第3節 重層的で多様な環境保全のパートナーシップの形成を図る


 持続可能な社会を創造していくためには、各主体間のパートナーシップが形成されることが不可欠です。その土台となる環境コミュニケーションを活性化させるために、行政はコミュニケーションの手段を活用し、そのための基盤の充実を図らなければなりません。

1 身近な地域における環境保全から国際協力まで
 個人、企業、NGO、行政などの様々な主体が、環境コミュニケーションにより、相互理解を深め、信頼関係を築き始めています。こうした取組によって情報交換のネットワークが生まれ、やがて複数の主体が環境保全のための共通の目標に向かって協力し合うパートナーシップへと発展していきます。多様な主体によるパートナーシップは価値観や問題意識を融合させ、それぞれの持つ能力や資源を有効に組み合わせることで、問題解決のための大きな原動力となります。現在、このような環境保全のパートナーシップが形成される場面は、生活に密着した身近な地域における活動からアジア太平洋地域や、地球環境問題を視野に入れた国際的な活動まで重層的な広がりを見せています。
 身近な地域内におけるコミュニケーションは、まちづくりを考える場への住民参加や、住民主体のコミュニティ形成などを通じて活発になっています。地球環境は地域の環境が無数につながり、相互に依存、影響しあって構成されているもので、地域での取組は地球環境問題への対応の基礎となります。また、日常生活そのものが環境負荷の原因となっている今日、ライフスタイルの見直しが課題となっています。私たちが自らの生活と環境との関わりの意識を深めつつ、足元から取組を進める上で、身近な地域は環境保全への取組の絶好の場と考えられます。地域で活動する団体間において、地域を越えた国内での情報交換や環境保全への取組も始まっています。
 さらに視点を国レベル、地球レベルに広げて考えていくと、時間や場所の違いを越えて共通の環境問題を抱える地域が世界各地に存在し、様々な環境保全についての対応がなされています。いくつかのNGOによって、発展途上国における自然保護活動や国際的な共同研究など、同じ地球を共有しているものとして、連携を図り、地球全体の利益につながる独自の活動が行われています。
 今日の複雑な因果関係を有する環境問題を解決するために、個人、企業、NGO、行政など様々な主体が環境コミュニケーションを進めながら、それぞれの特徴と役割を発揮し、相互に連携するという、重層的で多様なパートナーシップの構築が今後も重要となっていきます。

パートナーシップ事例一覧表

2 環境コミュニケーションを促進していく上での行政の役割
 環境コミュニケーションを活性化させるため、行政は様々な役割を担っています。ITや情報通信技術を活用したコミュニケーション基盤の構築、調査研究等の充実と環境情報の整備・提供、環境報告書や環境ラベルなど環境コミュニケーションに係る各種手法の開発や普及、環境教育・環境学習の推進、各利害関係者の間を調整し合意形成をするための枠組みづくりなどにおいて、行政は積極的な取組を推進していかなければなりません。

環境コミュニケーションによる自己評価と相互評価を通じた持続可能な社会の実現
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