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第4節 

4 公共飛行場における航空機騒音対策

 空港周辺における航空機騒音対策は種々のものがあり、それらの対策は第4-4-3図のように体系付けられている。
 この中で発生源対策としては、機材改良、便数調整、運航方式の改良等が行われている。特に、機材改良の一つとして、50年10月航空法の一部改正により「騒音基準適合証明」が制度化され、ジェット機(従来機で低騒音化改修の困難なものを除く。)について、その騒音が一定の基準以下となるよう規制されることとなった。また、運航方式の改良としては、東京国際空港において、北方側からの旋回進入路を改善し、内陸部の騒音の軽減を図るため進入路指示灯の改良に着手しており、福岡空港において騒音軽減運航方式の一つであるカットバック方式が52年12月から実施に移されている。
 空港周辺対策は、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」に基づいて、特定飛行場周辺において住宅の防音工事の助成、建物等の移転補償、緩衝緑地帯等の整備を行うほか、学校、病院等の防音工事及び共同利用施設整備の助成等を行っている。また、空港周辺の市街化が著しい等の理由により、航空機騒音防止のために計画的な周辺整備を促進する必要のある飛行場については、これを周辺整備空港として指定(現在、大阪国際空港及び福岡空港)し、空港周辺整備計画を作成して前述の所対策と併せて再開発事業、代替地造成事業、共同住宅建設事業を推進している。このほか一定の空港でテレビ受信障害に対する受信料の助成等を行っている(第4-4-4表)。
 更に、空港周辺における住宅等の建築制限を含む土地利用制度を確立するため、航空審議会の答申を受けて「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案」を第82回国会に提出した。同法案は、第83回国会及び第84回国会において継続審議され、53年4月12日参議院本会議において可決成立した。同法の主な内容は、次のとおりである。
 第1に、政令で指定された特定空港の周辺について、空港設置者の要請を受けて、都道府県知事は、関係市長村長、関係住民等の意見を聴き、「航空機騒音対策基本方針」を定めるものとすることとされている。この航空機騒音対策基本方針には、特定空港の周辺における今後の土地利用の方向付けや公共施設等の施設の整備の指針を定めることとされている。
 第2に、特定空港の周辺について、都道府県知事は、航空機騒音対策基本方針に基づき、都市計画に「航空機騒音障害防止地区」及び「航空機騒音障害防止特別地区」を定めることができることとされている。これらの地区は都市計画の地域地区の1つであり、これらの地区内においては、住宅、学校、病院等特に静穏な環境を必要とする建築物の建築が制限されることとなる(「航空機騒音障害防止地区」においては、これらの建築物を建築する場合には一定の防音構造のものとしなければならない。また、「航空機騒音障害防止特別地区」においては、都道府県知事の許可を受けた場合を除き、これらの建築物を建築してはならない。)。
 このような住宅等の建築禁止に対しては、その制限により通常生ずべき損失の補償、土地の買入れ等特定空港の設置者による補償措置等が講じられることとされている。
 第3に、特定空港周辺について、このような土地利用の制限を行い、航空機騒音による障害の発生を未然に防止しつつ、他方、積極的に地域振興等を図っていくための施設整備を円滑に実施するため、国は、これらの施設整備を行う地方公共団体に対し、財政上及び金融上の援助に努めなければならないこととされているとともに、特定空港の設置者も、その周辺においてその所有する土地を地方公共団体に無償で使用させることができることとし、更に、航空機騒音による障害の防止に資する施設の整備を行う地方公共団体に対し、費用の一部を補助することができることとされている。
 なお、同法は、公布の日から6か月以内に施行されることとされている。
 この法律によって、空港周辺に新しい住宅等が建築されて問題が拡大するということを未然に防止することにより、航空機騒音問題の一つが根本的に解決されることとなる。

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