第2部 環境問題の現状と政府が環境の保全に関して講じた施策


環境問題の現状と環境基本計画に基づいて平成12年度に実施した環境保全施策を、次のような章立てで報告しています。以下では、主要な分野における環境問題の現状と課題を明らかにしています。
第1章 環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現
第2章 自然と人間との共生の確保
第3章 公平な役割分担の下でのすべての主体の参加の実現
第4章 環境保全に係る共通的基盤施策の推進
第5章 国際的取組の推進
第6章 環境基本計画の効果的実施

1 大気環境の保全

 わが国の大気環境は、かつて公害問題の中心的課題であった二酸化硫黄や一酸化炭素などによる大気汚染については改善されましたが、二酸化窒素や浮遊粒子状物質(SPM)などについては、自動車交通量の増加や交通渋滞などにより、都市部を中心に依然として深刻な状況にあります。特に大都市地域においては、二酸化窒素の環境基準の達成状況は依然として低い水準で推移しています。

二酸化硫黄濃度の年平均値の推移

自動車NOx法特定地域における二酸化窒素の環境基準達成状況の推移

 また、浮遊粒子状物質の濃度の年平均値を見ると、近年はほぼ横ばいが続いていますが、環境基準の達成率は、大都市地域を中心に依然として低い水準となっています。さらに、光化学オキシダント、騒音、悪臭についても大きな改善が見られない状況が続いています。

浮遊粒子状物質濃度の年平均値の推移

悪臭に係わる苦情件数の推移

 大気環境の保全のためには、環境基準等の目標の達成、維持を図ること、多様な社会経済活動に伴う環境への負荷を低減させること、水環境、土壌環境、生態系との関連等へ着目することなどに留意して、適切な施策を推進する必要があります。
 大都市を中心とする自動車による大気汚染については、排出ガス規制の強化、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx法)」による総合的取組を進めていますが、その効果が自動車交通量の増加などに減殺され、改善が進んでいません。このため、自動車NOx法に基づく総量削減計画の目標である平成12年度末までの二酸化窒素に係る環境基準の「おおむね達成」は厳しい状況にあり、一層の対策の強化が必要となっています。さらに、浮遊粒子状物質(SPM)についても、環境基準の達成状況は低いレベルで推移しています。特に、近年においては、国際的な研究などにもあるように、特に粒径が小さな微小粒子状物質(PM2.5)やディーゼル排気粒子による健康影響が懸念されています。このため、自動車NOx法の改正案の国会提出を含め、これらの施策の実現に向けて、自動車排出ガス総合対策の充実・強化の推進を図っているところです。光化学オキシダントについても環境基準の達成状況は極めて低くなっています。また、騒音に係る環境基準の達成状況も厳しい状況にあり、環境基準の達成に向けて一層の対策の推進が必要です。悪臭に関しては、平成11年度は前年度に比べて減少したものの、依然として多い状況にあり、また悪臭の発生源の多様化も進んでいることから、さらなる対策を進める必要があります。
 有害大気汚染物質対策については、平成9年4月に施行された改正大気汚染防止法に基づき、地方公共団体において大気環境モニタリングの実施や発生源対策の推進を図っています。また、事業者団体ごと全国単位の自主的な排出抑制の取組を進めてきましたが、今後、これに加えて、ベンゼンの高濃度地域を対象として、新たな地域単位の自主的な排出抑制の取組の促進を図っていきます。

国設大気測定網配置図

国設環境大気汚染測定所平成11年度測定結果
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