(1) 国連環境計画(UNEP)
国連環境計画は、47年にストックホルムで開催された国連人間環境会議を契機に、既存の国連システム内の諸機関が行っている環境関係の諸活動を一元的に調整し、かつ、これら諸機関の環境保全分野での活動を促進することを目的として創設され、今年で7年目を迎えている。
国連環境計画に対して、我が国は、当初から管理理事会の理事国の一員としてこれに参画するとともに、環境基金に対し、54年は330万ドルを拠出する等多大の貢献を行ってきた。
? 管理理事会
第7回国連環境計画管理理事会は、我が国を含む50の理事国のほか、非理事国、国連機関その他の国際機関及びオブザーバーが参加して、54年4月18日から5月4日までナイロビで開催された。
主な議題としては、国連環境計画活動の全般的なレビューのほか、1980年代の新国際開発戦略(NIDS)の策定に当たっての環境的測面からの協力、基金状況の悪化(非交換性通貨の蓄積を含む)に関する問題、57年(国連人間環境会議後10年目にあたる)の管理理事会及び特別会合、国連の中期計画の環境関連部分と国連環境計画のプログラミングの調和の問題等が審議された。
この会議の結果は、15の決定としてまとめられている。
? 管理理事会準備会合
55年4月に開催される第8回管理理事会に先立ち、その準備会合の性格を有する非公式協議が、54年12月にナイロビで開催された。
この協議では、環境基金状況の悪化、国連環境計画事務局職員及びコンサルタントの地理的な均衡の問題、国連環境計画の将来の活動計画案、56年の環境状況報告テーマ、57年の管理理事会特別会合、カナダより提案があった57年の環境法に関するハイレベル会合等が討議された。
これらの点の多くについては、各国の意見を踏まえて事務局において方針を検討し、第8回管理理事会に提案されることとなった。
? 環境と開発
国連環境計画の活動の主要なテーマの一つは、環境保全型の開発である。近年の管理理事会において、環境保全型の開発の必要性は、先進国と発展途上国との間で微妙な相違はあるものの、全般的なコンセンサスを得ている。具体的な活動としては、発展途上国における開発政策に環境上の配慮を組み入れるための技術協力、環境保全型開発の手法、技術等に関する調査、研究の推進などが実施されている。
また、1980年代の国連新国際開発戦略(NIDS)の策定にあたり、国連環境計画は環境保全上の考慮をこれに組み込むため必要な役割を果たすことが期待されている。第7回管理理事会においても、国連環境計画がこの分野の活動を積極的に推進することについて、広範な支持が表明されている。また環境政策のコスト・ベネフィット分析に関する専門家会合も行われた。
? 環境状況は握と環境容量
環境の現状とその推移をは握することが、環境保全のために不可欠であるとの観点から、国連環境計画の活動の主要なテーマとして、環境状況は握(Environmental Assessment)のためのプログラムが設けられている。
これは地球監視(Earthwatch)と環境データ(Environmental Data)を2つの柱としており、また、地球監視が世界環境モニタリングシステム(GEMS)、国際情報源照会制度(INFOTERRA)、国際有害化学物質登録制度(IRPTC)より成り立っている。地球全体の環境の現状をは握する仕事は、先進諸国が最も関心を持っているものであり、54年度には、我が国は環境状況は握、国際情報源照会制度、国際有害化学物質登録制度等の専門家会合に参加した。
環境容量(Outer Limits)の分野では、成層圏オゾン層破壊の問題、大気中の炭酸ガス増加の問題、熱帯雨林の伐採の問題等が何らかの国際的活動を要するものとして提起されている。
? 国際環境法と国際環境影響評価
国連環境計画は、各国における環境保全法令の拡充および国際レベルにおける環境保全条約の整備及び実施を推進することとしている。この分野では、これまでに管理理事会は「共有天然資源に関する15原則案」をとりまとめており、その採択につき国連総会の場で検討されている。
第7回管理理事会では、米国代表より「国際環境影響評価条約」を将来検討すべき旨の発言が行われ、54年末の第34回国連総会では、環境評価の技術的側面を国連環境計画が検討する旨の内容を含む決議が採択された。
(2) その他の環境保全のための多国間協力
? 海洋投棄規制条約
「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(海洋投棄規制条約)は、47年11月に採択され、50年8月に発効した。この条約の第4回締約国協議会議は、54年10月にロンドンで開催され、洋上焼却の規制に関する条約の改正等が行われた。これは、有機ハロゲン化合物等を含有する廃棄物の処分の一方法として洋上における焼却が行われていることにかんがみ、これに伴う海洋の汚染等の発生を防止することを目的として改正されたものである。
我が国もその批准につき鋭意検討を進めてきたが、批准のための国内措置につき見通しが得られたため、承認を求めるべく第91回国会に本条約を提出している。
? ラムサール条約
「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)は、特に水鳥の生息地として重要な湿地を登録する等国際協力による湿地の保全を通じて水鳥の保護に寄与することを目的としており、46年2月、イランのラムサールで採択され、50年12月に発効したものである。
我が国もその批准につき検討を進めてきたが、批准のための国内措置につき見通しが得られたため、承認を求めるべく第91回国会に本条約を提出している。
? ワシントン条約
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)は、絶滅のおそれのある野生動植物の保護を図るため、その国際取引を規制することを目的としており、48年ワシントンにおいて採択され、50年7月に発効した。我が国もその批准につき検討を進めてきたが、批准のための国内体制の整備等につき見通しが得られたため、承認を求めるべく第91回国会に本条約を提出している。