3 騒音・振動
騒音・振動は後で述べる悪臭とならんでいわゆる感覚公害の属するもので、日常生活に密接した公害でありその発生源も多様多種であることから、これらに関する苦情は典型7公害に関する苦情の約4割を占めている(第1-1-8図)。
(騒音)
騒音に関する苦情では、工場騒音が最も多く建設騒音がそれに次いでいるが、工場騒音苦情は減少傾向にある。自動車、航空機、鉄道などの交通機関の騒音に関する苦情は、53年度は52年度に比べかなり増加しており、社会的な関心が高まっている(第1-1-9図)。
自動車交通騒音については、自動車交通量の増大などにより道路沿道に局地的に大きな騒音を生み、日常生活に広く被害が出ているため社会的関心が高まっている。
環境庁が54年3月に全国500人の環境モニターを対象に実施した、自動車交通公害についての調査によれば、自動車交通公害により何らかの被害を受けていると考えている人は82.0%にものぼっており、自動車交通公害が広く国民生活にマイナス面の影響を与えていることがわかる。
自動車交通騒音の現状をは握するため、地域の騒音を代表すると思われる地点または騒音に係る問題を生じやすい地点において、都道府県及び市町村が測定した自動車交通騒音実態調査の結果をみると、53年度で環境基準に適合する測定地点は565地点で全測定地点(3,315地点)に対する割合は17.0%と低く、また「騒音規制法」に基づく要請限度を超える測定地点は746地点で、全測定地点に対する割合は、22.5%となっている。このような自動車交通騒音の現状を改善するため、発生源対策、道路構造の改善、沿道対策、大量公共輸送機関の活用により自動車交通の量的削減等の自動車交通騒音対策がとられている。
また、航空機騒音については、発生源対策、土地利用を含む周辺対策などの諸施策の目標となる環境基準が48年12月に定められ、この環境基準では、53年12月までに環境基準の5年改善目標達成することとされ、そのため各種の発生源対策、空港周辺対策がとられ、一部の空港を除き、おおむね5年改善目標の達成をみた(達成率83.3%)。更に引き続き環境基準の達成に向けて自衛隊などが使用する飛行場を含め諸対策の充実、強化が図られているところである。
また、新幹線鉄道騒音については、50年7月に告示された「新幹線鉄道騒音に係る環境基準」で、既設新幹線の沿線のうち80ホン以上の区域について53年までを目途として環境基準が達成されまたは維持されるように努めるものとされたが、達成は十分とはいえない状況にあった。その後移転補償、民間防音工事の助成などの障害防止対策の推進により、かなりの前進をみている。
その他の騒音では、近年、近隣騒音が問題となっている。例えば、環境庁が53年10月に全国500人の環境モニターを対象に実施した近隣騒音の実態についての調査でも、半数以上の人(56.0%)が近隣騒音で迷惑をうけたことがあるとしている。また、内訳としては近所の自動車の空吹し音、ちり紙交換、物売りなどのスピーカー音、ペットの鳴き声などが多い(第1-1-10図)。
(振動)
振動は工場、建設作業、交通機関などがその主要発生源であり、騒音を伴うことが多い。53年度の振動に対する苦情件数は全体で4,033件あり、前年度の3,823件と比べて微増となっている。また、その中では、工場振動が最も多く、建設振動がそれに次いでいる。(第1-1-11図)。
交通振動については、苦情の大部分は道路交通振動に関するものであるが大都市圏を中心に全国的に増加傾向にあり、主要道路以外の道路沿道でもかなりの苦情が発生している。
更に、近年、可聴域下限周辺の比較的低い振動数の空気振動(低周波空気振動)による影響が問題にされており、苦情が出されている。