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第3節 

3 企業の環境保全の努力

(1) 公害防止投資
 企業は公害を防止する観点から、公害防除施設の整備等公害防止投資を行い、環境汚染の防止に努めている。公害防止投資は50年度をピークに低下傾向にあったが、55年度から緩やかに回復している(第2-3-6図)。主要な公害防止機器の設置状況をみると、もっとも早くから導入されたのが直接重油脱硫装置であり、次に間接重油脱硫装置である。重油脱流装置は40年代に急速に設置が進み、現在では高い普及率となっている。排煙脱硫装置は40年代に急速に設置が進んだ後、50年代に入りやや伸びが緩やかになっている。こうした脱硫装置の普及が硫黄酸化物濃度の低下に大きく役立ったものと考えられる(第2-3-7図)。
 排煙脱硝装置の設置状況をみると、50年代に入ってから急速に増加している(第2-3-8図)。


(2) 環境保全のための技術開発等
 科学技術の発達の成果を様々な形態で環境保全のために生かしていく動きもみられる。たとえば、都市廃棄物、畜産廃棄物などの処理にバイオテクノロジーを応用し、コンポスト化を図る技術の研究が進められている。また、近年著しい進歩を見せているリモートセンシング技術は水質汚濁、地盤沈下や自然の改変状況を調査するために利用され始めている。さらに、高効率高分子分離膜の排水処理技術への応用も進んできている。このように環境保全に役立つ新たな技術開発や商品開発が今後一層活発に行なわれることが望まれる。
 また、さまざまな電気製品の手軽な利用を可能にした乾電池の生産量は57年度において26億個余りであり、第2-3-9図にみるようにその生産量は年々増加している。大半の乾電池には寿命を伸ばすための水銀が含まれており、これらが使用されたあと、ゴミとして焼却・埋立処分される過程で新たな環境汚染を引き起こすおそれが指摘されている。現在のところ環境汚染の問題は生じていないが、将来、乾電池の使用量の増大に伴って環境汚染の問題の発生が懸念されているため、厚生省及び通産省は関係業界に対し使用済み水銀電池の自主回収の強化等についての要請を行い、これを受けて業界では使用済み水銀電池の自主回収の強化、水銀使用量の削減等に努めている(第2-3-9図)。


(3) 工場緑化等
 企業が環境の保全のためにまず基本的になすべきことは、事業活動に伴って生じる環境汚染の防止を図っていくことであるが、近年、これに加え、工場緑化等積極的な形で環境保全のために努力する動きがみられる。
 工場緑化は工場立地法により義務づけられているが、北九州市では同法施行以前から工場敷地の10%以上の緑化を義務づける緑化協定を企業と結び、現在までに約205ヘクタールの緑化を進めている。また、川崎市においても約130ヘクタールに達する工場緑化が進められている。
 また、金沢市において地元の経済団体が主体となって金沢都市美文化賞を設け、都市美に配慮した優秀な建造物を毎年表彰している例や自然環境の保全・整備事業、環境緑化活動、及び研究に対する助成を行うために企業が基金を創設している例等もみられる。

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