4 自然改変の推移
3つの環境の相における人為による自然の改変がどのように進んできたか、第2回自然環境保全基礎調査の表土改変状況調査によって見ることができる。この表土改変状況調査は、気候、植被、耕作などの自然的・人為的影響を最も強く受ける土壌の最上部の層(表土、表層土)に着目して、これが人為によりどのように改変されたかを時系列的に把握したものである。その調査対象地域は関東地方で、調査方法は空中写真から土地利用形態を森林、植林地、原野等17区分に従って判読し、これを自然表土地(森林、植林地、原野等)、半自然表土地(牧草地、果樹園、桑畑、茶畑、畑地、農地、水田等)、人口表土地(市街地、工場地帯、造成地等)の3区分にまとめて集計している。
自然表土地は自然林、2次林、人工林及び原野であるが、関東地方では原野はごく少なく(50年時点で全自然表土地の2%弱)、自然林は全林地のわずか13.6%(第1回自然環境保全基礎調査結果より)を占めるにすぎず、自然表土地の大部分は人為自然環境とみなすべき空間である。
半自然表土地は、農業的土地利用の行われている平野部及び標高200m以下の丘陵地帯の広がりとほぼ一致しており、小規模な集落や屋敷林、鎮守の森、雑木林などが含まれており、これが我々が長い間親しんできたいわゆる潤いのある自然といわれるものの中核的部分である。
人工表土地はコンクリ―トやアスファルトで被覆された土地及びそこへの移行過程にある土地で都市環境の中心的部分である。
この表土改変状況調査によって自然改変の推移を、20年、35年、50年の3時点を中心とした関東地方の変化について見ていくこととする。
人口と産業の都市集中に伴って、自然の改変は都市域の拡大を中心に拡散してきている。都市の人口表土地は水域を侵蝕して埋立地に変え、農地などの半自然表土地を侵蝕しつつ拡大を続け、さらに農地などの半自然表土地が林野などの自然表土地を侵蝕していくという経路を通じて自然改変が進んできている。表土改変状況調査は全関東を1メッシュ(区画)1km四方の3万861メッシュに区切り、それぞれのメッシュ毎の表土の改変を判定しそれを集計したものであるが、その集計結果によると、20年から50年にかけて都市域の拡大に伴って人口表土地は半自然表土地を侵蝕して1、592メッシュから3、643メッシュへと倍以上に拡大している。これに伴って東京都、神奈川県、埼玉県では自然表土地の転換が限界まで進んでいるため、専ら半自然表土地の減少が見られ、その周辺の県では、半自然表土地がさらに自然表土地を侵蝕して増加し、半自然表土地全体ではほぼ横ばいで推移している。このように都市を中心とする人口表土地の拡大を起点とする自然改変の流れは、最終的に自然表土地の1、698メッシュの減少をもたらしている(第1-2-2図)。
東京都(島しょ部を除く)では、既に20年から35年までの期間に半自然表土地が人工表土地への転換によって4割弱減少し、それ以降は一部で山林が直接宅地化されるという現象を含めて市街地が田園地帯を介在させることなく直接山林に接するという状況が出現している。また周辺県においては35年以降市街地化が加速され、埼玉、千葉、神奈川県の3県をみると、20年から35年までの人工表土地の増加388メッシュに対し、35年以降の15年間の人工表土地の増加は733メッシュと2倍に近い増大を示している。