議論しておらず、議論していないものを、そのまま踏襲してきたと仰っていますが、一体何を取り上げていくのかというのは、重要性の問題と密接に絡んできます。
 今のガイドラインでは、SPIについては選択しなくてはならないとなっていますが、25項目は重要なので全て記述するといった、非常に矛盾した扱いになっていますので、何もしない状態で踏襲するというのは、非常におかしい問題になってきます。したがって、どこかで議論する時間を作らないと、整合的なガイドラインにはなりません。

(魚住委員)
 2点あります。1点は日本環境情報審査協会としてですが、私の意見としては、審査は絶対やるべきだという考え方にも反対ですし、審査はすべきではないという考え方にも反対です。どういう観点かというと、要は経済合理性があるかということです。國部委員が今言われたり、伊東委員が前回言われたように、環境報告書を見て経済的意思決定をしている部分について、審査をすることによってどれだけ経済的意思決定額が増えるか。さらに意思決定額の増差額の積算が、審査コストの積算額を上回れば、社会的に審査の意義があり、そういう経済的意思決定がほとんど行われない間は制度的な面から、審査はやってもあまり社会的メリットがない、というのが私の考えです。会社が自分の出す情報について正確な情報を開示しようという形でやるのはいいのですが、社会全体としてはあくまで経済的意思決定の増差額の方が、審査コストの累計よりも増加しないと意味がないという風に考えます。
 もう1点。重要性をどのように決めるのかは、それ自体は非常に大事なことであり、会社はいろいろな試行錯誤を行いますが、それを審査する、あるいは保証する監査法人系は判断基準が不十分だからといって審査を行いません。では、それを行うときに、誰が行うのかというのが、まちまちなのです。審査の資格要件というのが存在しないので、個人的にいくらでもできるということになり、かなり結論が恣意的になりやすい部分があります。それでも、やらないよりはよいという考え方もあります。
 私個人としては、あと5年10年すれば、何が重要なパフォーマンス指標かというのが、KPIとしてかたまる可能性があり、それから指標を決めても、遅くはないと考えています。

(森下委員)
 GRIのガイドラインは、インターナショナルで、あらゆる地域や人種を網羅して考えているため、マテリアリティということになります。しかし、今回のガイドラインは、日本の国が作るものです。先ほどから議論があったように、重要な事項については、法律で決まっているものはそれらの項目を採用し、それを踏まえた上でそれ以外のところについて、マテリアリティという形で二重的に考えていけばよいと思います。

(後藤委員)
 別に法律で決まっている項目だけが重要なのではなくて、ここでこれを載せるというものを決めることが必要なのです。企業にとって、重要だという項目は出したいということもあるし、聞かれるということで重要だということもあります。したがって、客観的な重要性原則だけではなく、企業ごとにある程度の重要性を判断するという、別の重要性という考え方があってもよいと思います。
 というのも、私は社会的責任投資フォーラムに関わっておりますが、最近欧州とアメリカからSRIの関係で調査に来る人たちは、網羅的な調査をしていません。たとえば、ケミカルならケミカルで猛烈に突っ込んできたり、温暖化ガスに関する話題でつっこんできています。温暖化ガスのことについて多く聞かれる企業は、そこの部分を更に重点的にやるということがある訳で、論理的な重要性だけではなく、企業側の意向か、またはステークホルダー側の意向かによる主観的な重要性があっていいわけです。そしてガイドラインはガイドラインとしてあるべき項目を決める以外ないと思います。

(上妻委員) 
 それはGRIの考え方に近いですね。

(後藤委員)
 ただ、GRIがいいかどうかも問題があり、それに固執しているわけではありませんが。

(河野座長)
 重要性について、また別途に会議を開くことなく進めたいと思います。私も後藤委員に近い考えです。従来のガイドラインの内容を保ち、國部委員が二つに分けたもう一つの考え方である情報の選択にかかわる部分については、別に書いていくということで混乱は起こらないと思うのですが。

(伊東委員)
 結論から言いますと、この論点2に書いてある内容については、このままの文章で受入れ可能だと思います。そのなかで重要性については、各社で徐々に目覚めていくと考えられます。そして実際にレベルが上がっていくのかなと感じます。

