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第5節 

3 地域環境管理計画

 以上述べたように、地域の特性に応じた環境の健全な利用、快適環境づくり等の各種の施策が推進される一方、地方公共団体においては、これらを含む環境保全のための諸施策を有機的に結合し、総合的かつ計画的な環境施策の推進を図ることを目的として地域環境管理計画の策定が図られている。
 このような計画の策定のためには、まず、地域の自然的、社会的条件等に関する各種の調査検討結果を踏まえ、長期的な展望に基づき行政主体が地域環境の望ましい在り方を明確に打ち出すことが重要である。また、地域住民の環境に対するニーズの高度化、多様化やエネルギー及び財政上の制約等をも考慮しながらその実現に向けて環境資源の利用に当たっての配慮が望まれる事項等を明らかにするとともに、関連する各部門の行政、事業者、地域住民等が協同して、各種の方策を計画的に実施していくことが重要である。
 都道府県、政令指定都市においてはすでに17団体で地域環境管理計画が策定され、また、他の多くの地方公共団体においても検討が進められている。
 その内容をみると、40年代に策定されたものには、地域における公害防止の総合的、計画的な実施を目指すものが多かったが、50年代に入ると独自の性格付けを行っているものや創意工夫をこらしたものなど多様な計画が策定されるようになってきている。
 最近策定された計画には、個別の環境質に着目したもの(鹿児島県、富山県等)もあるが、環境汚染の未然防止や快適環境づくりなどをも含めた総合的な環境政策を計画的に推進することをその目的とするもの(大阪府、神奈川県、三重県)が増えてきている。これは、環境情報システムを体系的に整備するとともに、それに基づく将来のビジョンを提示したり、各種施策を体系化することにより、快適な環境づくりや土地利用等の分野にも積極的に取り組む必要があることが認識されはじめたからであると考えられる。
 また、現在計画策定を検討している団体においても、このような認識が定着しつつあることがうかがわれる。これらの団体の多くは、地域の環境の将来ビジョンを明らかにするとともに快適な環境づくりなどの新たな行政分野に対応するため、地域の総合計画等に基づき、長期的、総合的な目標を示すこととしている。また目標を達成するため諸施策を体系づけ、さらに、環境保全に関する住民意識の向上等を図ることとしている。
 このような地方公共団体の取組を更に発展させていくためには、今後計画の策定を検討している地方公共団体の手引きとなるよう計画の策定方法やこれと密接に関連した環境情報システムの在り方等につき一層の検討を進めるとともに、全国的な規模の事業や施策と地域環境管理計画との整合性、地方公共団体間の調整等の課題に取り組む必要がある。

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