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第5節 

2 快適な環境づくり

(1) 快適環境づくりの重要性
 豊かな緑や清らかな水辺、美しい街並や歴史的な雰囲気などといった快適な環境(アメニティ)は、私達の生活に潤いとやすらぎをもたらす。国民の生活環境に対するニーズが高度化している今日では、公害の防止や自然環境の保全にとどまらず、このような快適な環境を積極的に創造していくことがますます重要となってきている。
 環境の快適性を高めるための快適環境づくりの施策としては、環境を構成する自然、施設、歴史などの要素に着目して分類すると、?緑や水といった快適な環境に親しむための施設の整備 ?身の回りにある樹林地や水辺などの良好な自然の保全 ?道路や街並の景観など快適な都市・生活空間の創出 ?日常生活において、環境に配慮した生活・行動ルールを確保するための施策 ?環境の質を高める歴史的・文化的事物の保存などの様々なものが考えられる。快適環境づくりは、行政、住民、企業等が役割を分担しつつ、これらの施策をそれぞれの地域の自然的、経済社会的、文化的、歴史的特性に応じて選択し、実施していくことが肝要である。
(2) 快適環境づくりの諸施策
 国としても、各地の取組が、このような望ましい快適環境づくりの方向に沿って円滑に進められるように必要な支援を行う必要がある。このため、環境庁では、59年度より、市町村において創意工夫を活かしたアメニティ・タウンづくりを総合的に進めていくため、「快適環境整備事業」を実施しているところである。その助成対象となった20市町村においては、行政、住民、企業等の創意工夫を糾合し、地域固有の環境素材を活かしながら、それぞれ特色ある「アメニティ・タウン計画」が策定されている。たとえば、岩手県盛岡市では、「自然と歴史の調和したまちづくり」を理念として、都市内の緑や身近な水辺と城下町のたたずまいを残す街並を活かしつつ潤いのある都市環境づくりを目指している。また、長野県諏訪市では、「水とみどりに映える快適都市づくり」を理念として、諏訪湖の親水護岸づくりや霧が峰の自然遊歩道の整備等市民と良好な自然とのふれあいに重点を置いた計画が策定されている。
 また、快適な環境を目指す地域の活動を支援し、補完していく観点から、環境庁では55年度以来地方公共団体及び(財)日本環境協会と共催で、快適環境シンポジウムを開催してきた。本シンポジウムは、地方公共団体職員を中心に、学識経験者や住民団体の代表なども交えて、毎回全国各地の事例を紹介し、幅広く経験や意見の交流を行い、地域における快適環境づくりの定着を図っている。59年度は第5回シンボジウムが「快適環境創造への道」をテーマとして、長崎市において開催された。
 建設省においては、社会資本の整備と併せて地域住民に憩いと潤いの場を提供するため、都市公園事業、下水道事業、道路・街路事業、河川環境整備事業等を推進しているほか、良好な都市景観の創造を目的として各種事業を総合的に推進する「都市景観形成モデル事業」等の施策を実施している。さらに、国土庁においては、地域特性を活かした魅力ある地方都市を整備するため「水緑都市モデル地区整備事業」及び「花と緑の都市モデル地区整備事業」を実施しているほか、自治省においても、地域の創意に基づいた個性的で魅力あるまちづくりを推進するための「まちづくり特別対策事業」を実施するなど、各省庁において、地域の快適環境づくりに対する支援が行われている。

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