(上妻委員)
 現行のガイドラインの中に、重要性について若干継ぎ足すというお考えだと思うのですが、先程来出てきているお話、後藤委員等も話されている中では、重要性の判断の中にステークホルダーエンゲージメントがセットとして入っています。それは、報告内容の重要性を判断する際に、会社単独では判断できない場合があるという前提で、ステークホルダーエンゲージメントの話を入れる余地を作っておくということです。それがあるかないかでガイドラインの格が上がったりします。
 日本の環境報告書ガイドラインには基本的にそういう考え方はないのです。オランダの持続可能性報告書ガイドラインは、基本的には日本の環境報告書ガイドラインによく似ており、重要性の判断は会計の判断とよく似ているやり方ですが、そこにステークホルダーエンゲージメントが組み込まれています。GRIは重要性自体がものすごくかけ離れた概念になってしまっていますが、そこには全ての局面にステークホルダーエンゲージメントの考え方が組み込まれています。ですから、重要性の判断をどこかでするというマテリアリティという考え方で判断するのであれば、ステークホルダーエンゲージメントについてもどうするかを考えざるを得なくなります。そういう余地を残しておかなければならなくなります。
 それをやらないのであれば現行のガイドラインのまま行くことになり、重要性の判断は基本的にはしない。重要性の判断というのは、会計で言っているような、協会基準として、絶対に取りこぼしてはいけない、絶対にこれだけはミスステートメントしてはいけないというものを判断するだけの基準をつくるということになります。しかしそうなってくると、他国やGRIのガイドライン等国際的なトレンドから、大変外れたものになってしまいます。

(後藤委員)
 ヨーロッパの有言不実行の理想論を書くと、そのような話になってしまいます。しかし、論点3の目的適合性について利害関係者の視点重視の考え方を少し強調して、実現可能な段階での重要性やステークホルダーエンゲージメントについて入れると良いと考えます。理想論だけ書いて、実現できるかどうかについては10年、20年かけてやっていきますという形でルールをつくるヨーロッパ流で日本の物を作ったのでは、誰も使わなくなります。
 現実的にステークホルダーエンゲージメントについてはヨーロッパと日本ではどちらが進んでいるかというと、国内だけで言えば日本の方が圧倒的に進んでいると考えられます。このようなことを考慮した形のガイドラインになっても私は構わないと思います。

(上妻委員) 
書き込んでいくべきということですか?

(後藤委員)
 書き込むということです。

(河野座長)
 いつも舵取りばかりで申し訳ありません。どちらかに沿って舵を取らなければならないものですから。
 まず、信頼性についての具体的なやり方についての方策で、[1]の様な現行ガイドラインで参考資料となったようなことを本体で書くことについては異論がなさそうだと思います。
 重要性についてGRIは考え方が変わってきているということについてですが、現行ガイドラインでも目的適合性の部分に少し書かれています。そこで新しい考え方も考慮に入れてその部分を書き換えることにし、本文のどこに影響するかという話はまた本文の案が出てきた時にチェックしてもらい、改めるということにしたいと思います。

(國部委員)
 私は[1]については、反対ではありません。しかし重要性抜きにして[1]だけが信頼性というのはどうかと思います。信頼性として[1]を書くのであれば、選択の重要性についてもセットで議論しないと。そこだけが出てきて、重要性はまた別の物だと誤解を与えるのではないでしょうか。

(河野座長)
 その点については、申し訳ありませんが時間がありませんのでとりあえず、私がまとめたような処理をしてもらってまた次回、書いたものが出てきた段階で、情報の選択について書き込むかどうかということを議論して頂くということでいかがでしょうか。

(森下委員)
 その際に事務局に一点だけお願いがあります。ひとつは、議論[1]に関することで、先程の話は、第三者評価の話に偏っていたので、二重責任の原則の話を先ずはじめにしっかりと明確にした上で次の話に進んで欲しい、というのが一点。
 それから二つ目は、環境報告書審査基準や沢山出ているいい加減な第三者意見や評価についてです。誰がどういうプロセスで行ったのかが明記されていないとか、それに対するフィードバックがどうなのかということが記載されていない物が環境報告書に多く掲載されています。このような現状を踏まえてある程度の整理や方向性を示す必要があります。このように一言でくくっていいのかどうかは分かりませんが、この点については事務局にお願いしておきたいと思います。

