4 農林水産業と環境
農林水産業においては、近年、森林、農地等が持つ大気の浄化、水源のかん養、表土の保全などの環境保全上の機能の低下が懸念される一方、畜産・養殖漁業の拡大等環境への負荷を増大させる要因も存在している。
三大都市圏においては、森林がわずかに減少していることに加え農用地の減少が急速で、これが居住地周辺の緑地の減少につながっている。これに加え、山村の過疎化、農林業労働力の高齢化の進行等によって、農地では耕地利用率の低下や栽培管理の粗放化がみられ、また、林業生産活動の停滞や間伐の遅れなど管理が適正に行なわれない森林がみられ、一部に松くい虫による被害が発生している。
さらに、労働力の減少や経営の専門化に伴い、堆きゅう肥など有機物の投入が減少する一方、科学肥料や農薬が農業生産の重要な要素となったため農地の土壌有機物の減少などが問題となっている。
これに加え、家畜糞尿等の排出量の増加及び住宅と農家の近隣等により、水質汚濁、悪臭等も問題となっている。
58年12月に示された「農林水産研究基本目標」では、21世紀に向け環境保全を一つの目標とした研究開発体制の整備が目指されており、こうした方向で研究の展開が進み、農林水産業が生態系と一層調和した産業として、新たな発展を遂げていくことが期待される。