前のページ 次のページ

第5節 

2 文化財の保護及び歴史的環境の保全

(1) 史跡、名勝、天然記念物の保護
 貝づか、古墳、城跡等の遺跡で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いものについては、文部大臣がこれを史跡に指定することができるとされており、51年度末現在1,018件が指定されている。指定された土地においては、現状変更が制限されることとなっている。また、史跡のうち特に必要がある民有地についても、これを買い上げて保存するとともに、当該遺跡の性格、内容に応じた整備等の保護事業(補助事業)を行っている。51年度は史跡等の買い上げとして大宰府跡(福岡県)、萩城跡(山口県)等99件、史跡などの環境整備として熊本城跡(熊本県)、北野廃寺跡(愛知県)等73件について補助を行った。
 また、古墳等の史跡が集中的に所在している地域について、当該地域の環境整備、資料館の設置、民家の移築を内容とする「風土記の丘」の建設を行い、51年度までに8か所の整備を完了している。飛鳥・藤原地域の文化財の保存整備については、史跡の買上げ整備、発掘調査及び資料館の充実等を引き続き実施している。特別史跡高松塚古墳については、壁画修復及び保存施設の設置等を行った。
 平城宮跡については、現在、120haが特別史跡に指定されており、38年度以来国費による買上げを行うとともに、奈良国立分化財研究所が発掘調査及び整備を行っている。48年度までに約80haの土地を買い上げているほか、48年度及び49年度に奈良県が地方債により約8.3haを先行取得し、これを年次計画により国が再取得している。
 庭園、峡谷、山岳等の名勝地、動植物、地質鉱物等で観賞上又は学術上価値の高いものについては、文部大臣はこれを名勝又は天然記念物に指定することができることとされており、51年度末現在、名勝277件、天然記念物910件が指定されている。
 文化庁では、近年の開発の進展に伴い、天然記念物である動植物が減少しつつあることに対処するため、42年度から年次計画により、全国にわたって天然記念物緊急調査を実施し、この結果を植生図、主要動植物地図としてまとめるとともに、天然記念物の生態等について緊急調査等を実施している。
(2) 古都における歴史的風土の保存
 京都、奈良、鎌倉等の古都において歴史的意義を有する建築物、遺跡等が周囲の自然的環境と一体を成して古都における伝統と文化を具現、形成している地域を保存するため、「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」に基づき、現在までに京都市等8市町村において約1万4千haの歴史的風土保存区域を指定し、更にこの区域のうち、特に枢要な部分を構成している地域約4千ha(37地区)を都市計画に歴史的風土特別保存地区として指定している。
 歴史的風土特別保存地区においては、建築物その他の工作物の新築等歴史的風土の保存に影響を及ぼすおそれがある行為を、府県知事の許可に係らしめるとともに、土地の買上げを行い、また、この地区以外の歴史的風土保存区域においても、それらの行為を府県知事への届出に係らしめる等必要な規制を行っている。
 50年度までに買上げを行った土地の面積は、約135haである。
 なお、飛鳥地方については、45年12月の「飛鳥地方における歴史的風土及び文化財の保存等に関する方策について」の閣議決定に基づき、51年度は国費約14億6,709万円(事業費約5億2,800万円)で環境の整備を行った。

前のページ 次のページ