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第1節 

2 水質汚濁

 水質汚濁に関する環境基準は、人の健康に有害な9物質(カドミウム、シアン、有機リン、鉛、クロム(6価)、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB)に関する基準(健康項目)と、利水上の障害などをもたらす有機物質等(pH、DO、BOD又はCOD、SS、大腸菌数などで測定される)に関する基準(生活環境項目)の2つから成り立っている。
 (健康項目)
 人の健康の保護に関する基準である健康項目について、54年度公共用水域水質測定結果を見ると、全国4,996地点において測定された総検体数のうち、環境基準に適合していない検体数の割合(不適合率)は、0.06%(53年度0.07%)となっており、かなりの改善を示している(第1-1-4図)。
 有害物質を種類ごとに見ると、アルキル水銀及び有機リンについては52年度及び53年度に引き続き全く検出されず、また、総水銀については測定点の濃度の年間平均値で評価して、環境基準を超える地点はなかった。その有害物質についてもごく一部の河川で検出されたものの、総体的には改善されてきている。
 (生活環境項目)
 生活環境の保全に関する基準である生活環境項目について、54年3月までに環境基準の類型当てはめが行われた河川2,236、湖沼98、海域532の計2,866水域において、代表的な有機汚濁の水質指標(河川ではBOD、湖沼及び海域ではCOD)で見て、環境基準を達成している水域は1,911水域(河川1,454、湖沼41、海域416)と全体の66.7%(53年度61.7%)となっており、全体的には改善の傾向が見られる。
 また、環境基準の達成率を水域別に見ると河川65.0%(53年度59.5%)、湖沼41.8%(同37.6%)、海域78.2%(同75.3%)となっており、それぞれの水域において若干の改善傾向を示している。しかし、湖沼では、代表的な湖沼である霞ヶ浦(茨城)、琵琶湖(滋賀)、宍道湖(島根)などにおいて環境基準が達成されていないことに見られるように全体としても依然達成率は低い水準にとどまっている(第1-1-4図)。
 また、海域のうち広域閉鎖性水域における54年度の環境基準達成率をみると、東京湾61%(53年度61%)、伊勢湾53%(同53%)、瀬戸内海76%(同75%)とほぼ横ばいに推移しており、水質の改善状況ははかばかしくない。このため、これらの3水域については、CODについて水質総量規制が導入されたところである。しかし、これらの3水域以外の海域における環境基準達成率は82%と前年度の77%と比べかなりの改善を示している(第1-1-5図)。
 さらに、河川について「主要公共用水域の水質汚濁状況調査」によって見ると、都市内中小河川、都市を貫流する大河川などは、かつての深刻な汚濁状況は脱したものの依然として高い汚濁の水準にある(第1-1-6図)。
 近年、湖沼や内海、内湾などの閉鎖性水域においては、生活排水や工場排水などに含まれる大量の窒素、リンなどの栄養塩類の流入により、プランクトンや藻類などの水生生物が増殖繁茂し、いわゆる富栄養化が進行している。このため閉鎖性水域においては、湖沼で水道原水の着臭や透明度の低下などがみられ、また、瀬戸内海、伊勢湾などの内海、内湾で、赤潮の発生などによって漁業被害や海水浴の利用障害、悪臭の発生、海浜の汚染、低層の貧酸素化など広く生活環境への被害が生じている。なお、瀬戸内海における赤潮発生件数をみると、52年度236件(うち被害を伴う件数27件)、53年165件(同15件)、54年216件(同17件)、55年212件(同12件)と依然としてかなり多い現状である。
 (海洋汚染)
 我が国の周辺海域における海洋汚染の発生確認件数は、55年1、581件と54年に比べ152件の減少となっており、油による海洋汚染が全体の78%を占めている。
 海域別にみると、全体の57%に当たる896件が東京湾、伊勢湾、大阪湾および瀬戸内海において発生している。また、タンカ―から投棄されるバラスト水などの油分に起因すると推定される廃油ボ―ルについては、依然として南西諸島から本州南岸に至る黒潮流域に沿った海域を中心にして、我が国沿岸への漂着は後を立たない現状にある。

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