2 人工の物質・エネルギ―の流れ
我が国は、産業化の進展する中で人口の都市集中が進み、自然の生態系との係わりが稀薄となった人工の極相である都市空間において膨大な人工の物質・エネルギ―の流れをつくり出してきている。
高度経済成長は人工の物質・エネルギ―の流れを拡大し、それに伴って自然の物質・エネルギ―循環を攪乱することとなったが、これに対し、1970年代に入り、公害防止対策が急速に整備されてきた。その中で人工の物質・エネルギ―の拡大とそれに対応した積極的な公害防止努力の実態を鉄鋼業を例にとって見てみよう。
鉄は現代文明にとって欠くことのできない基礎的な物質であり、また“産業の米といわれるように基幹的な役割を果たしているが、それと同時に、多量の資源・エネルギ―を消費する産業の1つでもある。
鉄鋼業は、鉄鉱石、鉄くず、原料炭等を原料とし、重油、電力等のエネルギ―を用いて鉄鉱石等の原料を還元、溶解して銑鉄を製造し、銑鉄を精錬して鋼とした後、鋼塊を圧延、加工して鋼材を製造する。昭和54年には銑鉄が8