4 健康被害の現況
我が国においては、戦後、経済の急速な発展を見た反面、水俣病やイタイイタイ病、あるいは四日市における呼吸器系疾患等の公害に起因すると考えられる疾病の発生が、大きな社会問題となった。
このため、公害の影響による疾病の罹患者の健康被害を救済する目的で、現在、「公害健康被害補償法」が制定されている。この制度においては、「非特異的」疾患と呼ばれる大気汚染系疾病(慢性気管支炎、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎、肺気しゅ及びその続発症)又は「特異的」疾患と呼ばれる三つの疾病(水俣病、イタイイタイ病、慢性砒素中毒症)による健康被害者に対して、療養の給付及び療養費、障害保障費等の7種類の補償給付を行うとともに、損なわれた健康の回復等を図るための公害保健福祉事業を行うこととしている。
現在、この制度の対象となっている地域は、第一種地域(非特異疾患の多発地域)として、東京都19区等39地域、第二種地域(特異的疾患の多発地域)として水俣湾沿岸地域等5地域となっている。
また、53年1月現在で、被認定患者数は63,741人となっており、その内訳は、非特異的(大気汚染系)疾患61,902人、特異的疾患1,839人となっている。