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第1節 

3 自然環境保全の展開

 自然環境の保全は、原生的な自然や優れた風景地等の自然、農林地域を含めた二次的自然、都市地域の自然等自然の質に応じて体系的に進めるとともに、自然とのふれあいを求める国民ニーズに対応する必要がある。また、最近の地価上昇等を背景に、大都市圏周辺の自然地への住宅供給等による利用圧力が高まっていることから、各種の制度を活用する等により、こうした自然環境の保全を図るよう適切に対処する必要がある。
 国立公園等の自然公園については、「自然公園法」に基づき逐次指定され、保護・利用が図られてきたが、62年7月には、我が国28番目の国立公園として釧路湿原が指定された。釧路湿原は、我が国最大の湿原であり、優れた景観を有しているとともに、特別天然記念物のタンチョウ等の重要な生息地であり、国際的な湿地保護条約であるラムサール条約の登録湿原でもある。
 また、「自然環境保全法」に基づく原生自然環境保全地域等の指定、自然環境保全基礎調査等の施策が実施されている。さらに、自然に親しむための各種施設の整備等が行われている。
 一方、野生生物については、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に基づく鳥獣保護区の設定、狩猟や取引の規制等のほか、「自然環境保全法」、「自然公園法」、「文化財保護法」等により保護が図られている。また、62年度においては新たに鳥獣以外の野生生物の保護増殖事業として、ヨナグニサン(沖縄県与那国島周辺に生息する世界最大の蛾)とムサシトミヨ(埼玉県熊谷市内の河川にのみ生息する魚)の保護増殖事業を実施した。
 さらに、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」により取引が規制されている野生動植物の国内流通を規制する等のため、62年6月に「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律」が制定され、同年12月から施行され、その適正な実施を図るため、保護・識別専門員ネットワークの整備等体制の整備を進めている。

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