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第2節 

2 我が国を代表する植物の現状

 我が国は気候や地形、地質等の諸条件からその面積の割に極めて豊かな植物相を有しており、とりわけ森林の発達は著しい。
 しかし、近年の土地開発等によって日本列島の植物相の多様性は次第に失われつつある。
 このような状況の中で、53年及び54年において、我が国の植物相を具体的に形づくっている植物群落のうち、規模や構造、分布等において代表的・典型的なもの、代替性のないもの、あるいは極めて脆弱であり、放置すれば存続が危ぶまれるもの等も「特定植物群落」として選定し、その生育状況、保護状況等について調査を実施した。
 調査結果によると、「特定植物群落」として選定された群落は全国で3,834件、面積は93.5万ヘクタールに達し、国土面積の約2.5%にあたる(第1-2-1表)。一般に、本来高地・寒冷地に分布するエゾマツ、トドマツ、コメツガ等の群落は現在でもなお比較的大規模に残っているが、低地・温暖地は、古くから人間の活動の中心的な場所とされたため、シイ、カシ、タブ等から構成される照葉樹林等この地域の本来の植物群落は小規模にしか残っていない。そして、照葉樹林は、主として鎮守の森のような形で、地域住民の生活と密接な関わりをもって残存していることが明らかになった。また、森林、草原、水辺植生に分けて保存状況と生育環境を脅かしている原因(環境圧)をみたのが第1-2-2図である。これによると、特定植物群落に選定された水辺植生、草原、森林等の中にも、その存続が危ぶまれるものも少なくない。また、これらの原因となっているものでは、いずれも人の立入によるものの件数がもっとも多くなっている。
 また、現段階で自然公園法等の対象となっているかどうかをみると、自然公園に含まれている(一部も含む)ものは1,865群落、自然環境保全地域に含まれているものは336群落であり、両者を合わせると群落数では約6割、面積では9割以上となっている。

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