2 産業立地の動向と環境
産業構造の変化に伴い、産業立地の動向にも変化がみられる。
近年の産業立地の特徴としては、高度成長に支配的であった臨海部における大規模コンビナート中心の立地から内陸部における加工組立型産業中心の分散型の立地への変化があげられる。
臨海型の立地は、それが集中的に行なわれた場合、比較的人口が密集しているという地域特性ともあいまって、周囲の環境に大きな影響を与えたこともあった。特に、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海などの閉鎖性水域沿岸への立地は、それに伴う人口の集中などから生活系排水が増大したこともあり、汚濁物質が蓄積しやすい自然特性とあいまって水質汚濁を進める要因となった。たとえば、三重県四日市地域においては30年代前半から石油化学関連の工場が相次いで立地し、操業が開始されたが、36年頃からいわゆる四日市ぜん息や異臭魚問題が生じた。さらに、大規模な埋立てを行なうなど自然の改変も生じた。
一方、内陸型の立地は、水質汚濁が生じた場合は河川等の公共用水域の汚濁範囲が広くなり、その影響が広範囲に及ぶこともある。また、高付加価値化により、原材料や製品全体の量は減少することが考えられるものの、輸送形態は自動車等が中心となるため、それら交通機関による影響にも留意する必要がある。
こうしたことを踏まえて新たな立地に際しては、立地の形態や地域の環境の特性に応じて土地利用の調整や必要な社会資本の整備を先行的に行うなど、適正な環境の利用を図ることが重要である。