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第4節 

3 地域における環境管理の推進

(1) 地域環境管理の理念
 地域環境管理は、積極的に良好な環境を保全し、創造していくことを目的として、土地、水、大気、生物等の限りある環境資源を適切に保全し、利用するという観点から、公害防止、自然環境保全のための規制中心の施策や快適な環境づくりなどの関連する諸施策を有機的に結合し、総合的かつ計画的な環境政策の推進を図るため検討が進められてきている。
 このような政策の推進のためには、まず、地域への自然的、社会的条件等に関する各種の調査検討結果を踏まえ、長期的な展開に基づき行政主体が地域環境の望ましいあり方を明確に打ち出し、地域住民の環境に対するニーズの高度化、多様化やエネルギー及び財政上の制約をも考慮しながらその実現に向けて環境資源の利用に当たっての配慮が望まれる事項等を明らかにするとともに、関連する各部門の行政、事業者、地域住民等が共同して、各種の方策を計画的に実施していくことが重要である。
(2) 地方公共団体の動向
 地域環境管理の推進を図るため、多くの地方公共団体において地域環境管理計画が策定され、またはその検討が進められている。
 地域環境管理計画策定の動きをふり返ると、48年9月に策定された大阪府環境管理計画(BIGPLAN)をはじめとして、40年代後半に策定された計画は地域における公害防止の総合的、計画的な実施を目指すものが多い。50年代には入ると、環境アセスメントの技術指針としての性格を持つ川崎市環境管理計画や、自然環境質指数の設定等の独自の工夫をこらしつつ県の総合計画の目標であるよりよい環境づくりの具体化を目指す宮城県環境管理計画など、多様な計画が策定されるようになった。最近の地域環境管理計画は、大阪府環境総合計画やかながわ環境プランなどのように、公害の防止、自然環境の保全をはじめとして、環境汚染の未然防止や快適な環境づくり等を含めた総合的な環境政策の計画的推進を目指すものが増えている。このような推移は、環境情報システムの体系的整備やそれに基づく将来ビジョンの提示、各種施策の体系化等により地方公共団体が従来の規制行政を中心とした施策体系では対応が困難な快適な環境づくりや土地利用等の分野に積極的に取り組みつつあるためであると考えられる。
 一方、鹿児島湾水質環境管理計画や富山県大気環境管理計画などのように、地域の特性やその時々の要請に応じて、まず個別の環境質に関する長期的、計画的な施策の推進を目指す計画も策定されつつある。
 また、環境管理計画の実施に当たって大阪府や神奈川県など既に計画を策定した団体においては、環境情報システムの整備が進められている。
 総合的な環境政策の計画的推進を目指すものの例として、57年12月に策定された三重県中南勢地域環境管理計画を紹介する。


 本計画は、三重県第2次長期総合計画に基づき、県においては、環境保全諸政策を推進するための基本となる計画であり、市町村に対してはそれぞれの地域における主体的な環境保全対策が相互に整合を保ち、有機的、効率的に立案、実施されるための基本となり、また、地域住民に対しては、合意と連帯に基づき地域が一体となった快適な環境を創造するための基盤となるものである。本計画では、公害、自然等の各項目について、その保全目標を明らかにするとともに、これを実現するために必要となる諸施策及び今後この地域の環境資源を利用するに当たっての指針を提示している。この指針は、地域の特性に応じて環境利用に際しての条件等を提示するものであり、たとえば、水質の指針は、水質予測モデルにより一定規模の汚濁源を想定した場合の環境汚染予測を行い、想定した汚濁現源による目標水準に関する寄与度の大小から環境利用可能性を評価するとともに、環境利用に当たっての配慮事項を明らかにしている(写真「水質に係る地域環境特性評価図」)。
 58年12月現在地域環境管理計画を検討中の都道府県・政令指定都市は、既存計画の改定を検討中の団体を含め36団体であり、これらの団体においても地域環境管理の必要性に関する認識が定着しつつあることかがうかがわれる。これらの団体の多くは、総合計画等に基づき、地域環境の将来ビジョンを明らかにし、また、快適な環境づくり等の新たな行政分野に対応するため、地域の環境保全に関して明確な目的を示し、その達成に向けての長期的、総合的な方針を示すとともに、この方針に基づき諸政策を体系づけ、また、環境保全に関する住民意識の向上等を図ることとしている。
 現在検討中の団体においても、計画策定に際し、調査解析手法、計画策定の手続、環境情報の体系的整備手法、計画の進行管理システム等の確立が課題となっている。
(3) 地域環境管理の総合的推進
 このような地方の動向を踏まえ、地域環境管理の推進を図るため、環境庁においても、地方公共団体に提示しうる環境管理の理念や地域環境管理計画の策定手法等の検討を行っているところであるが、今後、国は全国的にみて重要な環境利用の調整、全国的な規模での事業や施策と地域環境管理計画との斉合性、地域間の調和等の問題に取り組んでいく必要がある。また、地域住民の意向に精通した市町村行政の役割も重要であり、都道府県と市町村の緊密な連携が必要である。そのためにも、今後の環境政策を総合的かつ計画的に推進していく上で国及び地方公共団体が地域環境管理計画の策定等地域環境管理のあり方について十分検討を進めていくことが必要である。
 また、地域環境管理を推進するために必要な地域環境情報システムについても検討を進めていく必要がある。

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