(河野座長)
 提案の中に書くということですね。それでは次に進めさせていただきます。

論点3.ステークホルダーをより重視する内容とする等、環境報告書を有効に活用するためのあり方について、検証すべきではないか。

(河野座長)
 論点3について、[2]では目的適合性の下位項目として重要性があるのですが、重要性の視点から、3.の[1]についてはいかがですか?

(上妻委員) 
 矛盾しているように見えます。[1]に書いてあるのは、ニーズに応じた報告事項ということですから、目的適合的な情報を出すようにと書かれています。そしてステークホルダー別の留意点を書くということですから、この辺りは、ステークホルダーエンゲージメントはやらないという考え方で、会社が一方的に決めるというものです。また、これを使うのはステークホルダーとのコミュニケーションに使うということで、ステークホルダーからの吸い上げはないという位置づけです。しかし、[2]はそうではない。[2]は利害関係者の視点重視の考え方で、これは、ステークホルダーエンゲージメントをとりいれているようにみえます。以上が先ず一点です。
 またステークホルダーと利害関係者の使い分けはあるのでしょうか。両者は一緒なのか違うのかよく分かりません。この点に関しては、内容として文章の意味がよく分からないのですが。

(中山課長補佐)
 利害関係者とステークホルダーに関しては、用語の使い方の整理についてあまり意識していなかったのですが、同義で使っているものと考えられます。また、[1]は、ステークホルダー・エンゲージメントをやらないという意思表示かという点につきましては、そうではありません。

(上妻委員) 
 全体的な口調からは、ステークホルダー・エンゲージメントを強く意識されているように見えます。そのように理解してよろしいでしょうか?

(鎌形課長)
 正直なところ、論点3.はステークホルダーをより重視するという内容というところから始まっておりますが、それをブレークダウンする過程でそうでない表現が出てきたと思います。

(後藤委員)
 私はあまり矛盾していないと見ていたのですが、ステークホルダーとエンゲージメントして決めるという言い方と、そうではなくエンゲージメントした後、会社が決めるという言い方と両方あるわけですが、結局は会社が決めるのです。しかし、その際に、二番目のように考え方をできるだけ取り入れるべきだというような読み方を私はしました。

(上妻委員) 
 それで良いのですが、現行のガイドラインは、そういう考え方を取っていないのです。基本的には、ステークホルダーとのプロセスなしに決めるという考え方です。会計の考え方はそのようなもので、会計における重要性も現行のガイドラインの重要性もそのような考え方です。しかし、そうではなくステークホルダーエンゲージメントを含んだ形で、そのプロセスが重要性の判断に入るように変わるのですか、変わらないのですか、ということです。

(河野座長)
 これは、今、鎌形課長からありましたが、現在のガイドラインはどちらかというと多くの会社に環境報告書を作ってくださいという視点です。今では環境報告書を作っている会社は800か1000になっており、ステークホルダーをより重視する傾向にあるので、少し重点をシフトしたのかなと個人的にはそのような印象を持っています。
 鎌形課長の話でステークホルダーの視点ということをステークホルダー・エンゲージメントという視点から書かれているという話がありました。そうであれば上妻委員が出されたことの答えになっているということですね。

(上妻委員) 
 基本的な方針としては、重要性の考え方にステークホルダー・エンゲージメントのプロセスをのせていくというアプローチでしょうか。

(事務局)
 それを皆がやるべきなのかどうかということに関しては、ご議論いただきたい。

(上妻委員) 
 場合によっては、そのようなことが必要になるという前提だと思います。

(鎌形課長)
 そういうことがだんだん重視されてきているとことを、ガイドラインはどう表現するのかということです。表現しないということから皆やりましょうというところ、あるいはそういうことが必要な場面もあるということ、色々あると思いますが、その辺りの相場感がわからないので、少し恐る恐る出してみたというところです。

