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第2章 自然の物質・エネルギ―循環と環境利用

 公害問題は一時の危機的状況を脱し、環境汚染は全般的に改善傾向を示している。しかし、第1章で見てきたように、我々の生活は依然として多様な公害発生源に取り囲まれている。 物的な消費生活はかなりの水準に達した現在、住みよい生活環境の質に対する欲求が高まっていく中で、環境に対するニ―ズは高度化、高次化してきている。このため、生命、健康を脅かすような深刻な公害の防止にとどまらず、多様な環境汚染の改善を進めるとともに、自然の多様な活力を見直しこれを積極的に活用していくことが強く求められるようになってきている。
 地球的規模の環境問題に対する新たな対応への足掛りをつかんでいくことも含めて、深刻な公害問題の防止を原点としながら、よりト―タルな環境と我々の経済社会活動との望ましい係わり合いを積極的につくり出していかなければならない。このような環境保全の広い視野を明確にするため、自然の生態系と経済社会活動との物理的な摩擦現象が公害を発生しているメカニズムを明らかにするとともに、これまで我々が進めてきた公害防止と省資源・省エネルギ―の努力などがこの摩擦現象を軽減する上でどのような効果と限界を持っていたかを明らかにする必要がある。
 自然の生態系と経済社会活動と摩擦減少を生み出しているのは、産業化の進展の中で生産、流通、消費の多様な段階で拡大を続けている人工の物質・エネルギ―の流れである。第2章では、この人工の流れから生命現象や気象現象を含めた自然の生態系を支えている自然の物質・エネルギ―循環に負荷が加わり、そのために、環境破壊が起り公害問題が起っていることを明らかにするとともに、公害防止と省資源・省エネルギ―の環境保全効果を明らかにする。

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