第2節 地球温暖化対策をどのように前進させていくか


1 地球温暖化防止に向けた国際的取組の進展
 地球温暖化問題は、世界中のほぼ全ての社会活動を原因としています。これは、特定地域や特定の温室効果ガス排出源における対策だけではなく、解決に向けて全地球的な協調が必要であり、社会科学的な各種の政策手法が重要な役割を果たすことを意味します。現在先進国間、先進国・途上国間の協調はもちろん、科学的組織等を巻き込んだ国際的な体制の下で、科学的知見に基づいた国際的な取組の枠組みづくりが進められています。
 1997年のCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)で定められた京都議定書では、主要先進国の排出削減目標を定めたほか、目標達成のための国際的仕組みとして排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズムといういわゆる「京都メカニズム」、森林による吸収量を算入する「吸収源」を定め、各国が国情に応じて政策・対策を実施することを求めています。また2000年にオランダのハーグで開催されたCOP6では、特に途上国の参加、京都メカニズムの具体化、吸収源の扱い、遵守制度の問題といった主要な項目について各国の調整が難航し、期間中に合意に至ることができずに、2001年半ばに引き続き交渉が行われることになりました。COP3の議長国を務めたわが国としては、米国への働きかけなどCOP6再開会合の成功に向け努力を続けます。

2 わが国に課せられた達成目標と今後の課題
 わが国はGDP当たりの二酸化炭素排出量の少なさにおいて、途上国を含む世界トップレベルにあります。一方、温室効果ガスの排出量においては世界第4位の排出大国であり、一人当たりの温室効果ガス排出量も高水準といわざるを得ません。わが国は地球温暖化防止において、国際社会に対し大きな責任を負っているのです。
 わが国は京都議定書において、2008年から2012年の第1約束期間において1990年比6%の温室効果ガスの排出を削減することが目標とされています。1998年時点の二酸化炭素排出量は、1990年比で5.6%増加しています。温室効果ガス全体でみると、1998年時点の排出量は基準年と比べて約5.0%増加しており、第1約束期間における目標達成のためには現時点における排出量から、約11%削減しなければなりません。
 部門別の二酸化炭素の排出量では、産業部門からの排出量が最も大きく、これに運輸部門、民生部門が続いています。また、平成2年の排出量を100とした推移を見ると、産業部門・工業プロセス部門では横ばい又は漸減の傾向が見られるのに対し、運輸部門、民生部門(家庭)、民生部門(業務)では大きく増加しています。民生部門(業務)の主な排出増加の主な原因は、オフィス面積の拡大に伴う電力需要の増加、運輸部門では自家用車保有台数の増加、乗用車の大型化、乗車率の低下、貨物輸送量の増大が、民生部門(家庭)では世帯数の増加と家電製品の普及が主な原因と考えられています。個別の機器におけるエネルギー効率の改善効果がある一方、経済活動の拡大やエネルギー多消費型のライフスタイルの浸透によって二酸化炭素排出量は1990年比で増加しているという構図になっています。社会全体における排出の削減を目指した温室効果ガスの排出削減を促す仕組みが組み込まれた社会の構築が課題となっているのです。

各国・地域のGDP当たりCO2排出量

各国の二酸化炭素排出量

わが国における温室効果ガス排出量の推移

主要部門におけるCO2排出量の推移

3 社会経済活動の変革を目指す国内対策の推進
 わが国の地球温暖化対策は平成10年に決定された「地球温暖化対策推進大綱」により実施されています。また、同年「地球温暖化対策の推進に関する法律」が制定されました。同法に基づき平成11年に閣議決定された「地球温暖化対策に関する基本方針」では、国、地方公共団体、事業者、国民の全ての主体が温暖化対策を推進すべきことが示されています。温暖化防止には特効薬が存在しないため、社会のあらゆる主体が、他の主体との調整を行いながら引き続き対策に取り組んでいくことが必要です。
 温室効果ガスの効果的・効率的な削減のためには、規制的手法、経済的手法、自主的取組などあらゆる政策措置の特徴を活かして、有機的に組み合わせるポリシー・ミックスの考え方を活用することが考えられます。今後、わが国としては、わが国を含む関係国による議定書締結を可能なものとするため、国際交渉に積極的に臨み、京都議定書の2002年までの発効に向けた国際的熱意が失われないよう努めることが必要です。また、この国際交渉の進捗状況を見定めながら現行施策の評価を踏まえて所要の見直しを行い、わが国の経済や国民生活への影響について十分に配慮し、国民の理解と協力を得て、締結に必要な国内制度に総力で取り組むことが不可欠です。

地球温暖化対策推進大綱に基づく施策の体系
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