(上妻委員) 
 ヨーロッパでもものすごく変わってきています。2003年に作られたオランダのガイドラインは、日本の環境報告書ガイドラインに近いような、会計的、財務学的な重要性の概念で、協会基準です。その協会基準をステークホルダー・エンゲージメントのプロセスを入れて使ってくださいという物です。
 GRIでは重要性自体が根本的に変わってきており、基本的な大原則になってきています。その中で、全ての判断にステークホルダー・エンゲージメントが組み込まれることになっており、そちらの方にだんだんとシフトしているようです。去年作られたオーストリアのガイドラインは、GRIの考え方に近いようです。ですから、何をとるのかということを決めておくと自然にガイドラインの構造が決まってきて、そうすると、それ以外のSPIやKPIの関係も全て決まってくるという位置づけです。どのような方向で行くのかということが重要だと思います。

(國部委員)
 色々な議論がされていますが、ステークホルダー・エンゲージメントは、確かに重要になってくると思います。ただ、ステークホルダー・エンゲージメントで分かることには限界があります。全てのマテリアルなイシューがステークホルダー・エンゲージメントで分かるわけではありません。ステークホルダー・エンゲージメントはバックにあっても良いのですが、そのガイドラインまで踏み込み、そしてそれをしなければマテリアルなイシューが決められないと云う訳ではないのです。先程後藤委員がおっしゃったように、ステークホルダー・エンゲージメントをしても、重要かどうかの判断をするのは企業です。これは企業の責任ですから、このあたりも誤解のないように書かれる必要があるのではないでしょうか。

(伊東委員)
 ポイントとしては、経営の意思決定を限られた資源の中で経営者が行っていく、これはどうしても変えられないと思います。それからステークホルダーをマルチステークホルダーと考えると、NPO,NGOからお客様、株主まで色々なステークホルダーがいらっしゃるわけです。ただ、現行のガイドラインのp.61にある、NPO,NGOと一緒に環境報告書を作成することを決まりごとにすると少々難しくなってきます。エンゲージメントは良いと思いますが、そこから先の意思決定は、企業の経営者が行うべきだと思います。

(魚住委員)
 私自身ヨーロッパの動きがよく分かっていませんので本質的な議論に入れないのですが、ヨーロッパの議論にそれ程振り回される必要はないのではないでしょうか。今後5年程でヨーロッパの状況も変わる可能性があるということを考えると、ある程度気にはするけれど、それなりのことを記述する程度で良いのではないでしょうか。

(古田委員)
 弊社もGRIの改訂に多少なりとも関わってまいりまして、ステークホルダー・エンゲージメントの考えは、確かにステークホルダーと一緒にマテリアリティの問題を議論していきましょうということがあります。しかし現実問題として、1日や2日のステークホルダーミーティングで企業グループの全てを理解できる訳がありません。そうするとやはり、社内できちんとした議論を行ったうえでステークホルダーの意見を聞いて企業が最終的な判断をしていくというのが現実的な進め方ではないでしょうか。ですから、既にステークホルダーを無視することはできないものですから、きちんと意見を吸い上げていき、それで会社の中の考え方を固めていく要素にしていくことが現実的だと思います。その方向でたたき台を作っていただくと議論しやすいのではないかと考えます。

(佐藤委員)
 このようなことを書く場合、なぜ、こういうことを議論するのかという趣旨を明らかにすることが必要です。成功事例や失敗事例もあると思いますが、ステークホルダーを重視することにより得られるものを明確にし、何を推進するためにこのようなことをやっているのかを書くことが重要だと思います。ステークホルダーを重視することによる取組の方向性に対する見直しや、経営者の緊張感等、そういうことは皆さん仰っているので、それによって得られるものを推進していこうということが大切だと思います。

(河野座長)
 ありがとうございます。ここのところは、ステークホルダーをより重視するという方向で書いていただき、その後中身について、次回議論していただくということでいきたいと思います。

