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第2節 

3 人為自然環境

 原生自然と都市という環境の両極相の間にあって、人間と自然とが相互に働きかけあっている領域が国土の広い部分を占めている。そこは、人々が基本的に自然の生態系に依存しながら、農林業を営み生活の糧を得ている場であり、産業化と都市化が進行するまでは、大多数の人間にとっての生活の場でもあった。こうした自然と人為がないまざった領域を人為自然環境と呼ぶこととする。
 前記の植生自然度調査の結果から原生自然とみなされる植生自然度9、10の地域及び人工化が極度に進行した都市環境である植生自然度1の地域を除いて、植生自然度2〜8までの田、畑、草原、人工林、2次林などがこの人為自然環境に相当すると考えられる。近年都市域の急速な拡大のなかで、農地を中心に次第に市街地工場地帯等の都市的土地利用に置き換えられつつあるが、これらの人為自然環境はなお国土の74%を占めている。
 この人為的自然環境は、食糧、林産物をはじめとする資源の供給面だけではなく、国土の保全、水源のかん養、大気の浄化等の働きにより、人間活動を支える国土全体の自然バランスを維持する上で、大きな役割を果たしている。また人為自然環境のなか、には都市近郊にあって都市住民が身近に接することができる自然、人為と自然の調和がおりなすすぐれた風景地、自然に富んだ野外レクリエ―ションの適地など人と自然の触れ合いのうえで重要な自然が含まれている。我々の感性は、人為自然環境の中での自然との結びつきの長い歴史を通じて、この人為自然環境に安らぎや潤いを感じ、自然への親しみを感じとるようになってきている。

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