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第4節 

1 政府部門の環境保全費用

 環境保全のために国が講じた予算措置は、環境保全関係予算としてまとめられている。
 54年度における国の環境保全関係予算は前年度比29.6%増と高い伸びを続け、総額1兆1,253億円に上っている。これを国の予算(一般会計と特別会計の純計)に占める割合で見ても、54年度には1.6%にまで上昇しており、国の予算全体の伸びを上回る環境保全関係予算の伸びが続いている(第2-8図)。環境保全関係予算は、各種基準等の設定、監視取締りの強化、公害防止事業助成、公害防止関係公共事業等の推進、公害防止調査研究の推進、公害被害者保護対策の充実及び自然保護対策の推進等の各事項から成っているが、このうち下水道事業費等公害防止関係公共事業等経費が大半(54年度予算では環境保全関係予算全体の84.2%)を占めている。54年度には、この公害防止関係公共事業費等経費が前年度比32.5%増と高い伸びを続けているが、その内容としては、下水道事業費及び廃棄物処理施設整備費が引き続き大きく増えているほか、航空機騒音防止対策事業費が前年度の456億円から756億円へと増えているのが注目される。
 以上のような公共事業を中心とする国の環境保全経費の増大とともに、地方公共団体の環境保全経費も増大を続けている。下水道等の公共事業は、地方公共団体が事業主体となり、国の補助を受けて事業を実施しているものが多く、この場合、国からの補助を含めた事業費の全体が地方公共団体の支出として捉えられる。そこで、地方公共団体の公害関係経費の決算状況を見ると、52年度には前年度比24.6%増の1兆8,792億円となっており、同年度の国の環境保全関係予算の約3倍となっている。この比率は、もちろん固定的なものではなく、当該年度の国及び地方公共団体の環境保全のための支出の内容によって異なるが、概して、国の予算に計上された環境保全経費よりはるかに大きな支出が政府部門全体としてなされているといえる(地方公共団体が行う下水道事業等の公害対策関係事業に対し、国は予算における補助のほかに、財政投融資において地方債の引受けの措置を講じており、54年度には1兆1,059億円が計画されている)。

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