前のページ 次のページ

第2節 

2 都市環境

 自然を制御する人間の技術とその蓄積が大きくなるにつれて、人口の都市集中と都市域の拡大を伴って都市化が進んできている。
 我が国においては、都市化は高度成長期において著しいものがあり、50年の人口集中地区(DID)面積は8,300k?で全国土の2.2%、人口集中地区人口は6,400万人で全人口の57%となっているが、15年前の35年に比べて面積で2.1倍、人口で1.7倍となっている。これを48年度に実施した第1回自然環境保全基礎調査の植生自然度調査によって、都市的環境として自然度1の区域(市街地等の植生のほとんど残存しない地域)をとって見ると、その割合(全国を1平方kmのメッシュに分割し、全メッシュのうち自然度1のメッシュの占める割合)は全国平均で3.1%、関東では8.4%、近畿では6.1%となっている。
 こうした都市化の進展は、人間を囲繞していた自然を都市空間から排除し、自然の多様性から見れば極めて貧しい人工空間が拡大してきたことを示している。このような自然との触れ合いの機会の貧しくなった人工空間に居住する都市住民は望ましい環境要素として「さわやかな空気」、「静けさ」、「緑と水との触れ合い」などを渇望するようになってきている。このことは、都市住民が人工環境の与えてくれる安全・衛生・利便を享受しながら、一方で人間の原体験にある潤いのある「自然」の豊さを求めるという構造が生まれてきていることを物語っている。生活の質として環境の快適性を追求する都市住民にとって自然の潤いは極めて重要なものとなっているといえる。このような構造の中で、都市住民が生活に潤いをもたらす「自然」として希求しているものは、原生自然とは異なる身近かな自然であることは注目されてよいであろう。

前のページ 次のページ