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第5節 

3 OECD(経済協力開発機構)環境委員会の主要成果

 OECDは日本のほかアメリカ、カナダ、EC(欧州共同体)加盟国等自由主義工業先進国を中心とする24か国からなる国際機関であり、その主な目的は加盟各国の、? 経済成長、雇用と生活水準の向上、? 開発途上国の援助、? 多角的な自由貿易の拡大を図ることにある。これらの目的を達成する過程で環境問題が加盟国の中で社会問題化してきた。そのためOECDでの審議が開始され、? 環境問題は経済の拡大に伴って生じた外部不経済であること、? 外部不経済を放置することは社会的費用を生じることになるので、それを内部化するなど、経済成長の質的側面を重視した経済政策を確立することが必要であるということで意見が一致した。
 こうして1970年、OECDに環境委員会が設置され、加盟国の健全な経済発展のためにも環境問題について積極的な検討が加えられることになった。加盟国のほとんどが工業先進国であるため、高い工業生産と消費水準に起因する大気や水等の汚染防止対策がその主な内容となっている。これに対応して環境委員会の下には、経済専門家グループ、大気管理政策グループ、水管理政策グループ、化学品グループ等が設置されているが、そのほか新たに取り組む必要のある問題が生じるごとに随時、臨時のグループを設けている。大気汚染、水質汚濁防止対策を始めヨーロッパ諸国等における越境汚染対策、あるいはエネルギー問題、都市問題との関係等地域的にも問題の要因の面でも幅広い視点からの検討が行われている。
 このような活動の結果、多くの成果があがってきているがその主なものとしては、PPP(汚染者負担の原則)とともに、各国の環境政策の調和等の原則を定めた「環境政策の国際経済面に関するガイディングプリンシンプル」の確立(1972年)、PCBの環境への放出を停止させる等の措置を加盟各国政府に求めた「PCB規制に関する決定」(1973年)、水銀の環境への放出を可能な限り減少させる等の措置を求めた「水銀規制に関する勧告」(1973年)、「化学品の評価におけるデータ相互受理に関する決定」(1981年)等があげられる。
 また、環境委員会では閣僚レベルの会議が1974年と1979年の2回開催されており、1974年の会議では、エネルギー危機下における環境政策に関する宣言、1979年の会議では予見的環境政策に関する宣言がそれぞれ採択されている。
 OECD加盟各国はこのような勧告決定や宣言を踏まえ、環境政策の整備及び推進を図ってきている。
 更に、OECDは、各国の環境の状況をみるため、「OECD加盟国の環境の状況」(1979年)を発表したが、それによると、大気汚染は改善を示しているが、水質汚濁については、必ずしも成果が表われているとはいえず、他方、航空機輸送、自動車交通量の増大により今後、騒音問題が拡大する可能性があるとされている。
 なお、OECDは各国の環境政策の整備状況、政策の効果等をみるため、1976年の日本の環境政策レビューを始め、国別のレビューを順次行い、その進展状況等の把握に努めている。こうした状況把握をもとにOECDは、各国の協力を得つつ問題の解決策の検討を行っている。
 以上のようにOECDは加盟国内及び加盟国間の環境問題解決に努力し、また一定の成果をあげてきているが、どちらかといえば、対象はOECD域内の問題に限定されていた。しかし、アメリカの「2000年の地球」、OECDの「インターフューチャーズ報告」、我が国の「地球的規模の環境問題に対する取組みの基本的方向について」等による地球的資源環境問題の重要性の指摘を背景に、環境委員会設立10周年記念特別会合の場において、地球的資源環境問題についての討議が行われ、この問題をOECDとして取上げていくことが確認された。更に、その後の環境委員会においては、この問題を具体的に取上げることが合意されている。

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