3 水環境、土壌環境、地盤環境の保全

(1)水環境
 平成15年度全国公共用水域水質測定結果によると、カドミウム等の人の健康の保護に関する環境基準の達成率は99.3%ですが、生活環境の保全に関する環境基準項目の1つであり、有機汚濁の代表的な水質指標であるBOD(又はCOD)の環境基準の達成率は83.8%でした。水域別に見ると、河川が87.4%、湖沼が55.2%、海域が76.2%です。特に、湖沼、内湾、内海等の閉鎖性水域で依然として達成率が低くなっており、CODで見ると、東京湾は68%、伊勢湾は50%、瀬戸内海は70%となっています。そこで、湖沼の水質の保全を図るため、指定地域における市街地、農地等からの汚濁負荷削減対策の実施の推進、湖辺の水環境の適正な保全等のための措置を講じる「湖沼水質保全特別措置法の一部を改正する法律案」を第162回国会に提出しました。

グラフ 三海域の環境基準(COD)の達成率の推移

グラフ 環境基準(BOD又はCOD)達成率の推移


 地下水については、平成15年度の地下水質の概況調査結果によると、調査対象井戸の8.2%において環境基準を超過する項目が見られ、その中でも硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素については、6.5%の井戸で環境基準を超えています。汚染原因としては、施肥、生活排水、家畜排せつ物等が挙げられており、その対策が緊急の課題となっています。

グラフ 地下水の水質汚濁に係る環境基準(超過率の高い項目)の超過率の推移


 「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」において、地域の地下水管理や保全計画の支援のための「地下水管理手法」の検討や流量減少等が発生している身近な水域を対象とした「環境用水の確保方策」の検討などの施策を推進しています。

(2)海洋汚染
 海洋環境の保全に関しては、日本は、廃棄物等を船舶等から海洋投棄することを規制するロンドン条約や船舶等に起因する海洋汚染を防止するMARPOL73/78条約等を締結しており、これらに対応した国内措置により海洋汚染の防止に努めています。
 また、海洋環境の状況の評価・監視のため、水質、底質、水生生物を総合的・系統的に把握するための海洋環境モニタリングを行っています。
 油や廃棄物、赤潮などによる汚染の発生確認件数については、平成16年は425件と15年に比べ146件減少しました。一方、海上漂流物の目視による調査では、漂流物の内訳は発泡スチロール、ビニール類等の石油化学製品が多く、それらは九州西岸で多く確認されています。

グラフ 海洋汚染の発生確認件数の推移



(3)土壌汚染
 土壌は、一旦汚染されると有害物質が蓄積され汚染状態が長期にわたるという特徴を持っています。なお、このような土壌汚染に対し、土壌汚染対策法に基づく適切な土壌汚染対策の推進を図るとともに、対象物質、暴露経路等を拡充した総合的な土壌環境基準等の検討のための調査等を行いました。市街地等の土壌汚染問題については、近年、工場跡地の再開発等に伴い土壌汚染が判明する事例が増加しており、平成14年度に新たに判明した「土壌の汚染に係る環境基準」に適合しない事例は260件となっています。

グラフ 年度別土壌汚染判明事例数



(4)地盤沈下
 地盤沈下は、地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、粘土層が収縮するために生じます。平成15年度までに地盤沈下が認められている主な地域は37都道府県61地域となっています。かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市などでは、地下水採取規制等の対策の結果、地盤沈下の進行は鈍化あるいはほとんど停止しています。
 しかし、千葉県九十九里平野など一部地域では依然として地盤沈下が認められます。また、地盤沈下した海抜ゼロメートル地域などでは、洪水、高潮等による甚大な災害の危険性のある地域が少なくありません。そのため、地下水採取対策のほか、高潮対策、海岸保全施設整備などが進められています。

グラフ 代表的地域の地盤沈下の経年変化




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