2 計画的な対策
環境問題の解決のためには環境保全のための各種の施策を多角的に進めることが必要であるが、さらには、これらの施策を計画的に講じていくことが重要である。
環境保全に関する計画には種々のものがあるが、ここでは「公害対策基本法」に基づき、現に公害が著しいか著しくなるおそれのある地域における公害対策の基本的施策として規定され定着している公害防止計画についてみていくこととする。この計画は、公害防止に関する諸施策を総合的に講じるための計画であり、公害の監視、測定や排出規制に加え、土地利用対策や公害防止のための施設整備等を具体的に取り上げ、効果をあげているものである。
(1) 公害防止計画の歩み
「公害対策基本法」では既成の工業地帯や大都市地域にみられるように、各種の公害が現に著しい地域や、こうした地域の周辺地域、新産業都市及び工業整備特別地域にみられるように、人口と産業の急速な集中等により公害が著しくなるおそれがある地域について、公害防止計画を策定することとしている。なお、公害防止に関する国の施策と地方公共団体の施策が相まって、有効かつ適切な公害防止が図られるよう、計画の策定に当たっては、内閣総理大臣が関係都道府県知事に対し、基本方針を示して計画の策定を指示し、指示を受けた知事が公害防止計画を作成し内閣総理大臣の承認を受けるという仕組になっている。
公害防止計画は45年12月、四日市、千葉・市原、水島の3地域について初めて策定されて以来、52年1月まで7次にわたり、全国の主要な工業都市や大都市地域のほとんどについて策定されている。
この間、46年5月には「公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(以下、「公害防止財特法」という。)が制定され、公害防止計画に基づく、下水道、廃棄物処理施設、汚泥しゅんせつ等の公害防止対策事業の推進に財政上の裏付けが与えられることとなった。
52年度以降はそれまでの計画のうち期限が到来したものを順次見直し、いわゆる第2期の計画策定が進められた。さらに、58年3月、東京、神奈川、大阪等11地域について、計画が策定され57年度から第3期を迎えることとなった。
このようにして、公害防止計画は公害防止に関する施策の総合的な計画として定着している。
(2) 公害防止計画の今後の在り方
公害防止計画は、公害防止施策の推進に大きな成果をあげてきているが、環境問題を取り巻く諸条件が変化をみせており、今後においてもますます重要なものとなってきている。
公害問題については第1章158/sb1.1>でみたように、改善の進まない分野が残されており、特に人口や産業の集中した大都市地域に多い。
また、近年、産業活動に起因する公害問題とともに、都市活動や日常生活による公害問題が顕在化しており多角的な取組が必要とされている。さらに、最近のエネルギー事情や経済情勢の変化、人口の都市への集中などに公害防止計画を取り巻く経済社会条件も一層複雑なものとなってきている。このような状況の下で、56年3月には、「公害防止財特法」の適用期限が65年度まで10年間延長された。また、57年6月には中央公害対策審議会が、「公害防止計画の今後の在り方について」次のような意見具申を行っている。
今後の公害防止計画の在り方としては、公害防止計画が持つ諸施策の総合調整機能を一層活用し、以下の点に十分に留意していく必要がある。
第一は、閉鎖性水域の富栄養化、交通公害、廃棄物問題等の課題を積極的に取り上げ、施策の計画的推進を図ることである。具体的には、? 富栄養化対策については、工場、事業場の排水対策の強化、下水道、し尿処理施設の整備ほか、生活雑排水対策、蓄・水産業等の排水等に係る対策等を総合的に実施すること、? 交通公害対策については、自動車排出ガス、騒音規制等の発生源対策及び道路構造の改善などの施策に加えて、沿道緩衝緑地の整備等を進めるとともに土地利用の適正化、交通体系の転換等の中長期的な施策についても積極的にとりあげること、? 廃棄物問題については、適正な処理、処分の確保を図るとともに、下水道、ごみ焼却場等公共の公害防止のための施設から排出される汚泥や焼却灰の最終処分計画を明らかにしていくこと、また、省エネルギー、省資源の観点から有効な施策を組み入れることである。
第二は、エネルギー事情の変化に対応した適切な対策を推進するとともに、地域特性に応じた施策を積極的に取り込むことである。
第三は、公害防止対策事業について、目標達成のために必要な事業量が確保されるよう事業費の優先配分に一層配慮するとともに、事業の総合化等の施策を図ることである。
第四は、公害防止の観点から、住工分離等の土地利用に関する方針を示し、都市計画等各種行政計画に対する調整に資するとともに、沿道緩衝緑地、生活雑排水処理施設等の施設整備についてその促進措置を検討することである。