論点4.比較可能性も考慮し、指標について、特に記載が望ましいものを示す等重点化を行うべきではないか。

(河野座長)
 4番目の論点、比較可能性を考慮するということですが、これは先程論点1でかなり議論したところであります。この議論を考慮した上で法的制度があるものの指標、全業種共通記載が望ましい指標に分類してはどうでしょうかという話です。2000年度の環境報告書に戻るような議論の部分もありますが、これも重要性の議論と共通する部分があります。これについてご意見があれば、お願いします。

(古田委員)
 今までの議論を踏まえると、ガイドラインでこれが重要だというのは、たぶん法的制度のある部分位までで、後は会社ないしステークホルダー・エンゲージメントの中できちんと重要性を位置づけていけば良いと思います。ガイドラインが、何が重要なのか位置づけるのは少々行き過ぎのような気がします。

(上妻委員) 
 もしそうだとすると、今あるガイドラインより後退していくことになります。今のガイドラインは、25項目は重要であり書くべきであるというスタンスです。そうではなくて、別の方法としては、今のGRIのG3のように、全産業に共通の標準的なセットを作っておいて、自社に適合しない項目があればその理由を説明するというスタンスがあると思います。これはどちらでも良いと思いますが。

(古田委員)
 ですから、それが先程の3番の議論とも関係してきます。先生がおっしゃったように、ここで大きく方向転換するのかしないのか。マテリアリティ自体を企業の自主性に任せてステークホルダー・エンゲージメントの中で議論していくのか、一律で行くのか、その境目だと思います。
 先程の議論の私の理解は、世の中がだんだんステークホルダーを含めたマテリアリティの議論の方へ移るわけですから、ガイドラインで20や30の項目を一律これというところから、推奨項目の中からどの項目を使うのかは各社で決めるというガイドラインがよいのではと考えましたが。

(河野座長)
 事務局にお聞きしますが、2000年度の環境報告書ガイドラインでは18の記載項目の中に重要な記載内容と、可能であれば記載することが望ましい内容に分けていたのですが、そうではなくて古田委員が話されたように20項目か30項目について、その中をここにあるような分け方にするというものなのかどちらですか。

(中山課長補佐)
 今回の骨子を見ていただくと、徐々に増えてきています。増えざるを得ないところがありまして、逆に言うと全部、一律に書いてくださいというわけにはいきません。そもそも今のガイドラインも書くことが望ましいという話です。ある程度ランク付けはせざるを得ないというのがこれまでの議論でありましたし、関係者との意見交換会等でも出てきています。

(河野座長)
 今おっしゃったことは現行25項目についての考え方ということですね。

(中山課長補佐)
 25項目の区分けをするということで、書き方の精粗も含めて、どのくらい力を入れるかというところも含めて、そういうことが必要かどうかについてご議論頂きたいというところが、今回の事務局としての立場でございます。
 どっちかというところについては、実はどちらもありうると思っていまして、そこはご検討いただいた上で、素案を次回出します。25項目の中も含め、これからある程度増えていくようなところも考えに入れながらどっちに舵を切ろうかということについてご議論いただきたい。

(河野座長)
 古田委員の方が正しい理解ということで、25項目あるいはプラスアルファについて順序立てしようということになります。こういうことについて話を伺っていこうと思います。

(佐藤委員)
 ここで提案されているもので、法的制度のあるものとないものというお話ですが、法的制度が全くないものはないと思います。それは規制なのか情報開示の義務なのか、自主的取組の努力義務なのか、かなり色分けが違いますけれども、規制とするとものすごく狭くなってしまうし、報告義務のあるものもすごく限定されてしまいます。せっかく前のガイドラインでは全部という話だったのに、法的規制にぐっと遮ってしまうのは、魅力的ではないと思います。重要なものは詳しく書いて欲しいという気持ちはありますが、外してしまうのは賛成しません。

