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第2節 

4 近隣騒音

(1) 近隣騒音問題の現状と背景
 近年、騒音に関する苦情の中で、カラオケなどの深夜営業騒音、拡声器放送の騒音、家庭からのピアノ、クーラー、ペット等の生活騒音などの近隣騒音に関する苦情の割合が高まっており、特に深夜営業騒音に関する苦情の増加が著しい(第2-2-14図)。
 また、近隣騒音は都市規模が大きいほど問題となっており、環境庁が58年度に実施した近隣騒音についての環境モニターアンケート調査の結果では、近隣騒音により迷惑を受けたことのある者の割合は、人口25万以上の市区77.4%、人口25万未満の市区66.3%、町58.4%、村55.0%となっている。
 この背景としては、まず、飲食店等の都市住民へのサービス施設が住宅地の近くに数多く立地し、カラオケ装置などの使用が一般化してきていること、消費生活の高度化、多様化に伴って、ピアノ、ステレオ、クーラーのような家庭で使用される音響機器等が広範に普及してきていること等があげられる。また、都市規模が大きくなるほど、一般に居住密度が高く、共同住宅に居住する者の割合も高くなっているが、このような環境の中でお互いに迷惑をかけないように生活するという社会慣習が十分に成熟していないこともあげられる。


(2) 都市と騒音
 都市内においては、各種人間活動による騒音が発生する一方、環境の静けさを求める意識が高くなっている。総理府が59年6月に実施した「環境問題に関する世論調査」においては、居住地の生活環境の問題点として騒音をあげる者の割合が24%と高くなっている。また、同調査において、快適環境づくりを進める上で重要な要素として静けさをあげる者の割合は34%と、前回の56年調査の21%に比べてかなり増加している。いずれの調査結果でも、都市規模が大きくなるほど、住民が騒音問題を重視していることがわかる(第2-2-15図)。
 近隣騒音は、都市住民へのサービス提供に伴い、又は都市住民の生活そのものから発生するというように、都市生活と密接に結びついている問題であり、良好な都市環境を形成する上で、その解決は極めて重要な課題となっている。


(3) 近隣騒音問題への取組
 これら近隣騒音のうち、カラオケ等の深夜営業騒音及び拡声機放送による騒音については、地方公共団体の公害防止条例等により、音量規制や機器の使用時間の規制等の規制が行われている。また、カラオケ騒音等の問題については、60年2月13日より改正施行された「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」により、風俗営業及び深夜飲食店営業について、清浄な風俗環境を保持する等の観点から、音量規制等の対策も講じられることとなった。あわせて、深夜営業店舗の防音対策や、拡声器の適切な使用方法に関する指導を進めるとともに、カラオケ装置の利用者に対し周囲への影響に対する配慮を喚起していくことも必要である。
 家庭生活からの騒音については、クーラー、洗濯機等の家庭用機器や住宅設備の低騒音化、住宅の遮音性能の向上を図るとともに、騒音防止に関する意識の向上を図るための啓発活動を進めることが肝要である。
 また、近隣騒音は、被害感の程度が音の内容や質という音量以外の要素や近隣との付合いの程度にも左右されるというきわめて心理的要素が強い側面を有するということも大きな特徴としてあげられ、その態様に応じたきめ細かな対策を講ずることが必要である。

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