3 物的及び健康被害の補償
45年に制定された「公害防止事業費事業者負担法」及び48年に制定された「公害健康被害補償法」は、環境汚染に対する復元費用や健康被害者救済費用についても汚染者が負担するよう定めた。「公害防止事業費事業者負担法」は、国又は地方公共団体が実施する河川や港湾などの公共用水域における汚でいのしゅんせつ事業、農用地の客土事業、緩衝緑地の設置事業などの公害防止事業について事業者にその費用の全部又は一部を、その原因となると認められる程度に応じて負担させることとしている。同法に基づき実施された事業の件数及び事業費は54年12月末現在で累計52件約1,162億円となっており、そのうち事業者の負担額は約595億円で51.2%の負担割合となっている。
健康被害者救済費用については、本来、その請求は訴訟などを通じて原因者に対する民事上の賠償責任の追及により行われるべきものである。しかし、公害の影響による健康被害の場合、被害者が汚染者を特定し、健康被害と汚染活動の間の因果関係を立証することには困難が伴い、訴訟などの方法では迅速な救済を期し得ないことが少なくないため、健康被害者の迅速かつ公正な救済を図ることを目的として公害健康被害補償制度が設けられた。この制度は、汚染原因活動と健康被害の因果関係などについて制度的な解決を図り、基本的には民事責任を踏まえた健康被害の補償制度として構成されており、健康被害の補償に要する費用については、汚染物質の排出量に応じて汚染者が負担することとなっている。