2 国境を越える環境問題
国境を越える環境問題として、酸性雨及び有害廃棄物の越境移動についてみよう。
(1) 酸性雨
酸性雨は、化石燃料の使用によって発生する硫黄酸化物、窒素酸化物が原因となって生ずると考えられているが、発生源から数千キロも離れた所に降下することがあり、欧州や北米において国境を越えた問題となっている。
国際機関等の資料により、これら両地域に降下する雨の酸性度をみると、欧州においては大陸中央部、北米においては東部で高くなっており、また、酸性度の高い地域が国境を越えて広がっている(第1-3-6図)。
酸性雨は、河川や湖沼を酸性化させ、魚類の減少等生態系に影響を与えたり、樹木や農作物に直接的に、あるいは土壌の変化を通じて影響を与えたりすることなどが知られている。欧州や北米では、酸性雨によるとみられる湖沼の酸性度の上昇や、森林の被害などの現象が生じており、大きな社会問題となっている。
(2) 有害廃棄物の越境移動
有害廃棄物が国境を越えて移動する際の管理のあり方が、欧州、北米で問題となっている。これらの地域では、国が陸続きで隣接しているため、廃棄物の国境を越える輸送が比較的容易であり有害廃棄物の発生国に処理施設がないこと、まとめて大量に処理した方が経済的であること等を理由として、頻繁に国境を越えた有害廃棄物の移動が行われている。
OECDによれば、58年に、欧州において約10万回、北米において約5千回の有害廃棄物の越境移動が行われていると推測されている。
しかしながら、有害廃棄物の越境移動については、各国ごとに有害廃棄物の処分、輸送等に関する制度が異なったり、情報が適切に伝達されないことがあるため、その管理が十分になされない場合がある。このため、欧州や北米においては、有害廃棄物の越境移動に関する国際的な管理が課題となっている。