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第4節 

3 空港周辺対策

(1) 特定飛行場における対策
 発生源対策を実施してもなお騒音の影響が及ぶ地域については、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」に基づいて、特定飛行場(現在、函館、仙台、東京国際、新潟、大阪国際、広島、松山、高知、福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇及び新東京国際の15空港)周辺において住宅の防音工事の助成、建物等の移転補償、緩衝緑地帯等の整備を行うほか、学校、病院等の防音工事及び共同利用施設整備の助成等を行っている。
 また、空港周辺の市街化が著しい等の理由により、航空機騒音防止のために計画的な周辺整備を促進する必要のある飛行場については、これを周辺整備空港として指定(現在、大阪国際空港及び福岡空港)し、国及び関係地方公共団体の出費による空港周辺整備機構を設けて前述の諸対策と併せて、再開発事業、代替地造成事情及び共同住宅建設事業を推進している。
 このほか、大阪国際空港周辺においては、低騒音大型機導入の際に地元から示された要望を受けて、これまで大気汚染測定ステーションの設置、騒音測定塔の増設、地元地方公共団体による空港周辺地域営業者融資制度の創設等を行ってきたが、53年度には、更に、移転者に対する民間資金を活用した融資制度及び関係地方公共団体が移転跡地等に公園等の周辺環境基盤施設を整備する費用の補助制度が発足した。
 また、府県知事が策定した大阪国際空港周辺整備計画を基礎として、新しい街づくりを目指した具体的な地区整備計画を策定するため、国、府県、関係市、学識経験者等により検討を重ねているところである。
 更に、新東京国際、東京国際、大阪国際、宮崎、鹿児島、那覇の各空港周辺地域で、テレビ受信障害に対する受信料の助成等を行っている。
 これらの空港周辺対策を実施するための予算も年々拡充され、53年度は対前年度比11%増の456億円となっている(第4-4-4表)。


(2) 空港周辺における立地規制
 空港周辺における住宅等の建築制限を含む土地利用制度を確立することによって、空港周辺に新しい住宅等が建築されて問題が拡大するということを未然に防いで航空機騒音問題の根本的な解決を図るため、53年4月20日に「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法」が制定・公布された。同法は同年10月19日から施行されたが、その主な内容は次のとおりである。
 第1に、空港周辺について航空機騒音により生ずる障害を防止し、併せて適正かつ合理的な土地利用を図る必要があると認められる空港を政令で特定空港として指定し、この指定があれば、特定空港の設置者は、おおむね10年後における著しい航空機騒音が及ぶこととなる地域等を示して、関係都道府県知事に対し、航空機騒音対策基本方針を定めるべきことを要請しなければならないこととされている。
 この要請を受けて、都道府県知事は、特定空港の周辺について、?航空機騒音障害防止地区及び航空機騒音障害防止特別地区の位置及び区域に関する基本的事項、?航空機騒音により生ずる障害の防止に配慮した土地利用に関する基本的事項、?航空機騒音障害防止施設、生活環境施設、産業基盤施設等の整備に関する基本的事項を内容とする航空機騒音対策基本方針を関係市町村長、関係住民等の意見を聴き、運輸大臣及び建設大臣の同意を得て策定するものとされている。
 第2に、特別空港の周辺について、都道府県知事は、航空機騒音対策基本方針に基づき、都市計画に「航空機騒音障害防止地区」及び「航空機騒音障害防止特別地区」を定めることができることとされている。これらの地区は都市計画の地域地区の1つであり、これらの地区内においては、住宅、学校、病院等、特に静穏な環境を必要とする建築物の建築が制限されることとなる(「航空機騒音障害防止地区」においては、これらの建築物を建築する場合には一定の防音構造のものとしなければならない。また、「航空機騒音障害防止特別地区」においては、都道府県知事の許可を受けた場合を除き、これらの建築物を建築してはならない。)。
 このような住宅等の建築禁止に対しては、その制限により通常生ずべき損失の補償、土地の買入れ等特定空港の設置者による補償措置等が講じられることとされている。
 第3に、特定空港周辺について、このような土地利用の制限を行い、航空機騒音による障害の発生を未然に防止しつつ、他方、積極的に地域振興等を図っていくための施設整備を円滑に実施するため、国は、これらの施設整備を行う地方公共団体等に対し、財政上及び金融上の援助に努めなければならにこととされているとともに、特定空港の設置者も、その周辺においてその所有する土地を地方公共団体に無償で使用させることができることとし、更に、航空機騒音による障害の防止に資する施設の整備を行う地方公共団体に対し、費用の一部を補助することができることとされている。
 また、本法の基づく政令では、航空機騒音対策基本方針の策定に当たっては、「航空機騒音障害防止地区」及び「航空機騒音障害特別防止地区」はWECPNLの値がそれぞれ75及び80以上である地域を基準として定めること等が規定されているとともに、特別空港としては、新東京国際空港が指定されている。

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