4 税制・金融措置の活用
我が国では、公害の防止のための技術の導入、機器の設置を早急に行う必要があった。排出規制を中心とした各種の厳しい公害規制が1970年代に入り整備された結果、民間企業の公害防止投資は急速に増加したが、これに対し汚染者負担の原則に従い政府は直接補助金の交付は行っておらず、また公害防止のための経常費用に対する助成措置もとっていない。しかし、公害防止投資は一般的に生産力増強に寄与しないこと、他方、企業が規制に沿い速やかに公害防止投資を行うことにより公害規制の実効性を担保する必要があることなどの理由により、公害防止投資を政策的に促進することとし、金融上及び税制上の助成措置がとられてきた。
金融上の助成措置として、特に資金力の乏しい中小企業を対象に汚水処理施設、ばい煙防除施設、産業廃棄物処理施設など各種公害防止施設の設備のために必要な資金が国民金融公庫、中小企業金融公庫、日本開発銀行等の政府関係金融関係あるいは公害防止事業団、中小企業振興事業団などから貸し付けられている。これらの55年度計画額は2,216億円となっている。
公害対策のための税制上の特別措置は国税については「租税特別措置法」、地方税については「地方税法」に基づき、特定の公害防止設備の特別償却、固定資産税の非課税などを行っている。国税についてみると公害防止用設備、無公害化生産設備及び廃棄物再処理設備については初年度に取得価額の3分の1又は4分の1の特別償却が認められていることなどである。地方税では公害防止のための特定の設備について固定資産税の課税標準の特例又は非課税、公害防止のための特定の施設の用に供される土地又はその取得に対する特別土地保有税の非課税あるいは公害防止のための特定の施設に対する事業所税の課税標準の特例又は非課税、電気自動車についての自動車税などの軽減措置などである。
公害防止投資の促進とともに、公害防止技術の開発も促進する必要があり、政府関係研究開発機関での技術開発の充実とともに、民間の技術開発を助成するために通商産業生から「重要技術開発費補助金」が交付されている。