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第2節 

4 光化学大気汚染対策

 光化学オキシダント濃度は、依然、全国ほとんどの地域で環境基準を超えることがあり、また、気象条件によっては注意報が発令される事態がしばしば発生していることから、今後とも、汚染状況の推移を的確に把握し、適切な対策を講じていく必要がある。
(1) 光化学大気汚染の発生状況
ア 全国の注意報等発令状況
 62年の光化学オキシダント注意報(光化学オキシダント濃度の1時間値が0.12ppm以上で、気象条件からみて、汚染の状態が継続すると認められるとき発令される。)の発令は、18都府県で延べ168日となり、遅く涼しかった梅雨と短かった夏のため発令の少なかった61年の約2倍と大きく増加し、60年とほぼ同じレベルの日数となった(第2-2-3表)。
 発令延日数の月別内訳は、4月に5日、5月に20日、6月に62日、7月に44日、8月に34日、9月に2日、10月に1日となっており、特に6月に発令が多かった。
 なお、62年の注意報発令日における光化学オキシダント最高濃度は0.24ppmであったが、光化学オキシダント警報(地方公共団体により発令基準は異なるが、通例光化学オキシダント濃度の1時間値が0.24ppm以上で、気象条件からみて汚染の状態が継続すると認められるとき発令される。)の発令は1回もなかった。
イ 注意報発令の地域内訳
 注意報発令延べ日数の地域内訳をみると茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の1都6県(東京湾地域)で115日、京都府、大阪府、奈良県及び兵庫県の2府2県(大阪湾地域)で31日となっており、これら2地域で全体の約90%を占めている。
ウ 被害届出人数
 62年の光化学大気汚染による被害者の届出人数(自覚症状による自主的な届出による)は1,056人で、昨年に比べ大幅に増加し、一昨年並となっている。


(2) 光化学大気汚染緊急時対策
 注意報等の発令の判断に必要な気象データを得るため、環境庁では、夏季に光化学大気汚染の発生しやすい東京湾及び大阪湾の二地域内の四地点で気象観測を行い、地方公共団体に気象情報の提供を行っている。また、気象庁では、全国8ヶ所の大気汚染気象センター及び11ヶ所の大気汚染気象予報業務担当官署で光化学大気汚染の発生しやすい気象条件の解析と予報を行い、地方公共団体に通報している。これら情報と測定局データを基に、地方公共団体では、光化学オキシダント緊急時対策要網等により注意報等を発令すると同時に、ばい煙排出者に対する大気汚染物質排出量の削減及び自動車使用者に対する不要不急の自動車の走行の自粛を要請するほか、住民に対する広報活動と保健対策を講じている。
(3) 炭化水素類排出抑制対策
ア 固定発生源からの炭化水素類排出抑制対策
 環境庁では、57年7月、炭化水素類固定発生源対策検討会における排出実態の把握、排出防止技術の評価等についての検討結果等を踏まえ、固定発生源に対する炭化水素類の排出抑制対策の強化、推進を図るため、「光化学大気汚染防止のための炭化水素類対策の推進について」を決定した。
 環境庁は、この方針に基づき、地方公共団体等関係方面に対して、57年7月排出抑制対策の推進について、さらに、58年3月発生源データの整備について所要の要請を行い、62年度においては、地方公共団体における発生源データの整備の一層の促進を図った。
イ 自動車からの炭化水素排出低減対策
 自動車から排出される炭化水素については、45年から規制が実施されておりガソリン・LPG乗用車についてみると50年度規制により1台当たりから排出される炭化水素の量は、未規制時に比べて92%の削減となった。
(4) 光化学大気汚染調査研究の推進
 光化学大気汚染は、広域にわたる極めて複雑な現象であり、それに関する調査も、光化学反応機構、移流拡散等の気象の影響、原因物質の排出実態、それらを盛り込んだ光化学大気汚染予測モデル、さらには、二次生成物質の健康影響や光化学オキシダントによる植物影響など広範な分野にわたって行われている。
 なお、現在、光化学大気汚染予測のモデルの精度向上に努めてきており、こうした成果を踏まえ、61年に引き続き62年6月から8月までの間、東京湾地域一都六県を対象とした光化学大気汚染広域予測システムの運用実験を、気象庁及び関係地方公共団体の協力を得て行った。

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