3 農山漁村地域
国土の総面積のうち約8割は森林及び農用地で占められており、農山漁村地域は、自然環境の保全上極めて重要な位置を占めている。
農山漁村地域の環境は、農林漁業等の生業を通じて長年にわたって形成され維持されてきたものである。したがって、農林漁業を取り巻く経済社会の変化や過疎化の進行は、農山漁村の生活や生産活動に変化をもたらし、地域の環境問題にも大きな影響を及ぼしてきている。
(1) 農村
高度経済成長期を中心に農村から都市への人口流出が続き、農村の過疎化が進んだ。
過疎化の傾向は一時期に比べ、やや鈍化しているものの、なお進みつつあり、離農や農業従事者の高齢化によって田畑が荒廃したり、地域社会の維持が困難となっている例もみられる。
農業を取り巻く状況が更に厳しくなり、農業従事者が一層減少し続けるならば、多くの日本人の心の中に原風景ともいえる緑豊かな田園が、次第に失われていくことも懸念される。
他方、都市周辺農村においては、兼業農家の増加にみられるように都市に生計を依存する者が増えており、また、都市域の拡大による住宅建設や工場立地によって市街地的土地利用が増加し、農家と非農家の混住化が急速に進行している(第2-3-5図)。
このような地域では生活様式の変化が急速に進んでおり、従来の農村における水利用体系が変化して、生活排水等の増加による農業用水の汚濁の問題が生じている(第2-3-6表)。
今後、農村の環境を整備していくためには、まず、農業と農業以外の土地・水利用の調整を適切に行う必要がある。また、鎮守の森やため池、小川などは日本の風土と伝統の象徴でもある田園風景の要素であり、生活や文化と深い係わり合いを持っている農村の身近な自然環境を保全していくことも大切である。
(2) 山村
我が国の森林は自然環境や国土の保全等の機能をも果たしてきた。しかしながら、若年層の流出を中心とした過疎化の進行や高齢化等に伴って山村地域の社会基盤が弱体化し、農地や森林の管理が行き届かなくなってきているという問題がある。このためもあって、これらの地域では道路整備などの開発に対する期待がある。今後、健全な地域社会の維持、発展を図りながら、地域の自然環境を保全していくことが課題である。
(3) 漁村
漁村においては、水質汚濁の進行や廃棄物の堆積による漁場環境の悪化の問題がある。
特に、近年、油濁、赤潮の発生等に伴う水産生物の死滅、生育不能や、重金属等の有害物質の蓄積、付着などの漁業被害が生じている例がみられる。 また、沿岸域の埋立、しゅんせつによる海底の形状変化や、砂利採取、ダム設置に伴う濁水、発電用施設の設置に伴う取排水の漁場環境に与える影響、農薬による魚介類の被害などが問題となっている。