6 自然と人間との共生の確保

 わが国の自然環境の状況を見ると、植生については、自然林や二次林の面積も減少する傾向にある一方で、市街地や造成地などの面積は増加する傾向にあります。干潟、藻場の面積や自然海岸の延長については、いずれも減少する傾向にあります。野生生物については、国内の野生生物種に多くの絶滅のおそれのある種があることが明らかになっています。また、国民の自然志向は高い水準で推移していますが、子供たちが自然とふれあう機会は減少してきています。

全国の植生の植生自然別にみたメッシュ数と出現頻度

地方別に見る植生区分の構成比

 自然と人間との共生を確保するためには、国土空間の特性に応じ、例えば山地、里地、平地、沿岸海域というそれぞれの地域の特性に応じて、多様な自然環境を体系的に保全するとともに、人が自然を体験し、自然に学び、自然の恵みを感じられるよう、日常生活や余暇活動などの様々な機会を通じ、自然との豊かなふれあいを推進することが必要です。
 このため、生態系の健全性を維持、回復し、自然と人間との共生を確保するための基本的な枠組みとなるものとして、生物多様性の保全及び持続可能な利用を目的とした「生物多様性国家戦略」が平成7年に策定されました。この戦略の基本的な方向に沿って、生物多様性の保全とその持続可能な利用を図っていくためには、生息地の減少や分断及び劣化の防止、移入種による影響の防止など、生物多様性の減少をもたらす様々な要因に対応するとともに、生物多様性保全の基盤となる情報の整備、生息地の復元や回復のための事業など生物多様性保全のための条件整備を図っていくことが重要です。

国立公園及び国定公園配置図

自然公園利用者数の推移

 このほか、野生生物の保護管理施策としては、絶滅のおそれのある野生動植物種のリスト、いわゆるレッドデータブックの基礎となるレッドリストが作成、改訂され、わが国の野生生物種の現状が明らかにされるとともに、平成11年には鳥獣の個体群に着目した保護管理制度が新たに導入され、科学的なデータを基礎とした合意形成による保護管理手法の展開が見られました。これら保全に係る個別施策を含め、今後、生物多様性国家戦略に基づく施策の一層の実効性の確保などを目的として、現行国家戦略の見直しを進めることなどが必要です。
 また、日常生活や余暇活動など様々な機会を通じ、人々が自然との豊かなふれあいを重ねることができるよう、地域の特性に応じ、かつ環境教育・環境学習にも資する各般の施策を推進していくことが必要です。

わが国における絶滅のおそれのある野生生物の種類

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