(國部委員)
 現行25項目の中で区別することは意外に難しいですし、あまり意味のあるものではないと思います。

(森下委員)
資料3(骨子案)で、MPIもこのような作り方をしていますが、実際、企業はどうしているのですか。

(上妻委員)
 たぶんガイドラインに書いてあることは皆さん無視して、実務の方が良識的な判断をしています。ガイドラインでは25項目は重要だと書いており、書かなければいけないというスタンスですけども、その中で必要のないものは、例えば、25項目の社会性の指標等は書いていません。企業は現実的な対応をされているということだと思いますが、基本的には、状況に応じて書かなければいけないものもあるし、そうでないものがあるので、選択の余地はやっぱり残すべきだと思います。ただ、書けるのに書かないものがあるのはあまり好ましくないので、その辺のところは、どこかできちんとした説明をするなり、ガイドラインの中に書き込んでおくべきではないかと思います。

(河野座長)
 いま、議論された方向でいかがでしょうか。

論点5.金融のグリーン化の視点を導入すべきではないか。

(伊東委員)
 出たお話の中で、前回のガイドラインを作った段階ではマテリアルバランスの要望等は、ほとんど想定していなかったですけれど、ここに入れることによって、みんなが取り組むようになったということが非常に重要だと思いました。今回、環境省にしても我々にしても、金融という視点が入ってきたということは、今回のガイドラインの改訂を受けて、環境負荷の軽減に取り組むようなプロジェクトにお金が回るという、実効性を挙げることが目的だと考えています。根底にあるのはそういう考え方です。そのためには、どういうことをすれば良いかを考えました。
 結論を言うと2つに分かれていて、金融といった場合には、間接金融と直接金融があります。銀行、保険会社が融資をしているケースと、資本市場で株式を買っているケース、その両方に対して、ガイドラインとの関係を打つ手があります。実態を申し上げますと、昨今のSRIの状況、それから銀行の環境融資の残高等を考えると、ガイドラインに入ることによって、金融機関とかファンドマネージャーの投資行動が誘発され、結果として環境にもお金が回るようになるということを狙っていくというチャレンジングなことも必要だと思います。
 昨今の銀行の取組のところについては、私共が、環境負荷を軽減するようなクリーンエネルギーとかリサイクルとか、そういうものを抽出してそこにプロジェクトの環境負荷の低減を定量的に把握するということを実際に始めています。ただし、それは個別銀行としての競争要因として、今までずっと持っていたのですが、場合によっては、そういったことも事務局にお出しして、どこまで銀行全体として、そういったことが持って行けるのかということを、やっていく必要があると思います。
 投資については、25項目のうちのサプライチェーンと新技術と環境規制の遵守を中心に、考えられると思いますので、そのような話と温室効果ガス、社会的な公正という点で9つの指標をうまく使ってファンドマネジャーがある程度見れるような指標が出せるかどうかをこれから詰めていきたいと思います

(古田委員)
 論点5の意味が、良く分からないんです。事業会社による金融機関の活用方法についてということですか。例えば、わが社が現金預金をしていたら、その預金なのか、何を出せと言っているのですか?

(後藤委員)
 それは違うと思います。環境配慮促進法では、事業者は投資をするに当たって、投資先の環境問題について考慮する責務があるという形になっています。金融機関だけではなく事業者も対象ですから、事業会社も商社もみんな、融投資は事業会社としてあるわけで、その時に環境配慮するべきだというのが、この金融のグリーン化の問題です。金融機関の直接金融・間接金融という話がありましたが、それだけにとどまらないと思います。国連のPRIでも、必ずしも金融機関に限らないわけで、そのことを言っているはずです。

(鎌形課長)
 ただ、皆が書くべきかというところは相場感が分からないので、こういうものをガイドラインの中に書くかどうか議論頂きたい。どこの企業もやっているという話ではないかもしれませんが、考慮しているなら考慮している内容を書くとか、そういうものがあってもいいのではないでしょうか。

(上妻委員) 
 後藤委員が仰った通りだと思います。金融機関から金を借りてやる。それと考え方としては同じだと思います。

(國部委員)
 「環境投資」は金融機関に限らないということですね。金融機関の活用方法とか、銀行の選び方とかですかね。

(後藤委員)
 そうですが、投資・融資に当たっての環境配慮です。

(國部委員)
 そうですよね。それなら、書き方を変えた方がいいですね。環境配慮もですが、マイナスを起させないという意味で、積極的に環境負荷を軽減するということを促していると思います。そういう意味では、環境投資、環境会計等になりますか。

(後藤委員)
 投融資になるのではないですか?

