2 水環境の保全

 最近の水環境の状況は、カドミウムなどの有害物質(健康項目)による汚濁は改善されてきていますが、水の異臭味などの原因となる有機汚濁(生活環境項目)については改善がはかばかしくありません。特に湖沼、内海、内湾などの閉鎖性海域においては、アオコ、赤潮、青潮などが発生し、水道や漁業などに影響が出ているところもあります(いわゆる「富栄養化」の問題)。

健康項目の達成状況(平成11年度)

 一方、水環境を水の流れの観点から見た場合、水需要の増大、急速な都市域拡大に伴う舗装面の増加などによる不透水性域の拡大、排水のみを目的とした都市内河川の整備、過疎化や高齢化などを背景とした森林や農地の管理水準の低下などによる水源かん養機能の低下などが生じています。
 これらに伴い、河川流量の不安定化、湧水の枯渇、水辺環境の喪失など環境保全上健全な水循環が損なわれている状況が見られます。また、渇水年における水資源賦存量(降水量から蒸発散によって失われた水の量を差し引いた残量)が減少する傾向が見られ、渇水時における水質の悪化、生態系への影響などが生じている場合があります。

平成11年度地下水質測定結果

 水環境の保全に関しては、水環境を構成する水質、水量、水生生物及び水辺地を総合的にとらえ、環境への負荷が水の自然的循環の過程における浄化能力を超えることのないよう、水環境の安全性の確保を含めて、水利用の各段階における負荷を低減し、水域生態系を保全するなど、施策の総合的推進を図る必要があります。
 水環境問題としては、工場・事業場に対する排水規制に比べて市街地における一般家庭からの生活排水や農用地における施肥などの非特定汚染源による水質汚染への対策が課題となっています。
 また、湖沼、内湾、内海などの閉鎖性水域における窒素、燐などの流入による富栄養化の進行への対策も必要です。
 平成5年1月の中央環境審議会答申を受け平成6年度以降要監視項目とされた化学物質についてモニタリングを実施してきましたが、これら化学物質が水環境中に存在している状況を踏まえ、今後さらなる知見の集積を図り、必要に応じ対策を検討することが重要です。また、水生生物への影響にも留意した環境基準などの目標について調査検討を推進する必要があります。さらに、水質に加え、水量、水生生物、水辺地も視野に入れた「水循環」の視点が重要であり、「環境保全上健全な水循環確保」に向けた施策の展開が求められています。

環境基準(BOD又はCOD)達成率の推移
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