5 化学物質の環境リスク対策

 大気や水質の環境モニタリングの結果によれば、PCB、DDTなどの残留性の高い化学物質をはじめとする様々な化学物質が大気、水などの環境の構成要素や野生生物から検出されています。その中には人の健康や生態系への影響が懸念されている物質もありますが、科学的知見が不十分なものも少なくありません。このような中で、近年は特にダイオキシン類や内分泌かく乱化学物質に関する国民の関心が高まっています。

環境ホルモンと疑われる物質の環境実態調査結果の概況

わが国における発生源別のダイオキシン類排出量の目録(排出インベントリー)(概要)

 ダイオキシン類について見ると、大気中の濃度は、諸外国の都市域と比較して高い傾向にあります。また、ダイオキシン類は、わが国の海域、河川、湖沼の底質や水生生物からも検出されています。さらに、土壌中のダイオキシン類については、廃棄物焼却施設の周辺土壌における高濃度の汚染事例が報告されています。また、内分泌かく乱化学物質については、科学的に未解明な点が多いことから、科学的知見の収集と蓄積が課題です。
 化学物質の問題に対しては、予防的方策を広く適用すべきという原則を踏まえながら、化学物質の環境リスク(環境の保全上の支障を生じさせるおそれ)を適切に評価して管理することを基本として、基礎的データの整備及び人材の育成、環境リスクの評価等の推進、多様な手法による環境リスクの管理の推進、リスクコミニュケーションの推進など諸施策を進めることが重要です。

わが国におけるダイオキシン類の1人1日摂取量

ダイオキシン類の一日摂取量の経年変化

 近年、化学物質対策に関して注目すべき展開が図られています。「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」の制定は、有害性のある化学物質の環境への排出量及び廃棄物に含まれての移動量を事業者が自ら把握して届出を行い、国が集計・公表するPRTR制度をわが国に導入するもので、化学物質の排出量などに関する情報の社会的な共有と環境リスクの適正な管理に向けて大きな一歩となりました。
 また、ダイオキシン類による環境汚染に関しては、平成11年7月に「ダイオキシン類対策特別措置法」が制定されるとともに、大気、水、土壌などの各環境媒体にまたがる総合的な対策が開始されました。
 さらに、内分泌かく乱化学物質については、その有害性等未解明な点が多いため、関係省庁が連携して環境実態調査やリスク評価を推進するとともに、国際的に協調して試験方法の開発などを進めています。
しかしながら、化学物質については、なお、知見や情報の集積が必ずしも十分でなく、一層の取組が求められています。

化学物質の排出量の把握等の措置(PRTR)の実施の手順
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