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第5節 

2 UNEP(国連環境計画)の主要成果

 国連人間環境会議で採択された行動計画は109項目からなっているが、それらはおよそ以下のとおりである。
? 第1分野:生活環境
 開発援助活動に際しては、受入国政府のより良い生活環境のための計画についての援助要請にもできるだけ高い優先度を与えること
? 第2分野:天然資源管理の環境的側面
 土壌、森林、野生生物、遺伝子資源、水資源などの保護のために必要な情報交換、研究協力などの国際協力の促進
? 第3分野:国際的に重要な汚染物質の把握と規制
 気候に影響を与える危険性のある汚染物質については、その影響を慎重に分析評価すること、有害物質の外界への排出を最小限に抑えること、汚染物質が国外に広がる場合には、関係国、国際機関と協調すべきこと、化学物質のデータ国際登録制度、モニタリングを含む各種の国際協力の強化
? 第4分野:教育、情報、社会及び文化的側面
 各国の環境に関する報告書の作成の促進、環境教育計画の作成など
? 第5分野:開発と環境
 開発途上国が自国の環境問題に対処するために科学、技術、研究対策をたてる上で要請があればこれに対する援助
 このように、UNEPの対象領域は広範なものになっており、そのため第3-5-2図に示されるように国連機関や専門機関と幅広く協力し合っている。
 その中で、UNEPは優先順位をつけながら計画の策定、実施を推進してきている。その計画は?環境の現況把握、?個別問題への対応計画、?支援措置、に大別される。
(1) 環境の現況把握
 地球的規模の環境問題についての指摘は多いが、その現況は、ほとんど把握されていなかったといっても過言ではない。このため、地球的規模での環境の現況把握のため、資源モニタリング、汚染モニタリング、自然災害モニタリング等からなるGEMS(地球環境モニタリング・システム)が計画され実施に移されている。
 資源モニタリングについては、FAOが、人工衛星を使った森林モニタリング(特に熱帯雨林が対象)を行い、植生分布地図を作成している。また、FAO、UNESCOは、土壌悪化の評価手法の検討を進め、赤道北部アフリカ及び中近東について土壌悪化の現況と危険性を示す地図を作成している。
 そのほかにも、環境庁国立公害研究所が積極的に参加、貢献しているINFOTERRA(国際情報源照会制度)や厚生省国立衛生試験所が対応しているIRPTC(国際有害化学物質登録制度)等が設けられており、更に広く情報の整備、評価、解析が進められている。
(2) 個別問題への対応計画
 開発途上国における貧困がもたらす問題を含め、種々の個別の環境問題のうち、優先度の高いものについて計画の策定およびその実施が図られている。その計画は次にあげるようなプログラムから構成されている。? 低所得者住宅、給水システム、汚水処理、あるいは人の健康に影響を及ぼす汚染物質調査、流行病予防等の人間居住と人間健康プログラム、? 乾燥地及び半乾燥地のエコシステム、熱帯林のエコシステム、遺伝子資源及び野生生物の状況調査等の陸上エコシステム・プログラム、? 環境と開発の総合的アプローチ、自然資源の適切な利用、環境的側面からの適正な技術開発、産業と環境との調整等の環境と開発プログラム、? 海洋汚染防止、海洋生物の保護等の海洋プログラム、? エネルギー利用の環境に及ぼす影響等のエネルギープログラム 等である。
(3) 支援措置
 各国内あるいは国境を越えての環境問題を解決するためには、まず、国民が環境問題の現況及び解決のため技術等を理解することが必要である。そのためUNEPは環境教育及び訓練、技術援助等の支援措置を講じている。例えば、環境教育については、UNEPの支援の下でUNESCOが実施しており、1977年ソ連のトビリシで国連環境教育会議が開催されるなど、各種の会合がもたれ順調な発展を遂げてきている。
 UNEPは、更に近年、砂漠化の進行、熱帯雨林の減少、土壌流失、二酸化炭素の濃度上昇による気候変化、フロンガスによる成層圏オゾン層破壊の可能性等の地球的規模の問題についても本格的に取組を開始している。
 例えば、砂漠化の進行に対しては、1977年ナイロビで国連砂漠化防止会議が開催された。同会議は、国内地域行動計画と国際行動計画からなる行動計画を採択したが、このうち国内地域行動計画は土地管理の改善、旱ばつ等への対策としての備蓄制度の導入、科学技術の強化等の具体的な提案を行うとともに、国際的な支援措置を示している。
 このようなUNEP等の活動により、環境の重要性及び環境変化の持つ意味に対し、先進工業国のみならず、開発途上国も地球的規模の環境問題に対する理解を深めてきている。しかし、UNEPの対象とする環境問題は幅広いものであり、また、UNEPの問題解決への取組は緒についたばかりであるため、地球的規模でみた環境の質の現状あるいは改変状況は必ずしも明らかとはいえない。
 以上のようなUNEPのこの10年間の活動の成果及び今後の方針については、その詳細が本年5月ナイロビで開催されるUNEP管理理事会特別会合で、明らかにされることになっている。

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