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第1節 

4 その他

 (悪臭)
 悪臭は、生活環境を損なう感覚公害であることもあって、地方公共団体が受理する公害苦情件数では騒音についで多くなっている(第1-1-7図)。54年度における悪臭に対する苦情件数は15、499件であり、苦情の業種別内訳では畜産農業に対する苦情が全体の約32%を占めている(第1-1-10図)。
 悪臭については「悪臭防止法」に基づきアンモニア等8物質について規制が行われており、56年2月末現在で46都道府県10指定都市、市町村数では全市町村の約37%において規制が行われている。
 (土壌汚染)
 土壌汚染は、大気、水等を媒介として排煙や排水中に含まれる重金属等の有害物質が土壌に蓄積し、それが農作物等に吸収されて長期的な悪影響を与えるいわゆる「蓄積性汚染」の典型である。
 土壌汚染については「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」(土壌汚染防止法)でカドミウム、銅、砒素、が特定有害物質に指定されており、汚染地域及び汚染のおそれのある地域について調査を行っている。54年度までの調査によると、土壌汚染地域と推定汚染面積はカドミウム30都道府県88地域、約5,960ha、銅22道府県37地域、約1、250ha、砒素6府県12地域約380haとなっており、重複を除くと全体としての土壌汚染地域は36都道府県124地域、推定汚染面積は約6、510haとなっている。
 これらの地域については、「土壌汚染防止法」に基づく所要の対策が講じられている。「土壌汚染防止法」に基づく指定地域としては、56年1月末までにカドミウム39地域、銅10地域、砒素4地域の計45地域、面積にして約4,660ha(うち農用地約4,170ha)が指定されており、このうち37地域、約2,840haについて対策計画が策定され、客土、排土、水源転換等が実施されている。
 また、県単独事業等により42地域、約330haについて対策が講じられているほか、その他の地域についても調査や地域指定の検討が進められている。
 (地盤沈下)
 地盤沈下は、地下水の過剰な採取を原因として生ずるものであり、地盤沈下により多くの地域で建造物、治水施設、港湾施設、農地及び農業用施設等に被害が生じているが、地形、地質、土地利用等の状況の差異によって、地域によって沈下の程度及び被害の状況が大きく異なるという極めて地域的特性の強い公害となっている。
 現在までに地盤沈下が認められている主な地域は、全国35都道府県、59地域であり、これまで沈下の認められた地域の面積は約8,500k?(国土面積の約2%)に至っている。
 全国的には、近年、沈下の鈍化傾向が続いているが、埼玉県北東部を中心とする関東平野の一部及び筑紫平野の一部(佐賀県内)では、依然として著しい沈下が続いている。このほか、宮城県仙台平野の一部、千葉県湾岸部の一部、濃尾平野の一部などでの沈下が目立っている。なお、石狩平野の一部においては、泥炭地における沈下が生じている。
 逆に、大都市地域では、東京湾沿岸部の大部分の地域、大阪市及び三重県四日市市等のように、かつて著しい沈下を示した地域で、その後の地下水採取規制によって地盤沈下の速度が鈍化、あるいはほとんど停止した地域があり、地方都市では、青森市及び石川県七尾市等のように、一時期激しい沈下が生じた地域で、その後の地下水採取規制及びこれに伴う水源転換によって以前に比べ沈下速度がかなり鈍化している地域がある。
 (廃棄物)
 廃棄物は、し尿や家庭ごみ等の主として日常生活に伴って生じる一般廃棄物と企業等の事業活動によって生じる燃がら、汚でい、廃油、廃酸、廃プラスチック類、ゴム、金属くずなどの産業廃棄物に分類される。
 厚生省の調査によると、計画処理区域内における一般廃棄物(ごみ及びし尿(し尿浄化槽汚でいを含む))の発生量は、53年度でごみ4,319万t、し尿4,218万klとなっており、産業廃棄物の発生量は50年度で約2億4,000万tとなっている。
 廃棄物の処理については、51年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の改正による規制の強化が行われるなど、廃棄物の適正な処理を確保するための措置が講じられているが、毎年の公害事犯件数において廃棄物の不法投棄の件数が依然として過半を占めている。

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