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第2節 国連における活動

(1) 国連環境計画(UNEP)
 ストックホルム会議を契機に創設された国連環境計画の活動も本格化し、数々のプロジェクトを実施してきているが、当初から理事国の一員としてこれに参画してきた我が国の積極的な貢献が期待されている。
ア 管理理事会
 第4回国連環境計画管理理事会は、58の理事国をはじめ関係国際機関の代表の参加の下に、昭和51年3月30日から4月14日までにケニアのナイロビで開催された。国連組織内の環境問題を統括する使命を帯びているUNEPの活動分野は、過去4年間の実績によってかなり定着してきた。
 今回理事会においては、環境プログラムのレビューのほかに、国連人間居住会議、国連砂漠化防止会議、環境基金活動とその財政問題、UNEP自体及び国連人間居住会議後の機構問題等について討議が行われ、合計39件の決定が採択された。
イ 産業プログラム
 特定産業に係る環境問題に関するプログラムは、産業別のセミナーという形式で実施されてきている。この産業別セミナーは、52年度の紙・パルプ、アルミ産業に引き続き、51年10月には自動車産業を対象に開催された。これらのセミナーは、それなりの成果を収めたが、産業プログラム全般の適切な運営を実現するための政府間専門家会議が51年12月に開催され、産業プログラムの目的、実施方法、将来の活動等につき検討した。その結果、従来はセミナーの開催という形式だけが採られてきたが、それ以外にも特定国のケース・スタディ等その目的を達成する方法が種々あり、もっと柔軟なアプローチを採るべきであるということが強調された。
 このほか、52年1月には農業とその関連産業(農業廃棄物の管理・利用に関するもの)セミナー、52年3月には石油産業セミナーが開催された。
ウ 理事会準備会合
 本会合は、UNEPの今後の主要な政策問題に関する意見交換を行うため、52年1月に開催された。
 本会合では、53年以降の環境基金のレベルに関する問題に議論が集中した。その適切な基金レベル及び自国の拠出見込みについては、各国とも種々な見解を表明したが、それに関連して基金レベル決定の際にはUNEPのプログラム全般についての評価をする必要があるとの主張が多くなされた。
 またUNEPの役割は、他の国連機関等が実施している事業を調整・推進していくという触媒的なものである。したがって事業実施機関たる他の国際機関とは異なった観点、すなわち、触媒的な役割を果たしていく上で必要な資金はどれほどかという観点から基金規模を決定すべきであることが強調された。
エ その他
 上記会合の他、環境と開発及び環境法等について政府間の専門家会合が開催された。
 アジア地域では、50年9月にUNEPアジア太平洋地域事務所がバンコックに開催され、これを契機に国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の場で、人間環境についてESCAP地域諸国の参加する会議の開催等が検討され、環境問題への関心が高まってきた。
(2) 国連人間居住会議(HABITAT)
 この会議は51年5月31日から6月11日までカナダのバンクーバーで開催され、「原則宣言」、「国際協力計画」、「国内行動勧告」の3つの基本文書及び5つの個別決議が採択された。国内行動勧告は、?居住政策と戦略、?居住計画、?住宅と関連施設及びそのサービス、?土地、?住民参加、?機構と管理、の6項目について行われた。
 国際協力計画を実施するための事務局設置等については、第31回国連総会(51年秋)では決定を見ず、次回総会へ持ち越された。また、ESCAP地域での地域会議の開催が52年に予定されている。
(3) 国連水会議
 本会議は、52年3月14日から25日までアルゼンチンのマルデルプラタで開催された。会議では、水資源の利用・開発につき多方面から検討がなされ、本問題の解決に資する国内及び国際レベルの行動勧告が採択された。
 第一委員会では、?水資源に対する全般的考察、?水利用とその効率性、?環境及び保健が討議され、第二委員会では、?計画・管理及び制度的側面、?教育、訓練及び研究、?地域協力、?国際協力、が検討された。
 水資源開発のための基金の創設及び国際協力機関の設置等についても検討されたが、水基金については、その創設は見送られ、又、機構問題についても同様に実現せず、既存機関を強化するにとどまった。更に、今次会議においては「宣言」は採択されず、替わりに「マルデルプラタ行動計画」が採択された。
(4) 海洋汚染に関する国際的動向
ア 海洋法会議
 海洋における新しい国際秩序を樹立するため45年の第25回国連総会で第3次国連海洋法会議の開催が決議された。48年12月の第1会期、49年夏の第2会期を受けて、50年の春にジュネーブで第3会期が開催され、領海、経済水域、海峡、大陸棚、深海海底開発、海洋汚染防止等の主要問題が討議されたが、基本的枠組について合意は見られなかった。しかし、議長提案という形で海洋法条約の非公式単一交渉草案が提示され一応の前進を見た。
 第4会期は、51年3月から5月までニューヨークで開催されたが、最終日に各委員会から非公式単一交渉草案の改訂版が配布されるにとどまった。この改訂草案審議のため、引き続き8月から9月まで第5会期が開催されたが事態は進展しなかった。
 第6会期は、52年5月23日から7〜8週間開くことが決定されている。
イ 海洋投棄規制条約
 廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約は、47年11月に採択されたが、15か国の批准を得て50年8月に発効した。条約発効後の第1回締結国会議が51年9月20日から24日までロンドンで開催された。この条約では、?海洋投棄禁止物質、?事前の特別許可制の採用、?事前の一般許可制の採用、?許可制について積地国主義による等が主な内容となっている。我が国はまだ批准していないが、この会議での検討内容や各国との情報交換等を参考に、本条約を批准するため関係省庁により国内法制について必要な改正措置等の準備が進められている。
(5) WHO環境保健判定条件の策定
 大気、水、食品、その他環境中に含まれる汚染物質等から人体を保護するための環境保健判定条件(クライテリア)の策定は、従来からWHO(世界保健機構)が必要に応じて進めてきたが、47年の国連人間環境会議の勧告が契機となって、あらゆる環境汚染質(物質だけでなく物理的因子も含む。)を対象とした体系的計画に組み替えられ、各国の協力の下に策定作業が進められている。我が国は50年度までの10種類の汚染物質に加え、51年度は一酸化炭素及び二酸化炭素について意見を提出した。
 この判定条件は、最終的に専門家会議によってまとめられることとなっており、日本からの貢献が期待されている窒素酸化物及び光化学オキシダントについての専門家会議が、それぞれ、8月23日〜28日と8月30日〜9月4日に東京で開催された。

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