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第3節 

4 健康被害対策及び予防事業の推進

 公害による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図ることは、公害対策の重要な課題である。このため、慢性気管支炎等の大気汚染系疾病が多発している地域(第一種地域)及び水俣病、イタイイタイ病等が多発している地域(第二種地域)において都道府県知事等による認定を受けた公害健康被害者に対しては、48年に制定された「公害健康被害補償法」により救済が図られており、同法に基づき9万9,410人が認定され(61年12月末現在)、補償給付の支給等を受けている。
 第一種地域の在り方については、近年における大気汚染の態様の変化を踏まえ、58年11月、環境庁長官から中央公害対策審議会に対し諮問が行われ、61年10月、「公害健康被害補償法第一種地域のあり方等について」答申が行われている。
 同答申においては、現在の大気汚染が健康に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できないものの、その影響がぜん息等の主たる原因ということはできず、このような状況下においては、民事責任を踏まえた制度として、汚染原因者の負担によって、個人に対して個別の補償を行うことは適当ではなく、?現行の第一種地域の指定解除及び既存患者に対する補償の継続、?健康被害防止事業の実施、調査研究の推進及び環境保健サーベランス・システムの構築を内容とする総合的な環境保健に関する施策、?大気汚染防止対策の強化、を行うことを提言している。
 環境庁においては、同答申を踏まえ「公害健康被害補償法の一部を改正する法律案」を第108回国会に提出するなど所要の措置を講じていくこととしている。
 水俣病については、現在なお多数の未処分者が残されている(61年12月末現在5,749人)ところから、認定業務の促進が最重要課題となっている。認定業務については、52年6月の水俣病に関する関係閣僚会議の申合せ等に基づく体制の整備・充実を通じ、処分の促進を図ってきたところであり、61年度には、熊本県における月間250人検診・200人審査体制への移行、離島在住申請者のための御所浦検診センターの設置、棄却者のうち四肢の感覚障害等一定の要件を満たすものに対して医療費の自己負担分を補助する特別医療事業の実施等施策の充実を図ったところである。

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