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第5節 

1 国連人間環境会議の開催とUNEP(国連環境計画)の発足

 国連総会は1968年、人間環境に関する国連会議の開催を決定した。その結果、1972年スウェーデンのストックホルムにおいて国連人間環境会議が開催されたが、参加国のかかえている事情は必ずしも共通ではなかった。
 工業先進国においては、同会議で合意された「人間環境宣言」の前文に示されているように、
 「今日、四囲の環境を変革する人間の力は、賢明に用いるならばすべての人々に開発の恩恵と生活の質を向上させる機会をもたらすことができる。誤ってまたは不注意に用いるならば、同じ力は人間環境に対して、はかりしれない害をもたらすことにもなる。我々は地球上の多くの地域において、人工の害が増大しつつあることを知っている。その害とは、水、大気、土壌及び生物における危険なレベルに達した汚染、生物圏の生態学的均衡に対する大きな、かつ、望ましくないかく乱」
 が、大きな社会的問題となっていた。
 開発途上国においては、産業公害問題自体にはさしたる重要性を認めず、貧困に起因する諸問題こそが最大の問題であるという認識が強かった。
 1972年のストックホルムの人間環境会議は、環境に関する世界的問題についての最初の政府間会議であり、また113か国が参加するなど、その開催は画期的なものであった。参加各国は工業先進国と開発途上国等それぞれ立場の違いはあったが、人類とその子孫のため、人間環境の保全と改善を目ざして共通の努力をする必要があるという点で合意に達し、この会議において26項目にわたる「人間環境宣言」及びそれを達成するための具体的な行動方針を示す勧告(行動計画)を採択した。UNEPはこの勧告を受けて発足した。
 UNEPが取組んでいる環境問題の概念は、上記のような経緯を経て、環境汚染防止、自然保護に加え、人口の急増、貧困等に伴う問題に対する対策を含む幅広いものとなっている。このためUNEPの主な任務は、?既存の国連内のWHO(世界保健機関)、FAO(国連食糧農業機関)、WMO(世界気象機関)等が行っている環境関係諸活動を一元的に調整し、?これら諸機関が着手していない問題にイニシアティブをとり、環境分野での国際協力を促進することである。現在、UNEPの機構は第3-5-1図に示すように整備が図られてきている。

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