2 公害防止のための排出規制等
42年の「公害対策基本法」の制定を契機に、公害規制体系の整備が進められてきた。人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として、大気汚染や水質汚濁等に係る環境上の条件について、政府は環境基準を設定し、その維持、達成のため排出規制を実施してきている。
例えば、窒素酸化物についてはばい煙発生施設に対する排出規制を48年8月の第1次規制以降、54年8月の第4次規制まで強化してきた。また、近年の石炭利用の拡大などのエネルギー情勢の変化とばいじん排出防除技術の大幅な進歩等への対応をねらいとして、57年5月排出基準の強化が行われ、同年6月1日から施行された。
公共用水域の水質保全のためには、汚水を排出する施設を設置する工場や事業場から公共用水域に排出される水に対して排水基準が定められている。排水基準には国が全国一律に定めている一律基準と、都道府県がそれぞれの水域の状況に応じて一律基準よりも厳しく定めている上乗せ基準とがあり、50年度以降すべての都道府県において上乗せ排水基準が設定されている。
個々の施設に対する排出規制だけでは環境基準の達成が困難な地域については、汚染負荷量を全体的に削減する観点から総量規制方式が導入されている。大気汚染物質のうち硫黄酸化物については49年11月から、窒素酸化物については56年6月から、それぞれ導入されており、広域的な閉鎖性水域の化学的酸素要求量(COD)に係る総量規制は53年6月から導入された。
このように公害防止のための直接的な規制は順次整備され、効果を上げているが、まだ十分な改善がみられない分野も多く残されている。
今後は、公害発生源や発生形態の仕組を化学的に明らかにするとともに、環境保全技術の開発を促進し、必要に応じ、新たな規制の導入の検討を含め、関連する諸政策をも活用しつつ公害の防止の徹底に努めていくことが必要である。