(1) 国連環境計画
国連環境計画は、47年にストックホルムで開催された国連人間環境会議を契機に、既存の国連システム内の諸機関が行っている環境関係の諸活動を一元的に調整し、かつ、これら諸機関等の環境保全分野での活動を促進することを目的として創設された。
国連環境計画は、国連システム内での環境分野の総合的な調整にその活動の主体がおかれているが、その他の国際機関、各国政府、非政府機関とも幅広い協力を行っている。
国連環境計画の取り扱っている環境問題は、環境汚染、自然保護等に加え、人口の急増、貧困等に伴う環境問題をも包含し、非常に幅広い分野にわたっている。
国連環境計画が実施するプログラムは、世界環境モニタリングシステム、国際情報源照会制度、国際有害登録制度等からなる環境状況は握、人間居住と健康、陸上のエコシステム、環境と開発等からなるサブジェクト・エリア、環境教育、環境訓練等からなる支援措置及び環境法を含む環境管理に大別されている。
国連環境計画に対して、我が国は、当初から管理理事国の一員としてこれに参画するとともに環境基金に対し、55年は360万ドルを拠出する等多大の貢献を行ってきた。
? 管理理事会
第8回国連環境計画管理理事会は、我が国を含む58の理事国のほか、非理事国、国連機関その他の国際機関及びオブザーバーが参加して、55年4月16日から4月29日までナイロビで開催された。
主な議題としては、国連環境計画活動の全般的なレビューのほか、1980年代の新国際開発戦略(NIDS)の策定に当たっての環境的側面からの協力、基金状況の悪化(非交換性通貨の蓄積を含む)に関する問題、57年(国連人間環境会議後10年目に当たる)の管理理事会及び特別会合、国際環境法に関する上級レベル会合、世界保全戦略に関する問題、クロロフロロカーボンの規制等が審議された。
この会議の結果は、19の決定としてまとめられている。
? 管理理事会準備会合
56年5月に開催される第9回管理理事会に先立ち、その準備会合の性格を有する非公式協議が、55年12月にナイロビで開催された。この協議では、国連環境計画事務局職員の空席問題、57年以降の環境基金の目標、57年の管理理事会特別会合の会期、国際環境法に関する上級レベル会合の準備会合等が討議された。
これらの点の多くについては、各国の意見を踏まえて事務局において方針を検討し、第9回管理理事会に提案されることとなった。
? ストックホルム会議以後10年の環境の現況プロジェクト
国連環境計画発足以来、世界が直面している主要な環境問題を取り上げ、世界に対する警告という意味を含め、毎年の管理理事会に「環境の現況」として報告してきたが、更に5年ごとに大規模に世界の環境の現況をは握し、報告するプロジェクトを開始することとした。その第1目標は、ストックホルム会議開催から10年目の57年とされている。
このプロジェクトの内容としては、大気、水、岩石圏の1970年代初めの状況と1982年の状況を比較し、人口、人間居住、鉱物資源、エネルギー、工業産物、社会的文化的発展の関連を総合的に検討することが計画されている。
このプロジェクトの推進に当たっては、世界中から環境に関する分野の学者が参加しており、56年3月には、この報告書の原案を検討するための専門家会合が開催され、我が国からも専門家が参加した。
? 国際環境法
国連環境計画は、各国における環境保全法令の拡充及び国際レベルにおける環境保全条約の整備及び実施を推進することとしている。この分野では、これまでに管理理事会は「共有天然資源に関する15原則」を採択(第6回会合)しており、国連総会の場で検討されている。
第8回国連環境計画管理理事会は、国際環境法に関する上級レベル会合を開催することを決定したが、これにより各国の環境保全法令や国際レベルにおける環境保全条約につき総合的に検討されることとなった。55年11月にはオタワにおいて、準備のための専門家会合が行われた。
? エネルギーと環境
国連は、56年8月、ナイロビにおいて新・再生可能エネルギーに関する国連会議を予定しているが、国連環境計画は単なる従来型の経済開発の推進は、地球の資源、エネルギーの賦存量の有限性という観点から難点があるとの観点に立ち、省資源、省エネルギーの新しい開発パターンに関する研究及び各種エネルギー資源の環境影響評価に関する研究を進めている。55年11月にはミュンヘンにおいて、エネルギーの環境影響評価に関する専門家会合が行われ、我が国からも専門家が参加した。
? 環境と開発
国連環境計画は、開発に伴う環境への影響、環境問題から見て望ましい形の開発、適正技術と環境といった諸問題に関する専門家会合、セミナー等の開催のほか、必要な技術、手法の開発のための調査、研究を行っている。また、国連環境計画は、54〜55年にかけて、5つの国連地域経済委員会と協力して、資源利用と管理、生産と消費のパターン、居住のデザインと管理、教育等に関し、世界各地域に適合した環境的に健全な開発を促進するため、「開発と生活様式の代替的パターンに関する地域社会会合」を開催し、その成果を取りまとめた。
(2) その他の環境保全のための多国間協力
? 海洋投棄規制条約
「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(海洋投棄規制条約)は、47年11月に採択され、50年8月に発効した。
我が国も本条約の批准につき鋭意検討を進めてきたが、批准のための国内措置の整備が完了したため、55年10月、本条約の寄託政府である米国、ソ連、英国、メキシコ政府に批准書を寄託した。これに伴い本条約は55年11月に我が国についても発効した。
この条約の第5回締約協議会議は、55年9月にロンドンで開催され、海洋投棄が禁止される物質の規定(付属書?)及び海洋投棄につき個別の特別許可を必要とする物質の規定(附属書?)の改正等が行われた。この改正により、投棄の目的で積み込まれる原油及びその廃棄物、石油精製品等の投棄の禁止、また、毒性のない物質であっても、投棄される量によって有害となることがある物質等が新たに規制されることとなった。これらの改正に伴う国内措置に関しては、現在検討中である。
?ラムサール条約
「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)は、特に水鳥にの生息地として重要な湿地を登録する等国際協力による湿地の保全を通じて水鳥の保護に寄与することを目的としており。46年2月、イランのラムサールで採択され、50年12月に発効したものである。
我が国もその批准につき鋭意検討を進めてきたが、批准のための国内措置の整備が完了したため、55年6月、本条約の寄託者である国際連合教育科学文化機関事務局長に批准書を寄託した。これに伴い本条約は55年10月に我が国についても発効した。
この条約の第1回締約国協議会議は、55年11月にカリアリ(イタリア)で開催され、条約の履行状況と条約の強化策についての総合的な検討が行われ、11の勧告が採択された。
? ワシントン条約
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)は絶滅のおそれのある野生動植物の保護を図るため、その国際取引を規制することを目的としており、48年3月にワシントンにおいて採択され、50年7月に発効した。
我が国もその批准につき鋭意検討を進めてきたが、批准のための国内措置の整備が完了したため、55年8月、本条約の寄託政府であるスイス政府に、批准書を寄託した。これに伴い本条約は55年11月に我が国についても発効した。
この条約の第3回締約国協議会議は、56年2〜3月にニューデリーで開催され、条約に基づく許可書の様式及び手続、税関における本条約対象品の識別マニュアル、規制される野生動植物の種名を掲げた付属書の検討が行われた。