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第5節 

4 環境問題における国際協力の重要性と日本の貢献

 ストックホルムの国連人間環境会議を契機に、環境問題に関する各国の認識は格段に高まってきた。工業先進国においては、環境政策の整備が急速に進められてきており、また、経済成長の著しい中所得国においても、環境汚染の顕在化に対し環境政策の整備に着手してきている。また開発途上国では、貧困のもたらす諸問題の解決を進める一方、地球的規模の環境問題に関する認識を深めてきている。
 環境問題解決のためには、まず各国が国内の環境政策を着実に推進することが期待される。しかし各国が十分な努力を行ったとしても、それらの積重ねのみによっては、地球的規模の環境問題は解決できない場合があることは、地球上の二酸化炭素濃度の上昇の例が示すとおりである。また開発途上国では環境問題に対する認識が深まった。しかし、それは貧困と人口増加の悪循環及びそれに付随する問題であって、開発途上国では第一義的に経済開発が推進されることは当然であろう。
 地球的規模の環境問題はこのような性質、背景をもつため、その解決は容易ではない。地球的規模の環境問題の影響は世界の大多数の人口に及び、その解決は究極的には世界のあらゆる国の利益になるといえよう。特に、我が国は開発途上国の森林資源に大きく依存するなど資源輸入国であるため、国際協力を行うことは我が国の利益にとっても重要である。このような認識を踏まえ、1981年7月カナダのオタワで開催された主要国首脳会議の宣言は、我が国の提案に基づき「我々の長期的経済政策を策定するに当たっては、地球の環境及び資源基盤を保全するよう配慮が払われなければならない。」と明言している。
 また、開発途上国に対する我が国の援助は国際機関を通じるもの、及び二国間援助ともに極めて大きな伸びを示しており、また、今後とも充実を図ることとなっている。同時に、援助による開発プロジェクトの内容に対する配慮も必要である。世界銀行が開発途上国の開発プロジェクトの審査において、環境への配慮も重視しているように、我が国も援助を進めるに当たっては環境へ配慮していくことが重要である。このことは我が国の企業が開発途上国へ進出する場合も同様である。
 以上のような環境問題における国際協力の重要性の高まりの中で、我が国の貢献が大きく期待されている。それは一つには自由世界第2位の経済力を持つに至り、また相対的に高い経済成長を維持していること、二つにはアメリカが国内経済の不振等により、国際機関への協力が従来より稀薄化の傾向を示していること、三つには我が国は、環境保全に関する豊富な経験を有すること等によるものである。特に、経済成長を達成しつつ環境汚染対策を進めてきた経験は、経済開発が第一義的に必要な開発途上国にとっては、大きな参考になるものと思われる。
 一方、地球的規模の環境問題については、UNEP等を中心に取組が本格化しているが、未だ緒についてばかりである。このため、地球的規模の環境問題の進行度、問題の不可逆性、対策の緊要性等についての知識、情報をほとんどもっていないのが現状である。このため我が国は、これまでの環境汚染防止の経験を基礎にして大気や水質等について、特に海洋国日本としては、海洋汚染についての調査研究を進めることが、我が国のみならず世界の国々に対し貢献することになり、また、地球環境の保全のための我が国の積極的な姿勢を示す上でも重要と考えられる。

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