(國部委員)
 しかし、投融資だけだとすごく、事業の良し悪しになってしまう。

(佐藤委員)
 M&Aの場合とかも。

(河野座長)
 論点5.の前半部分は、サマリーに近いことも言っているのですか。

(中山課長補佐)
 全体的にできるだけ比較しやすいということを考慮に入れながら、報告書を作っていただけると、金融機関の方からみると、それに基づく判断で、多くの材料を使うことがやりやすくなるのではないかということです。

(河野座長)
 金融業についてのみ、そのようなことを環境報告に書いたらどうかというお話ですか?

(中山課長補佐)
 いえ、サプライチェーンや新技術ですとか、法令遵守やCO2の排出量とかの企業の報告を使いながら、投資なりの判断をするための指標を作っていくことができるかどうかについて、金融機関で考えていただきたいという意味です。逆に言うと、その4つについて指標を作っていくために、それが可能になる形で情報提供していただくということが、金融機関に作っていただく場合には必要になっていくのではないかという問題意識になります。

(上妻委員)
 環境に配慮した投融資にアプライするために、ちゃんと情報を整理しておくと役に立ちますよということを書いたらどうかということではないのですか?

(中山課長補佐)
 そうですね。サマリーの話にも少しつながるのですが、ある程度コアとなるような、だいたい同じような情報を皆が出して、比較可能な形にすると、環境に配慮していることで金が生まれてくるという、そのような話です。

(河野座長)
 金融のグリーン化についてはどこか適当なところに書いておいて、サマリーとのバッティング等が出てきた案の段階で考えていただくということにしましょう。データを出す必要のある事業会社系のことも出てきた段階で、ご覧になって、これは我慢できる、我慢できないということを議論していただきたいと思います。
 後半の「また、金融資産の活用方法について、記載方法を検討すべきではないか。」の部分は、環境投資の記載方法ということなんですかね?

(事務局)
 今の話とは、別の話になります。

(河野座長)
 環境投資について、國分委員から話がありました環境会計ガイドラインでもそういう話になっているが、もっと広い投資である金融機関の直接間接金融等も出したらどうでしょうか。これについても案を出してみてください。

論点6.生物多様性重視の視点を導入すべきではないか。

(河野座長)
 次は論点6の生物多様性重視の視点についてです。これは具体的にEPIの方に上げるのでしょうか?本文で配慮するということであれば、それ自体は特段の反対はないと思いますが。

(佐藤委員)
 これはマネジメントシステムの話なのですか?

(川村)
 MPIはシステムではなくマネジメントの話です。その中の一部としてEMSが入っている構造です。

(河野座長)
 これは上妻ワーキンググループで対応するとすれば、こういう項目が考えられるということですよね。

(魚住委員)
 生物多様性の項目に入れるのがいいかどうかなんですが、企業が大量に海水を使っている場合があります。海水を使って、非接触式の熱交換で汚染させずにそのまま返しているが、ただ、温度は温まって返したり、物によっては冷やして冷たい温度で返したりしています。その海水量と温度差、そういう情報は生物多様性の定量的な情報として意義あるものではないかと思うのですが、検討して頂きたい。

(川村)
それは、工場や発電所等からの温排水による生態系への影響ということですか?

(魚住委員)
そうですね。温排水に限りません。冷排水もあります。

(上妻委員) 
 EPIの議論の中で、生物多様性についてどのくらい詳しく書き込むのかについて問題になり、そんなにたくさんは書けないということになりました。網羅的に生物多様性について、何をどこまで書かなければいけないのかということについて、いろいろな障害が出てくるということで、事例をあげることにしました。ただし、生物多様性に対する方針は出さなければいけないでしょう。他の定量的な情報に対しては、何をどこまで書けるのかは限られるかと思うので、暫定的に事例を書くということにしたのです。もし書き込むべきようなものがあれば、それを追加いたします。

