2 民間企業の公害防止投資の動向
40年代にほぼ一貫して急増を続けた民間企業の公害防止投資は50年度をピークに以後減少に転じ、最近においても減少が続いている。通商産業省の調査によると、調査対象企業の公害防止投資額は50年度に9,286億円、全設備投資に占める公害防止投資の割合(公害防止投資比率)も17.1%とピークに達したあと、51年度以降は減少に転じ、53年度実績見込では4,171億円、公害防止投資比率で6.1%となっている(第2-9図)。また、54年度計画についても前年度比15.1%減と減少することが見込まれているが、減少の度合いは小さくなっている。
50年代に入ってからの民間企業の公害防止投資の減少は、その減少が急であったこととともに、ほとんどの業種において、また騒音・振動防止施設などは底固い動きを見せているものの、大気汚染防止施設、水質汚濁防止施設といった施設種類の別なく減少が見られていることが特徴である。このことは、我が国の民間企業が、40年代後半に急速に進展した公害規制に対し、必要な公害防止施設の設置をこの時期に集中して行った結果であると見られる。
我が国における産業公害は、このような公害防止施設の普及によって大きな改善がもたらされたが、我が国の環境汚染の現状を考えるとき、今後とも一層の努力が必要とされていることも事実であり、その意味で、民間企業の公害防止投資が今後とも減少を続けると見ることはできない。