第2部 環境問題の現状及び政府が環境の保全に関して講じた施策


 環境問題の現状と環境基本計画に基づいて平成16年度に実施した環境保全施策を、次のような章立てで報告しています。以下では、主要な分野における環境問題の現状と課題を明らかにしています。

第1章 地球規模の大気環境の保全
第2章 大気環境の保全(地球規模の大気環境を除く)
第3章 水環境、土壌環境、地盤環境の保全
第4章 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に係る施策
第5章 化学物質対策
第6章 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進
第7章 各種施策の基盤、各主体の参加及び国際協力に係る施策



1 地球規模の大気環境の保全

(1)地球温暖化
 近年、人間活動の拡大に伴って二酸化炭素やメタン等の温室効果ガスが大量に大気中に排出されることで、温室効果が強まって地球が温暖化するおそれが生じています。
 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2001年(平成13年)に取りまとめた第3次評価報告書によると、全球平均地上気温は20世紀中に約0.6℃上昇し、それに伴い平均海面水位が10~20cm上昇しました。こうした地球温暖化の進行に伴い、人類の生活環境や生物の生息環境に広範で深刻な影響を生じさせるおそれがあります。

グラフ 日本の二酸化炭素排出量


 日本の平成15年度の温室効果ガスの排出量のうち二酸化炭素排出量は12億5,900万トン、1人当たり排出量は9.87トンで、京都議定書の基準年の平成2年度に比べて総量では12.2%、1人当たり排出量では8.7%増加しています。これを部門別に見ると、産業部門が0.3%増加し、業務その他部門が36.1%、家庭部門が31.4%、運輸部門が19.8%増加しています。

グラフ 1)産業革命以降人為的に排出された温室効果ガスによる地球温暖化への直接的寄与度(1998年現在) 2)日本が排出する温室効果ガスの地球温暖化への直接的寄与(2003年単年度)

グラフ 業務部門別業種別延床面積の推移


 日本は、平成14年5月に地球温暖化対策推進法を改正し、同年6月には先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値約束を設定した京都議定書を締結しました。16年11月、ロシアが京都議定書を批准したことにより議定書の発効要件が満たされたため、17年2月16日に、京都議定書は発効しました。17年4月現在、149か国と欧州連合が京都議定書を締結しています。
 二酸化炭素は、人間活動のあらゆる局面から生じるものであり、このため、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠です。また、地球温暖化対策を推進するに当たっては、環境と経済の両立に資する仕組みを整備・構築していく必要があります。

(2)オゾン層の破壊
 地球を取り巻くオゾン層が、CFC(クロロフルオロカーボン)等のオゾン層破壊物質により破壊されていることが明らかになっています。オゾン層が破壊されると、地上に到達する有害な紫外線が増加し、皮膚ガンや白内障等の健康被害や生物の成育阻害等を引き起こすことが懸念されています。
 オゾン層は、熱帯地域を除き、ほぼ全地球的に減少傾向にあり、日本でも札幌、つくば、鹿児島で長期的な減少傾向がみられ、その傾向は札幌において最も大きくなっています。南極では、2003年(平成15年)に過去最大規模のオゾンホールが観測されました。

グラフ 日本上空のオゾン全量の年平均値の推移

グラフ 南極上空のオゾンホールの規模の推移


 オゾン層の破壊を防ぐため、日本では、オゾン層保護法等に基づき、オゾン層破壊物質の製造等の規制を行っているほか、家電リサイクル法、フロン回収破壊法及び自動車リサイクル法に基づき、製品の廃棄時におけるフロン類の回収・破壊等を義務付けています。


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