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第4節 

2 環境の健全な利用

 今後、長期間にわたって国民生活や所得水準の向上を図りながら、よりよい環境を将来の世代に伝えていくためには、環境の健全な利用という考え方が重要である。これは、地域ごとの環境の特性を体系的に把握した上で、水や土地などの環境資源を計画的に保全し、かつ適正に活用することによって、環境と調和のとれた人間活動を実現していくことである。
 その第一歩は、地域の自然環境や各種の環境質の現状等を科学的に調査し、客観的なデータを体系的に整備することである。このようなデータが整備されれば、これに基づいて地域の環境の利用可能性や、環境を利用するに際して配慮することが望ましい事項等が地域に即して具体的に検討され、また、人口動態や土地利用の状況をも含めて総合的に検討されることにより、当該地域の環境利用がより適正に進められることが期待される。
 さらに、地域の環境の特性を地図等の形で視覚的に分りやすく示すことによって、地域環境の現状等や、環境基準等の保全目標についてより深い理解が進められよう。
 このためには、大気、水質等の環境質の状況や、地形、気象、生物分布等自然環境の状況などの環境項目についての情報を体系的に収集・整備し、これに基づき、地域ごとの環境の特性を指標や地図の形で表示し、また、特に保全が必要な環境資源や、環境利用に際し配慮することが望ましい事項を具体的に示す必要がある。
 現在、このような観点からのデータの整備は、いくつかの地域公共団体で先駆的に着手されているが、データ項目や評価手法等が必ずしも十分に整合性がとられているとは言い難い状況にある。
 今後、国においては、国家的見地から適正な環境利用を図る必要性の高い地域や、特に保全を図る必要性の高い自然環境が存する地域等に重点を置いて、より体系的に環境情報やデータの整備を図る必要性がある。
 環境を利用する各種の計画の立案に際し、このような環境情報やデータが効果的に利用されれば、環境保全への適切な配慮が払われ、地域の健全な発展に資することが期待される。
 このような施策は、予見的な政策へと展開しつつある環境政策の基盤となるものであり、国及び地方公共団体の各々において、相互に連携協力を取りながら、その充実を図っていく必要がある。

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