(河野座長)
 それでは、生物多様性の重視ということについて、追加すべき項目があればワーキングで議論をお願いすることにします。

論点7.社会性の項目の取り扱いをどうするか

(河野座長)
 先ほども、社会的取組については見直しをするというご意見が多かったと思います。資料2(全体構成)の5頁に、現行ガイドラインでアイウエオという項目が、SP1からSP7までの番号でそのまま挙げられています。
 これについて、さらにどうしていくのか、2つの考え方があると思います。この社会の7分野はいいとして、このような表現でいいのか、あるいは組み換えがあるのかという社会的分野の大枠という話がひとつ。そして、それぞれの分野において期待する項目を、案にあるSP1からSP7までのいずれかの項目に再編するかという話が考えられると思います。
 現行ガイドラインで言うと、例えば、労働安全に関する情報について、その中に色々な項目や指標が挙げられていますが、それを全部くくってSP-1として良いかということです。

(國部委員)
 SPIをはずすという選択肢がないことだけは確かです。

(佐藤委員)
 まず社会性についてはパフォーマンス指標として上がっていますけど、本当はマネジメントです。いまの環境報告書のかなりの部分を占めるCSR報告書の中では、社会性についてはマネジメントをまず書いて、それから具体的な情報を書くという流れになってきています。報告書の構成として、環境だけマネジメントにして、社会性の取組だけが指標としてここに出てくるというのは、社会性のマネジメントはどうなのかと思ってしまいます。

(上妻委員) 
 現行のものを踏襲するということは、白紙のままということになりますが。

(河野座長)
 時間の問題があるので、議論の進め方の案を示したいと思います。ここについては、先ほど申し上げましたが7分野の大枠はこれでいいのではないかと思います。一部はみだしている部分もあるとは思いますが、GRI等を見てもほぼ入っています。この7項目を従来どおり並べるか、あるいは区別するか、違う並べ方をするかという問題があります。例えば人権と雇用とを分離するとか、あるいは労働、人権等、この組み合わせ方が変わって7か8項目になるかもしれません。この議論と、社会的取組みの項目が大項目だとすると、それぞれの中項目である7か8項目の中に何を具体的に入れるか。これについての議論という2つがあると思います。
 次回の第3回検討会の開催までに、社会的取組について造詣が深く、研究もされている上妻委員や後藤委員が含まれているワーキンググループに、國部委員、更に2003年度ガイドラインの時にこの部分を主として担当された佐藤委員に入っていただき、今の枠組みの中で議論して頂いて、次回の検討会に上げていただきたいと思います。時間的な制約はあるかと思いますが。

(上妻委員) 
 それはEPIにも関係するので、拡大WG自体は問題はなく、時間的問題だけだと思います。12日の第4回WGでの討議内容はすでに決まっているので、時間が足りなくなる可能性はあります。その時に一度やってみて考えるか、もしくは日程を別に設定して行うのか、ということだと思いますが、こちらのWGでということであれば実施いたします。

(河野座長)
 上妻WGで実施していただければ、ありがたいと思います。できれば2月初めに予定される次回の第3回検討会までに仕上げていただくという方向でお願いします。
 以上で事務局から出された7つの論点については議論したことになります。もし他の議論があれば、事務局に提出頂き、それを反映した案を次の検討会に出すことにしたいと思います。

(國部委員)
 骨子案について意見があったのですが、それは事務局に提出するということですね。

(森下委員)
 次回の検討会は最低でも3時間、場合によっては休憩を挟んで4時間という日程調整も必要になると思います。

(河野座長)
 以上で終わりますが、今回の意見を踏まえて次回のドラフト案を作っていただきたいと思います。次回の日程について事務局から説明していただきます。

(川村)
 次回日程は2月1日の15:00~17:00の予定でしたが、どう延ばすかを決めて頂ければ場所をとります。意見を頂く期限は1月10日頃と考えております。差し迫っており余裕がないタイミングではありますが、現在のスケジュールを維持しようと思うと、そのようなイメージになります。

(河野座長)
 第3回の検討会は、2月1日(木)の13:30~17:30の4時間といたします。以上で本日の検討会を終了させていただきます。

以上